このものづくりニュースのまとめ

・マウザーが産業用AI/MLの技術情報を集約したリソースセンターを公開
・ロボットセルの構成やPLCプログラミング、フィジカルAIなどを解説
・予知保全や画像検査、AMR開発などに対応する4製品も紹介

Mouser Electronics(マウザー・エレクトロニクス)は、産業用オートメーションにおける人工知能(AI)と機械学習(ML)の最新動向や活用方法を紹介する「オートメーション向けAI・機械学習リソースセンター」を公開した。

同リソースセンターは、AI/ML(機械学習)によって産業用オートメーションの自律性、効率性、適応性をどのように高められるかについて、技術解説や実践的なガイド、専門家の知見を集約したもの。AIを活用したシステム構成、フィジカルAI、大規模言語モデル(LLM)による開発支援などを取り上げ、エンジニアによる設計やシステム構築を支援する。

製造業では、製品の多品種化や生産数量の変動、人手不足などを背景に、生産設備を需要の変化へ柔軟に適応させることが求められている。一方、設備構成や生産品目を変更する際には、ロボットの動作設定やPLCのプログラム変更、安全性の検証など、多くの作業が発生する。

AI/MLをこうした設計・運用プロセスへ組み込むことで、エンジニアの判断を残しながら手作業を減らし、生産システムの構成変更や最適化を効率化することが期待されている。

AIがロボットセルの構成作業を支援

マウザーによると、AI/MLは多くの産業用オートメーション分野で、エンジニアリング設計プロセスに欠かせない技術になりつつあるという。

例えばロボットセルでは、生産品目や作業内容の変更に応じて、ロボットの配置、動作、周辺設備との連携などを再構成する必要がある。AIを活用すれば、信頼性の高い制御を維持しながら、こうした構成作業に伴う手作業を削減できる可能性がある。

同リソースセンターでは、AIにロボットセルそのものを直接制御させるのではなく、エンジニアによる構成作業を支援する手法を紹介。重要な制御判断にはエンジニアが引き続き関与しながら、設備の再構成にAIを活用する考え方を示している。

また、3Dシーンを記述・交換するためのフレームワーク「OpenUSD」を活用し、実際の設備を導入する前に、システムの設計や動作を仮想環境で検証する手法についても解説している。

仮想環境でロボットや設備の配置、動作、安全性などを検証できれば、実機を用いた試行錯誤を減らし、生産ラインの立ち上げ期間短縮や設計変更に伴うコスト削減につなげられる。

LLMでPLCプログラミングを効率化

同リソースセンターでは、LLMを産業用オートメーションへ活用する可能性も取り上げている。

製造現場では、センサやPLC、産業用PC、ロボットなどから大量のデータが生成される。LLMを活用することで、複雑な産業データの把握や、設備情報の検索、PLCプログラミングなどの作業を効率化できる可能性があるという。

PLCは、入力機器から取得した情報に基づいて設備や機械を制御する装置であり、生産ラインや搬送設備、ビル設備など幅広い分野で利用されている。ただし、実際の設備を制御するプログラムには高い安全性と確実性が求められる。

そのため、LLMが生成したプログラムをそのまま設備へ適用するのではなく、エンジニアが内容を確認し、シミュレーションや試運転によって安全性と動作を検証するプロセスが重要となる。

機械が現実環境に適応するフィジカルAI

AIの活用範囲は、設計やプログラミングといったデジタル領域から、ロボットや産業機械を実際に動作させるフィジカルAIへ広がっている。

フィジカルAIは、カメラや各種センサから取得した情報を基に周囲の環境を認識し、リアルタイムに判断して機械の動作へ反映する技術。決められた動作を繰り返す従来型の自動化に対し、周囲の状況や生産条件の変化に応じて、ロボットや機械が動作を適応させることを目指す。

機械学習を活用した処理によって、設備は現実環境をより正確に認識し、状況に応じた対応が可能になる。これにより、部品の位置や形状が一定ではない作業、障害物や人が存在する環境での移動、製造条件が頻繁に変わる工程などへの適用拡大が期待される。

一方、産業現場では、AIによる判断の不確実性が設備の安全性や生産品質に影響を与える可能性もある。このため、人が重要な制御判断に関与できる仕組みや、AIが担う範囲と従来制御が担う範囲を明確に分ける設計が必要となる。

Raspberry Pi CM5搭載の産業用PC「RevPi Connect 5」

マウザーは、AI/MLを活用した産業用オートメーションに対応する製品例として、4種類の製品を紹介している。

KUNBUSの「RevPi Connect 5」は、高い演算性能とモジュール設計を組み合わせた産業用ボックス型PC。Raspberry Piの「Compute Module 5(CM5)」をベースとしており、32GBのeMMCメモリと4GBまたは8GBのRAMを搭載する。

オプションで無線LANとBluetoothにも対応。工場の設備データをクラウドへ送る前に処理するエッジコンピューティング用途を想定し、予知保全や画像検査システムなどへの活用を見込む。

設備の近くでAI推論やデータ処理を行えば、クラウドとの通信量や遅延を抑えられる。通信環境に左右されにくい処理系を構築できることも、産業用エッジコンピューティングの利点となる。

Arduino環境を活用できる小型PLC「Opta」

Arduinoの「Opta」は、産業用オートメーション機能とArduinoエコシステムの柔軟性を組み合わせた小型PLC。

デュアルコアArm Cortexプロセッサを搭載し、リアルタイム制御、監視、予知保全に対応する。複数の接続方式に加え、セキュリティ機能とリモート管理機能を備え、産業設備やビルオートメーションでの利用を想定する。

Arduino環境を活用できるため、試作段階で開発した制御機能やIoT機能を産業用途へ展開しやすいことが特徴となる。設備データの収集、遠隔監視、予知保全などを組み合わせた小規模な自動化システムにも適用できる。

SWIRカメラと32TOPS対応のビジョンAI開発キット

onsemi(オンセミ)の「Acuros CQD」は、可視光から近赤外線、短波赤外線(SWIR)までの波長域に対応するカメラ。

高フレームレートとグローバルシャッター方式に加え、最大70dBのダイナミックレンジを備える。マシンビジョン、自動車システム、容器などの充填量監視、監視システムといった産業用画像処理への利用を想定している。

SWIRカメラは、可視光カメラでは判別しにくい材料や水分、内部状態などを可視化できる場合がある。AIによる画像認識と組み合わせることで、外観検査や異物検出、充填量の確認などを自動化できる可能性がある。

Advantechの「AFE-360DVK」は、ビジョンAI向けロボティクス開発キット。Intel Core Ultra 125Hプロセッサを搭載し、最大32TOPSのAI処理性能を備える。

接続インタフェースとして、3系統のLAN、7系統のUSB、4系統の高速COMポート、2系統のCAN FDを搭載。カメラやLiDARなどの自律型センサを接続し、自律走行搬送ロボット(AMR)や無人搬送車(AGV)などの開発へ利用できる。

マウザーは、同リソースセンターを通じてAI/MLの産業応用に関する情報を提供するとともに、必要となる産業用PC、PLC、カメラ、ロボティクス開発キットなどを供給し、インテリジェントな産業環境の設計と構築を支援するとしている。