前回は、保守サービス全体の管理を担当する「メンテナンス部」を紹介した。今回は、データライブの技術力の中核となっている「テクニカルサービス部」の業務内容に迫っていこう。
EOSL保守のパイオニア データライブの総合力に迫る
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EOSL/EOLサービス技術の中核であるテクニカルサービス部
データライブが提供するEOSL/EOL保守サービスは、メーカー保守が終了した製品をメーカーに代わって保守するというサービスだ。部品が故障した場合にメーカー純正品や互換製品にすみやかに交換し、保守が切れたシステムの延伸稼働を可能にする。
事業を支えるシステムの稼働期間はメーカーによる製品の保守期間と必ずしも一致しない。特に、ビジネスとシステムが大きく変化する昨今では、システムのリプレース期間と保守期間にズレが発生することがほとんどだ。保守切れのシステムに万一障害が発生すれば、ビジネスに大きな打撃を与えることになりかねない。EOSL/EOLサービスは、そうした切迫した状況にも対応できる稀有なサービスとして、さまざまな企業から支持を集めてきた。
そんなデータライブのEOSL/EOLサービスの技術の根幹を支えているのが、今回紹介するテクニカルサービス部だ。同部では、製品にどのような部品が使われているのかの調査から、調達した部品が適切に使用できるかの確認、互換品や代替品の確認から保守技術の開発など、技術全般におよぶ。同社の代表取締役社長である山田和人氏は、テクニカルサービス部の重要性について、こう話す。
データライブ 代表取締役社長 山田 和人 氏 |
「テクニカルサービス部は、調達部と共に、EOSL/EOLサービスのスタート当初から存在していました。データライブの技術の中核であり、顧客が求める部品を高い信頼性のもとで提供するためには欠かすことができない部署です」(山田氏)
その重要性は、例えば医療に例えれば、体調の不良を訴える患者の体のどこか悪いのか?必要な範囲は内科なのか外科なのか?手術が必要なのか否か?といった判断を行う事と同義であり、テクニカルサービス部が担う責任はそれほどに重い。
「テクニカルサービス部の技術力が向上すれば、より高い品質のサービスを提供できるようになります。対応できるベンダーが増えれば、それがすなわちマルチベンダー対応として当社の事業の幅を広げます。技術の中核であり、ビジネスの拡大に欠かせない重要な部署です」(山田氏)
宮大工に相通じる姿勢と"技術力"
山田社長は、EOSL/EOL保守サービスに求められる技術を、神社や仏閣の建築や補修に携わる「宮大工」になぞらえる。宮大工が仕事の対象にする建築物は、飛鳥時代から続くともいわれる伝統的な方法で作られたものだ。だが、建物の設計図が残っていることはなく、建築方法や補修の技術は、その時代の大工たちが連綿と受け継いできたものだ。
ときには、受け継がれずに失われた技術について古文書を読み解いて復活させたり、独自に研究して伝統的な工法を再現したりする必要があるという。EOSL/EOL保守サービスでは、そうした取り組みと同じような姿勢が求められるという。
「先輩たちから受け継いだ技術や手順で同じことをするだけでは十分ではないと思います。経験をもとに試行錯誤して、新しい技術を開発していく。そうした不断の努力と技術開発で、何百年経っても倒れない建築物を支えているのだと思います。
これは、EOSL/EOL保守サービスでも同じです。本来自分たちが持っていない技術を先人に学び、試行錯誤して製品の寿命を伸ばす。宮大工が材料選びにまで立ち返るように、機械の原則論にまでさかのぼることもあります。そうすることで、メーカーとのギャップを埋めながら、メーカーとの違いを生み出そうとしています」(山田氏)
メーカーとのギャップを埋めながらメーカーとの違いを生み出すというのは、前回のメンテナンス部の紹介のときにも触れた第三者保守における大きな目標だ。メーカーと同等のサービスを実現する一方で、メーカー以上の付加価値のあるサービスを提供する。技術の中核となるテクニカルサービス部では、より直接的にこの目標に関わってくるという。テクニカルサービス部 部長 下元孝介氏は、こう話す。
データライブ テクニカルサービス部 部長 下元 孝介 氏 |
「メーカーではありませんので、製品の設計情報やノウハウを直接知っているわけではありません。ものを物理的に入手して、調べることからはじめ、調査で得た情報を使ってさらに何ができるかまでを考え、試していきます。第三者保守というと、作業に必要な最低限のラインだけを引いて、それ以上のことには手を出さないと思われるかもしれません。しかし実際は、決められたことだけをこなすのでなく、積み上げたノウハウを活用して、さらにアグレッシブに試行錯誤を続けることが大切だと考えています」(下元氏)
そうしたアグレッシブさは、サービスの品質の向上とともに、データライブの会社としての成長にも大きくかかわっている。山田社長は、「蓄積したノウハウをサービスの向上につなげてほしい。また、いろいろな機械に積極的にチャレンジして、技術の幅を広げてほしい。品質が上がれば、よりミッションクリティカルな案件にも対応することができる。技術の幅が広がれば、更にお客様のお役に立てる」と、テクニカルサービス部に大きな期待を寄せている。
精鋭テクニカルサービス部の仕事の実際
では、テクニカルサービス部の仕事とはどのようなものなのだろうか?下元氏によるとテクニカルサービス部は10人で構成され、仕事は大きく、検査、保守、技術開発の3つに分かれている。
「検査」―「HDD故障率0.5%未満」を実現する検査体制
検査というのは、HDDなどの部品が適切に動作するかを確認していく作業のこと。また、保守は、保守サービスにおける部品の整備や検品、交換作業のこと。技術開発は、検査や保守を支えるためのR&D(Research&Development)のことで、Laboと呼ばれている。ひとつひとつ見ていこう。
まず、検査については、単なる「通電確認」や「機械的なエラーチェック」だけではないことが大きなポイントだ。データライブは、もともとリユース(中古)サーバの販売で事業を拡大させてきた。データライブが扱うサーバの部品は、一定のルールに沿って動作を確認し、また基準をクリアしたものだけを扱うのが特徴だ。この厳密な検査の仕組みは、EOSL/EOL保守サービスにも生かされている。
例えば、HDDについては、「HDD Multiport Test System」を導入し、独自の検査基準を設けて検査を行い、検査ログから故障する傾向などもノウハウとして蓄積している。また”HDDマイスター”と呼ばれるHDDの特性を熟知する専門スタッフを配備し品質向上に取り組んでいる。
「HDDの検査では、起動してレディになるまでの時間が20秒以下であるか、制御用コマンドを発行して応答までが30秒以下であるか、256セクタ毎にデータを書き込んでみて不良セクタがないかどうかなど、10数項目を手順に沿って確認していきます。リユース品の場合は、完動品であっても、テストデータ書き込み時に故障が発生するケースがあります。複数回のテストを繰り返して、適切に動作することを丁寧に確認しています」(下元氏)
新品と同じパラメータ設定では検査がうまくいかない場合や、あるモデルに対して有効なパラメータが別のモデルに対しては不適切な場合など、一筋縄ではいかないケースが多いという。HDDのモデルごとに最適なパラメータ設定を行うこともあり、検査には1台のHDDあたり10時間程度かかるものもある。検査は、入庫時検査に加え、出荷直前にも再検査を行うダブルチェックの体制だ。
こうした徹底した検査体制を敷くことで、故障件数は200台に1台程度。故障率にすると0~0.5%という脅威の数字を実現している。新品のHDDで構成されたデータセンターでもこれほど低い故障率を実現することは困難だろう。
「保守」― カスタマーエンジニアとして「アグレッシブな保守」を実践
同社の保守サービスの積極性は、顧客の環境に障害が発生したときの、緊急医療さながらの動きからも見て取れるだろう。24時間/365日対応のコールセンターに障害連絡が入ると、現地に向かい出動し、対応を図ることになる。 「実績のある製品やシステムについては、蓄積されたナレッジがあり、それらを使うことで大抵の障害に対応することができます。問題は、対応が難しい障害が発生した場合です。現地に赴き、顧客と協力しながら、障害の原因を特定し、対応していきます。十分な情報が無いなかで、検査の時間や対応を行うため、顧客との協力関係をしっかり作ることが大切になってきます」(下元氏)
「実績のない製品の保守サポートをご相談されるケースも多々あります。お客様同等のシステムを構築し、検証や保守手順の確認を行うことから、保守部材の確保までを短期間で行わなければならない、アグレッシブな保守が求められるシーンもあります」(下元氏)。
また、ストレージ製品やネットワーク製品などは、ベンダー固有の技術が必要になるケースが多い。実績のない製品にどこまで対応できるかどうかの判断は、テクニカルサービス部の技術力に大きく左右されるのだ。
「技術開発」―蓄積したノウハウを使って新サービスを開発
3つめの技術開発は、こうしたアグレッシブな保守を支える基盤とも言えるものだ。今年から技術開発チームを構成し、新しいサービスや品質向上に力を入れている。
例えば、RAIDコントローラーのリフレッシュバッテリーの事例がある。これは、あるユーザーからRAIDコントローラのバッテリー交換の要望を受け、それに応えるようと技術開発を行ったものだ。
RAIDコントローラで利用しているバッテリーは、サーバーメーカーごとに異なり、メーカー保守が切れると、部材提供されなくなる。そこで、再生バッテリーを取り扱う業者と共同開発をして、サービスとして提供できるようにした。顧客ニーズに応える為に技術を磨き、その成果を新しいサービスとして提供したわけだ。
ストレージ機器やネットワーク機器といったベンダーの独自色の強い機器の保守サポートも、技術開発に支えられている。F5ネットワークスのBIG-IP製品の保守サポートは、ある顧客と緊密に連携し、検証を繰り返して保守サポートがスタートした経験がベースになっている。
「依頼を受けたときは実績がなかったのですが、保守切れまでに余裕を持ってご相談いただいたことで、機器の研究とテストを十分に行うことができました。お客さまと良い協力関係を築けたことで、新しいサービス開発につなげることができました」(下元氏)
飽くなき品質向上にむけて
下元氏は、今後の目標として、「更なる品質向上」と「保守サービスの幅の拡大」を挙げる。これは、山田社長が「会社の将来を支えるもの」と期待するテーマでもある。下元氏は、これを実現するためには、会社単独ではなく、顧客やパートナーと幅広く連携していくことがポイントだと強調する。
例えば、保守を行う前提として「部品が提供できる」という状況を継続することが重要だ。その為には、何を取り揃えればいいのか、そのための情報がどこにあるのかについて、顧客やパートナーと協力して準備することに力をいれている。また、検査にかけるコストや時間の短縮もテーマだ。「どうずれば品質を落とさずに短時間でテストができるか、日々戦っている」という。
また、サポートする製品の技術を知るために、検証ルームなどの設備やスキルを持った人材の育成に力を入れている。基礎的なことは座学で学べるが、現場から知る情報が重要で、現場に近いところで学び、それを繰り返していくことを率先して行っているという。
山田社長が宮大工になぞらえる保守サービスの技術は、けっして一朝一夕に身につくものではない。逆に言えば、EOSL/EOL保守サービスのパイオニアとして技術を磨いてきたデータライブだからこそ、こうしたサービスが提供できているということができる。
次回は、安定した保守を行う際に欠かせない「部材調達、管理」を担う、調達部、商品管理部について、紹介したい。
EOSL保守のパイオニア データライブの総合力に迫る
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