京都とハワイで毎年交互に開催されてきた半導体デバイス・プロセス技術と回路技術に関する国際会議である「2023 VLSI Symposium on Technology and Circuits(VLSI Symposium 2023)」が2023年6月11~16日に京都で開催される予定である。
同会議は、世界トップクラスの半導体国際会議の1つに位置付けられている。その日本のシンポジウム委員会は4月25日に記者会見を開催し、VLSIシンポジウム 2023の概要と注目論文を発表した。
前回の2021年は、新型コロナの感染拡大を考慮し、オンラインでのバーチャル開催であったため、京都でのリアル開催は2019年以来4年ぶりとなる。学会の価値である議論による相乗効果の発揮と人的交流を重視して現地開催を復活させたと同委員会は説明している。なお、パネル討論などを除き、多くの講演が後日、オンデマンドにて配信される予定となっている。
テーマは「持続可能な未来のため、VLSIデバイス・回路技術を再始動」
VLSIシンポジウム 2023のテーマは、「Rebooting Technology and Circuits for a Sustainable Future(持続可能な未来のために技術と回路を再始動)」である。
トランジスタの発明から2022年で75年、ここまでさまざまな限界がささやかれながらも、半導体技術者の弛まぬ努力により半導体集積回路技術は進化を続けてきた。スケーリング技術はますます難度が高まるとともに、従来とはまったく異なる技術の導入も必要となっている。その例としては、 Gate All Around(GAA)トランジスタ、CFET、裏面電源供給などが挙げられる。一方で世界的な情勢不安、原材料やエネルギーの供給不安、環境問題といった社会課題も同時に解決する必要があり、「そうした背景のもと、VLSIデバイス技術と回路技術は新たな局面を迎え、従来にない破壊的な技術革新が求められる状況にあるとの考えをテーマに込めた」とシンポジウム委員長の東京大学(東大)の黒田忠弘 教授は説明する。
基調講演はホットな4テーマ
VLSIシンポジウム 2023では現在、業界でホットな「3Dパッケージング技術」「メモリ微細化」「量子コンピューティング」「VLSIの未来」という4つのテーマに対して、以下の4件の基調講演が行われる。
- Multi-Chiplet Heterogeneous Integration Packaging for Semiconductor System Scaling.
- A Six-Word Story on the Future of VLSI:AI-driven, Software-defined, and Uncomfortably Exciting
- Quantum Computing from Hype to Game Changer
- Searching for Nonlinearity: Scaling Limits in NAND Flash
また、恒例のイブニングセッションでのパネル討論は、「What is Scalable & Sustainable in the Next 25 Years?」と「Can Universities Help to Revitalize the IC Design Industry? If So, How?」という2つのテーマについて、世界の専門家が一堂に会して討論される予定となっている。
ショートコースも「Advanced CMOS Technologies for 1 nm & Beyond」と「Future Directions in Highspeed Wireline/Optical IO」の2テーマで進められるほか、最先端のデバイス技術と回路設計の協調を目指すジョイントフォーカスセッションとしては、「New Computing」、「AR/VR/MR Metaverse」、「3D System Integration」、「Automotive and Aerospace」といったテーマが取り上げられる。
さらに、最終日となる6月16日には、VLSIシンポジウムの将来の方向性を示唆しスコープを広げるための企画であるVLSIフォーラムが開催される予定となっている。
応募件数632件で採択率は34%、日本勢の発表は26件
VLSIシンポジウムは通常、京都開催の際の応募件数はハワイ開催の場合よりは少ないが、今回は2022年のハワイ開催よりもやや多く、2021年開催よりも3割増となる632件の応募があったという。応募件数が600件を超えたのは2014年以来9年ぶりのことである。
このうち採択論文件数は212件で、採択率は34%といつもながら狭き門だった。日本を含むアジアからの応募が増加してきており、韓国や中国がそれぞれ131件、130件と論文応募数が多いことが注目される。韓国勢の採択率は36.6%であったが、中国勢の採択率は11.5%と差はあるものの、中国からの応募件数が増えるとともに年々レベルは向上してきていることが注目される。また、国別採択件数をみると、26件採択された日本は、米国・カナダ、韓国、欧州に次ぐ4位で、その後に台湾、シンガポール、中国が並ぶ。日本の採択率は55%と平均を上回っている。