この半導体ニュースのまとめ

・STがAIデータセンターやロボティクス向けマイコン「STM32G5」を発表
・STM32G4比で演算処理性能を2倍に高め、電源とモータの高精度な制御に対応
・耐量子暗号を含むセキュリティ機能を搭載し、2027年にはデュアルコア品も追加

STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)は、AIデータセンターの電源制御やヒューマノイドロボットのモータ制御などに向けたミクスド・シグナル・マイコン「STM32G5」シリーズを発表した。

同シリーズは280MHz動作のArm Cortex-M33コアを搭載し、420DMIPS/1136CoreMarkの演算処理性能を実現。従来のSTM32G4シリーズと比べて演算処理性能を2倍に高めたという。

データセンターやロボティクスのほか、太陽光・風力発電装置、産業用モータ、商用ドローンなどへの搭載を想定する。現在はシングルコア製品を量産しており、2027年には、より高い性能と豊富なペリフェラルを備えたデュアルコア製品を追加する予定だ。

AIデータセンターの電力変動へリアルタイムに対応

AIデータセンターでは、GPUクラスタの高性能化と大規模化に伴って、ラック当たりの消費電力が1MWに近づいている。大規模なデータセンターでは、2030年までにピーク時の電力需要が2GWを超える可能性もあるという。

こうした規模では、電源変換効率のわずかな改善でも、電力損失や冷却負荷の削減につながる。

STM32G5は、デジタル電源向けの12チャネル高分解能タイマをSTM32マイコンとして初めて搭載した。サーバの処理負荷に応じて変化する電力需要を監視し、電源ユニットを動的に再構成する制御アルゴリズムを実行できる。

タイマの精度を高めることで、SiCやGaNなどのワイドバンドギャップ半導体を用いた電源の高いスイッチング周波数にも対応する。AIデータセンター向け電源の変換効率向上に加え、電源回路の小型化や発熱の抑制につなげる。

片手に最大20個のモータを備えるロボットを制御

ヒューマノイドロボットでは、複数の関節を同時に動かす多軸制御に加え、高いトルクを生み出す電流制御、周囲の状況に素早く反応するリアルタイム性が求められる。

特に手や指では、力、精度、センシング、制御機能を限られた空間へ集約する必要があり、片手に最大20個のモータを搭載する場合もある。

STM32G5は、モータ制御タイマや位置エンコーダ、12bit A/Dコンバータ、オペアンプ、12bit D/Aコンバータ、超高速コンパレータなどを内蔵する。演算処理性能と周辺機能を強化することで、より多くのモータやセンサを制御しながら、速度と精度が求められる動作へ迅速に対応できるようにした。

また、新たにプログラマブル・ロジック・アレイ「PLAy」を搭載。用途固有の機能をチップ上のハードウェアとして実装できるため、外付けの補助ロジック回路を削減し、ロボット関節や電源装置の制御基板を小型化できる。

耐量子暗号を含むセキュリティ機能を搭載

セキュリティ面では、Cortex-M33のArm TrustZoneと、ST独自のセキュリティ機能群「STM32Trust」を組み合わせた。

セキュアブートとセキュアファームウェアアップデートに対応する改ざん不可のルート・オブ・トラスト「STiRoT」を搭載するほか、暗号鍵などを保存するセキュアストレージやタンパ検出、サイドチャネル攻撃への耐性を備える。

暗号化エンジンは、同社のPQC(ポスト量子暗号)ライブラリを含む耐量子暗号にも対応する。将来、量子コンピュータによって既存の公開鍵暗号が解読されるリスクを見据え、長期間運用されるデータセンター設備や産業機器を保護する。

Flash容量は64KB~512KB、1万個購入時で約1.03ドルから

STM32G5シリーズは、高性能製品ラインと高分解能タイマ製品ラインで構成される。内蔵Flashメモリ容量は64KB~512KBで、パッケージはQFN32からLQFP128まで用意する。

LQFPパッケージについては、データセンター向け電源などの動作条件へ対応するため、放熱性を高めた露出パッド付き製品も提供する。

開発環境として、LQFP64パッケージの512KB品を搭載したSTM32 Nucleoボード「NUCLEO-G564RE」、モータ制御用開発キット「B-G564E-MC1S」、デジタル電源用開発キット「B-G564E-DPOW1」を用意する。

デジタル電源用ライブラリ「X-CUBE-DPOWER」やモータ制御用ソフトウェア開発キット「X-CUBE-MCSDK」に加え、ライブ・コード・プレビューなどに対応する開発ツール「STM32CubeMX2」も利用できる。

単価は1万個購入時で約1.0340ドルから。STは、AIデータセンターのエネルギー効率向上と、フィジカルAIを担うロボットの高精度なリアルタイム制御を、同じマイコンプラットフォームで支援するとしている。