アメリカ航空宇宙局(NASA)が主導となって始動したアルテミス計画。アポロ計画以来の有人月面活動となる世界規模の巨大プロジェクトだ。この計画に日本も参画する。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)を中心に着々と準備が進められ、ベンチャー企業はもちろんのこと、宇宙事業を実施していなかった大企業も参画を表明している。

また、日本だけでなく世界でも動きが活発だ。その中で今回は、月や火星での植物栽培などを目指すInterstellar Labを取り上げたい。

Interstellar Labは、BioPodという植物栽培モジュールを開発している。このInterstellar Labは、どんな企業なのか、BioPodとは何なのか、どのような植物栽培を目指しているのか、今回はそんな話題について紹介したいと思う。

Interstellar Labとは?

Interstellar Labは、アメリカのロサンゼルスとフランスのパリに拠点があるスタートアップ企業。CEOは女性のBarbara Belvisi氏。フランスのリヨンにあるemlyon business schoolを卒業している。その後、金融業界などを経て2018年にInterstellar Labを設立している。それ以前に彼女は、26歳という若さでベンチャーキャピタルファンドを設立。それは女性の最年少記録だという。そして、2018年にヨーロッパのForbesトップ100にも選出されており、とてもすごい人物だ。

  • インターステラーラボCEO

    Interstellar Lab CEOのBarbara Belvisi氏(出典:Interstellar Lab)

そんなすごいCEOが設立したInterstellar Labだが、どのような構想を計画しているのだろうか。

それは、広義には地球と宇宙の環境に対応する循環型で持続可能なシステムを開発すること。もう少し狭義に具体的にいうと、地球および宇宙における食料生産システムと人間の居住空間モジュールを開発することだ。

Interstellar Labが開発するBioPodとは?

では、Interstellar Labが開発する宇宙における食料生産システムと人間の居住空間モジュールとはどのようなものだろうか。イメージは以下のようだ。

  • BioPod

    Interstellar LabのBioPod(出典:Interstellar Lab)

イメージの舞台は、月面基地。ここに人間が居住する小規模な拠点が描かれている。この大きな曲率をもった窓がある白く卵のような形のものが複数確認できるだろうか。このひとつひとつがBioPodだ。このイメージでは、複数のBioPodで小規模なモジュールを形成しているのがわかる。人の大きさと比較するとBioPodは大型のようだ。

このBioPodだが、インフレータブル技術を活用するという。地球からロケットなどの輸送機で輸送する際は、小型に縮んだ状態で搭載されるのだろう。そして月へと到着した際は、与圧だろうか、機械的な機構だろうか、詳細は不明だが、ある機構によって“風船”のように膨らみ大きくする構造のようだ。

そして3Dプリンターで製造し、高い機密性を有するモジュールとなっているという。コスト削減や一体化することで信頼性を向上させる目的もあるだろう。そして、BioPod内部での環境はどうだろうか。

BioPod内部は、植物栽培や人が居住できるのに適した空気、圧力、水、温度、湿度を自動的に調整することができるという。基本AIベースで制御されるという。また、BioPodでは、水をリサイクルすることで98%削減を可能とするという。BioPodのエネルギー源、発電方式などは不明だ。BioPodの動画も配信されているので、ぜひご覧いただきたい。

■Interstellar Labが開発するBioPodの動画(出典:Interstellar LabのTwitter)

BioPodは、300種類以上の果物、野菜、花、植物を栽培できるように設計されているという。イメージ図から、月面基地を想定した話をしたが、地球上でもこのBioPodの稼働を想定している。

例えば、環境に配慮した食品の栽培、絶滅危惧種となった植物・生物の飼育や保護、地球上の極地、砂漠といった過酷な環境下での植物栽培、人の居住空間などだ。 このBioPodをいくつも接続することでモジュールを大型化することもできる。つまり、小規模な街、都市の形成も可能となるのだ。

  • BioPod

    宇宙と地球と両方の環境でビジネス可能なBioPod(出典:Interstellar Lab)

いかがだっただろうか。Interstellar LabのBioPodについて理解いただけたと思う。筆者の主観が入っているが、宇宙ベンチャーの多くが事業採算性を確立するまでに多くの時間と労力を要している中、宇宙と地球の両方でビジネスを動かしていくアイデアや構想にInterstellar Labの技術力のみならずビジネスセンスも感じ取れるのではないだろうか。読者はどう感じるだろうか。