半導体クリーンプロセス・洗浄技術に関する国際会議「The 17th Symposium on Ultra Clean Processing of Semiconductor Surfaces(UCPSS 2025)」では、韓Samsung Electronicsで洗浄技術の研究開発を主導するKT Lee氏が「洗浄技術の将来に向けた挑戦」と題して基調講演を行った。

この講演内容を要約してみよう。

洗浄プロセスは全行程の3割を占めて増加傾向

Samsungの集積回路製造工場において、シリコンウェハ洗浄工程は、全工程の約3割を占めて、最頻工程となっており、しかも増加傾向にある。洗浄工程は、表1に示すように、「プレクリーン(前処理洗浄)」、「ポストクリーン(後処理洗浄)」、「ウェットエッチ」の3つに大きく分類される。

  • 最近の集積回路製造工程における各プロセスの工程数の割合

    (a)最近の集積回路製造工程における各プロセスの工程数の割合。(b)シリコンウェハ表面洗浄の内訳 (出所:Samsung Electronics)

エッチング・洗浄技術の3次元デバイスへの適用

Samsungでは、2013年からVNAND(いわゆる3次元NAND)デバイスが、2022年からは3次元のGate-All Around(GAA)構造のロジックデバイスが生産されている。そして、現在は3D DRAMを開発中であり、2030年代に生産される予定である。

3D構造の登場で洗浄プロセスに占めるウェットエッチングの割合が増加している。3D NANDデバイスのパターニングには横方向のSiNx層のSiO2に対する選択ウェットエッチングが不可欠であり、GAAロジックデバイスを製造するには、Siナノシートに損傷を与えることなく横方向のダミーSiGe層の単結晶Siに対する選択ウェットエッチングが必須である。これらはエッチング対象層の完全な除去であるが、層を部分的にエッチングして均一なリセス(表面の後退)を実現することが必要な場合もある。さらに、2030年代に実用化する予定のCFETでは目標形状を得るために、組成比率が異なるの複数のSiGe材料間の選択性を制御する必要がある。

高アスペクト比構造のパターン倒壊なき乾燥

DRAMにおいて電荷を蓄え情報を記憶するために高アスペクト比の円柱状キャパシタを用いていているが、乾燥時に残留した水の表面張力でパターン倒壊が起きることが広く知られている。Samsungでは、さまざまな防止策を検討したがどれも不十分で、最終的に超臨界酸化炭素(SCCO2)乾燥を2010年代半ばから採用している。最近では、ロジックデバイスの乾燥にも採用されている。さらに、高アスペクト比フォトレジストの現像後の乾燥時にも使用することも検討したが、まだ良好な結果は得られていない。

  • ウエット洗浄後の通常の乾燥によるDRAM円柱状キャパシタの倒壊

    (左)ウエット洗浄後の通常の乾燥によるDRAM円柱状キャパシタの倒壊(パターン上部からのSEM像)、(右)ウエット洗浄後の超臨界二酸化炭素(SCCO2)乾燥による正常なDRAM円柱状キャパシタ (出所:Samsung Electronics)

パドル洗浄で薬品消費量削減

洗浄工程が急激に増加し、これにおもない化学薬品のコストと廃棄物が増加している。したがって、環境政策とコスト削減に合致させるため、化学薬品の消費量を削減する必要がある。Samsungでは枚葉スピン洗浄で回転数を極端に落としたパドル洗浄を採用することで薬品の使用量を従来の高速回転に比べて1/17に削減できることが分かった

高アスペクト比微細構造の乾燥時の倒壊問題が最大のテーマ

UCPSS全セッションの中で「高アスペクト微細構造」が最大のセッションだった。

さまざまなパターン倒壊の考察や倒壊防止防止策が提言された。SCREENは、ナノ構造のパターン倒壊の流体・構造相互作用解析を行うとともに、パターン倒壊を抑止するIPA乾燥について分子動力学的工作を行った。

imecはパターン倒壊を容易に可視化できる評価テストチップを提案した。TEL Americaはマランゴニ乾燥の解析を行い。 荏原製作所はマランゴニ乾燥のその場観察について発表した。圧力と温度を制御して液体→固体→気体と相変化させて微細構造の気液界面通貨を避けてパターン倒壊を防止する昇華乾燥(サブリメーションドライング)法をSCREENとセントラル硝子が発表したが、まだ完全にはパターン倒壊を防止できておらず、SamsungはSCCO2乾燥が唯一の解であるとした。

Samsungが基調講演で強調していた3Dデバイスのエッチングに関しては、3D NANDフラッシュメモリ製造用のSiN選択エッチをSamsung、韓国・延世大学、韓国・成均館大学、中国盛美半導体設備(上海)/長江存儲科技(YMTC)が発表した。GAAナノシートトランジスタおよびその先のCFET向けSiGe選択エッチに関してimecと延世大学が発表した。3D DRAM用のSi層の薄化美ついて三菱ケミカル/imecが発表した。

洗浄工程の環境対策も重要なテーマ

Samsungが基調講演の最後に言及した洗浄工程の環境対策については、セントラル硝子が、PFASを含有しないSMT(表面改質技術)有機溶剤を、ナフタフリーのレジスト剥離液を仏Technic Franceが、TMAHフリー現像液をベルギーimecがそれぞれ発表した。洗浄用薬液の環境・安全アセスメント対応について仏グルノーブルアルプス大学が基本方針を報告した。

今回のシンポジウムでは、薬液や水を使わないドライ洗浄(あるいは非水洗浄)の発表はほとんどなかった。しかし、新設の半導体工場であるTSMC熊本工場もラピダス千歳工場もMicron広島工場新棟も水を大量に使用することに起因する問題を抱えている。さらには超微細化に伴い、パターン倒壊を起こさないドライ(気相)洗浄の方が深溝や狭空間の洗浄には適する場合も多くなってきており、汚染を発生させない(あるいは発生した汚染の自浄作用のある)ドライ洗浄の再検討が期待されている。