「自己修復材料」というワードを聞いたことがあるだろうか?

自己治癒材料などとも呼ばれており、英語表記ではよくSelf-Healing Materialと記されている。

スマートマテリアルに分類されるこの材料は、材料に傷ができたとしても、材料自身が自発的に傷を修復する、そんな夢のような材料だ。今回は、そんな自己修復材料について紹介したいと思う。

自己修復材料とは?

自己修復材料は、その特性から多くの分野で注目を集めている。

材料特性の劣化が進みにくく、長寿命化に優れていて、メンテナンスもフリー。目視で確認できるくらいの小さな傷であれば時間とともに消えてしまう。

では、自己修復材料には、どのような種類の素材があるのだろうか。

素材は金属、セラミック、コンクリート、ガラス、ポリマーの5つに大きくは分類されるようだ。

金属はまだ製品化というより研究フェーズのようだ。早稲田大学の岩瀬英治教授は、金属ナノ粒子の電界トラップを用いることで、配線上に亀裂が生じた場合でも電圧印加により、金属ナノ粒子の電解トラップ法により亀裂を自己修復する金属配線を実現している。

  • 早稲田大学岩瀬教授が開発した自己修復する金属配線

    早稲田大学岩瀬教授が開発した自己修復する金属配線(出典:早稲田大学)

セラミック材料分野においても自己修復材料は存在する。例えば、物質・材料研究機構(NIMS)と横浜国立大学らは、自己修復するセラミックを開発している。このセラミックを1000度に加熱すると、たった1分程度で修復が完了するという

NIMSの亀裂を自己修復するセラミック

ほかには、コンクリートがある。オランダデルフト工科大学のJonkyes博士は、コンクリートの亀裂において、水と酸素により活性化させたバクテリアによって炭酸カルシウムを生成し自己修復させる技術を開発。すでに製品化されているという

ガラスの自己修復材料もある。東京大学相田卓三教授らは世界で初めて、自己修復機能を有するガラスを開発した

この開発されたガラスは、ポリエーテルチオ尿素という高分子材料。破断後に室温で数時間圧着すると、機械的強度が破断前と同じ値にまで回復するという。製品化についてはこれからのようだ。

  • 東京大学が開発した自己修復するガラス

    東京大学が開発した自己修復するガラス(出典:東京大学)

そしてポリマー。ポリマーの分野では、研究開発を実施している機関は多い印象だ。

例えば理化学研究所は、乾燥空気中のみならず水や酸、アルカリ性水溶液中でも自己修復材料を開発した

理化学研究所の自己修復材料のポリマーの動画

東レはタフトップという自己修復コートフィルムをすでに製品化しているし、ユシロ化学工業は自己修復性のポリマーゲル、エラストマーを製品化している。エストラマーとは、弾性を有した高分子の総称。ゴムなどが相当する。

このように自己修復材料は、研究フェーズのものや製品化されているものなどさまざまなフェーズにある。また、自己修復の際に”勝手に”に修復されるものもあれば、修復に電圧印加、温度印加、圧力印加が必要なものもあることがわかっていただけたかと思う。

自己修復材料はどう使われるの?

自己修復材料については理解が進んだが、では一体どのように使われるのだろうか。もちろん、ありとあらゆる材料が開発され製品化までいったという前提になるが、正直にいうと活用できる分野、シーンは無限大だ。

例えば、機能や特性の維持に活用される。インフラの維持管理が該当するだろう。道路、橋、上下水道菅、都市ガス菅に何らかの欠陥が生じた場合、自己修復するのだ。発電、送電というシーン考えてみても、火力発電所、原子力発電所などの発電プラントの材料品質の維持、配電は例えば金属電線の修復が挙げられるだろう。

また、美観の維持の視点もある。ビルや住宅などの外観。自動車、バイク、自転車。キッチン、バス、トイレなどあらゆるものに活用できる。 さらには、航空機、ロケット・人工衛星などの宇宙分野もある。

宇宙分野での自己修復材料について少し紹介しよう。

アメリカ航空宇宙局(NASA)は、宇宙空間においてスペースデブリなどがロケットや人工衛星に衝突し、損傷した場合に自己修復できる材料の開発を実施している。スペースデブリが衝突し、材料を貫通したとしても、材料の内部から液状の物質が穴を塞ぎ約1秒程度で修復するというものだ。

  • NASAが開発した自己修復材料

    NASAが開発した自己修復材料(出典:American Chemical Society)

NASAが開発した自己修復材料の動画

いかがだっただろうか。今回は、自己修復材料を紹介した。自己修復機能によって、安全性、信頼性が向上するとともに、メンテナンスコストを下げることができる画期的な材料であることは間違いない。未来には、至る所でこの自己修復材料が活用されていることだろう。

2021年6月23日訂正:記事初出時、理化学研究所の自己修復材料ポリマーとして紹介しておりました動画は、正しくは物質・材料研究機構の自己治癒セラミックスの動画となりますので、当該部分を訂正させていただきました。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。