
メモリやSSDの価格高騰を背景に、業務用ノートPCの価格構造が変わり始めている。MacBook NeoとMacBook Airを、Dell XPSやMicrosoft Surface LaptopなどのWindows 11ノートPCと比較した。筐体品質やディスプレイ性能をそろえると、MacBookは十分な価格競争力を持つ。さらに、macOSとWindows 11のメモリ管理の違いも考慮すると、業務によってはMacBookが有利になる。中小企業のPC調達において、Macは特別な選択肢ではなくなった。
メモリ価格高騰で変わり始めたパソコンの価格構造
中小企業が業務用パソコンを購入する際、Windows PCを選ぶことは長らく当然の判断だった。業務ソフトウェアとの互換性に加え、MacBookに比べて安価な製品が数多く存在するためだ。
しかし2026年、パソコン市場の価格構造は大きく変化しつつある。
その背景にあるのが、メモリとSSDの価格高騰だ。生成AI向けデータセンターの需要が急速に拡大し、半導体メーカーの生産能力がサーバー向け製品に振り向けられたことで、パソコン向けメモリやストレージの価格が上昇している。
Apple製品の価格も変動している。2026年10月下旬時点で、今回取り上げるMacBook Neoの8GB/512GBモデルは13万7800円、M5搭載15インチMacBook Airの16GB/512GBモデルは26万4800円となっている。
それでも注目したいのは、MacBookとWindowsノートPCを同じ製品クラスで比較した場合の価格だ。
今回は、比較対象としてDellのプレミアムノート「XPS」シリーズと、Microsoftの「Surface Laptop」シリーズを加えた。これらは金属製筐体、高品質なディスプレイ、薄型軽量設計など、MacBookと共通する特徴を持っている。アルミニウム製の高品質な筐体を採用したMacBookと、樹脂製筐体の廉価なWindowsノートPCを、CPUやメモリの容量だけで比較するのは公平とは言い難いために追加した製品だ。
もちろん、Windows PCの価格競争力を評価するため、普及価格帯の製品も比較対象に加えてある。
比較では、ディスプレイサイズ、メモリ容量、ストレージ容量を優先し、CPU性能はGeekbench 6などの公開ベンチマークを参考にする。国内の実際の販売価格を調査し、特定のメーカーに有利な条件だけを選ばないこととした。
MacBook NeoはDell XPS 13と近い価格帯。実作業テストも踏まえて競争力を検証
最初に比較するのは、13インチディスプレイ、8GBメモリ、512GB SSDを搭載したMacBook Neoだ。
Apple A18 Proを搭載し、2408×1506ピクセルのLiquid Retinaディスプレイとアルミニウム製筐体を採用する。重量は約1.23kg、価格は13万7800円だ。
MacBook Neo。 画像●Apple
もっとも直接的な競合となるのが、Dellの「XPS 13 (DX13260)」だ。
2026年発売のこのモデルは、13.4インチディスプレイ、Intel Core 5 320、8GBメモリ、512GB SSDを搭載する。CNC加工アルミニウム製筐体を採用し、2560×1600ピクセルのタッチディスプレイを備える。最小重量は約1kgで、MacBook Neoより軽い。
Dell直販で確認された販売価格は13万9306円(原稿執筆時)。MacBook Neoとの差はわずか1506円だ。価格帯や画面サイズ、筐体の特徴が近いことから、本記事ではMacBook Neoの比較対象とした。
Dell XPS 13。 画像●Dell
CPU性能を比較すると、Geekbench 6の公開測定値ではMacBook Neoがシングルコア3535、マルチコア8920を記録している。一方、XPS 13はそれぞれ2684、7952だった。シングルコア性能ではNeoが優勢で、マルチコア性能も比較的近い水準にある。
重要なのは、両製品が同じ8GBメモリを搭載していても、実際の快適性がかならずしも同等にならないことだ。
macOSには、使用頻度の低いデータを圧縮してRAM内に保持するメモリ圧縮機能がある。これにより、物理メモリの使用量を抑え、実行中のアプリが利用できる領域を確保する。また、AppleシリコンはCPUとGPUでメモリを共有するユニファイドメモリ構造を採用しており、処理によってはデータの複製を減らせる。
ただし、メモリ圧縮はmacOSだけの機能ではない。Windowsも同様の仕組みを備えている。したがって、macOSのほうが常にメモリを効率的に使えると断定することはできない。
それでも、実機テストではMacBook Neoの8GBメモリが高い実用性を示している。
DouBtが2026年8月から公開している記事「MacBook NeoはビジネスPCとして使えるか?」では、8GBのMacBook Neoを16GBメモリ搭載のSurface Laptop 7、ThinkPad L13 Gen 6と比較した。
その結果、MacBook Neoはブラウザー15タブ、Excel、8K動画再生を同時に実行しても目立った遅延がなく、Microsoft OfficeやGoogle Workspaceの実作業でも良好な結果を示した。Excelのグラフ作成とPowerPointのPDF書き出しでは、3機種中最速となった。
一方、海外メディアWIREDによるMacBook NeoとXPS 13の8GB同士の比較記事では、両機とも複数タブを開くとメモリ使用率が90%を超えた。つまり、MacBook Neoの8GBがWindowsの16GBと完全に同等というわけではない。
MacBook Neoの8GBとWindowsノートPCの16GBは、メモリ容量や性能が等価ではない。ただし、一般事務用途ではそれぞれが購入候補になり得ることから、本記事では実際の業務を想定した参考比較として、Windows側の16GBモデルも掲載した。
表1 13型/8GB~16GB/512GBクラスのプレミアムノートPC比較
| 製品名 | CPU/画面/メモリ/SSD | 参考価格(税込) |
| MacBook Neo | A18 Pro/13.0型/8GB/512GB | 137,800円 |
| Dell XPS 13 | Core 5 320/13.4型/8GB/512GB | 139,306円 |
| Dell XPS 13 | Core 5 320/13.4型/16GB/512GB | 168,320円 |
| HP OmniBook 7 Aero 13 | Ryzen AI 5 340/13.3型/16GB/512GB | 139,800円 |
| NEC LAVIE Direct N13 Slim | Ryzen 5 7535HS/13.3型/8GB/512GB | 196,900円 |
| Surface Laptop 13インチ(第2世代) | Snapdragon X2 Plus/13.0型/16GB/512GB | 264,880円 |
※2026年10月下旬の掲載価格。XPS 13の16GBモデルはWindows 11 Pro搭載の期間限定価格であり、8GBモデルとはOSのエディションも異なる。HPは価格.com限定構成、NECは公式販売店の掲載例。Surfaceの保存領域はUFSだ。
この比較から見えてくるのは、MacBook NeoがWindowsのプレミアムノートPCと互角以上の価格競争力を持っていることだ。
8GB同士ならXPS 13とほぼ同価格だが、16GBのXPS 13と比較すれば、MacBook Neoの方が3万520円安い。ただし、これはメモリ容量に加えてWindowsのエディションやキャンペーン条件も異なる販売価格の比較であり、純粋なメモリ増設費用の差ではない。
また、HP OmniBook 7 Aero 13は16GBメモリを搭載しながら13万9800円と、MacBook Neoに近い価格だ。Windowsにも魅力的な選択肢が存在することを示している。
一方、Surface Laptop 13インチはアルミ筐体を採用するが、同等のストレージ容量を持つ16GBモデルは26万円を超える。
MacBook Neoは、メモリ容量という数字だけでなく、一般業務での実際の快適性まで含めて考えることで、価格面の魅力がいっそう明確になる製品だ。
15インチMacBook AirはSurfaceより安価。Dell XPSと比較しても価格競争力がある
次に、15.3インチディスプレイ、16GBメモリ、512GB SSDを搭載するM5世代のMacBook Airを比較する。
価格は26万4800円。10コアCPU、10コアGPUを備え、2880×1864ピクセルの高精細ディスプレイと約1.51kgのアルミニウム製筐体を採用する。
MacBook Air 15インチ。 画像●Apple
比較対象としてもっとも条件が近いのが、Microsoftの「Surface Laptop 15インチ (第8世代)」だ。
Snapdragon X2 Plus、16GBメモリ、512GB SSDを搭載するモデルは、Microsoft公式ストアの割引掲載価格が28万1380円、通常価格は32万7580円となっている(原稿執筆時)。
Surface Laptopは高精細なタッチディスプレイを備え、筐体もアルミニウム製だ。重量は約1.66kgで、MacBook Airの方が約150g軽い。
同じ16GB/512GB構成なら、MacBook Airの方が1万6580円安い。通常価格同士で比べれば、その差は6万円以上となる。
Dellの「XPS」シリーズとの比較も興味深い。
14インチの「XPS 14(DA14260)」は、Core Ultra 5 325、16GBメモリ、512GB SSDの構成で29万7381円。画面サイズはMacBook Airより小さいが、価格は約3万3000円高い。
一方、16インチの「XPS 16(DA16260)」は、Core Ultra 7 355、16GBメモリ、1TB SSDの構成で47万1595円となっている。ストレージ容量や製品クラスに違いがあるため直接比較は難しいが、プレミアムなWindowsノートPCがかならずしも安価ではないことを示す例だ。
ただし、Windows側にもより安い製品がある。
Dell 15は15.6インチ、Core Ultra 7 255H、16GBメモリ、512GB SSDの構成で20万7980円という量販店での販売例がある。こちらは樹脂製筐体であり、ディスプレイもフルHDクラスとなる。
Dell 15 D15260。 画像●Dell
さらに、Dell 16 Plusは16インチ、Ryzen AI 5 340、16GBメモリ、512GB SSDという構成で22万2648円。天板と底面にアルミニウムを使用するが、パームレストなどは樹脂製で、画面解像度も1920×1200ピクセル、重量は約1.83kgだ。
表2 14~16インチ/16GB/512GB~1TBクラスのノートPC比較
| 製品名 | CPU/画面/メモリ/SSD | 参考価格(税込) |
| MacBook Air 15インチ | Apple M5(10コア)/15.3型/16GB/512GB | 264,800円 |
| Dell 15 D15260 | Intel Core Ultra 7 255H/15.6型/16GB/512GB | 207,980円 |
| Dell 16 Plus | AMD Ryzen AI 5 340/16.0型/16GB/512GB | 222,648円 |
| Surface Laptop 15インチ(第8世代) | Qualcomm Snapdragon X2 Plus(10コア)/15.0型/16GB/512GB | 281,380円 |
| Dell XPS 14 | Intel Core Ultra 5 325/14.0型/16GB/512GB | 297,381円 |
| Dell XPS 16 | Intel Core Ultra 7 355/16.0型/16GB/1TB | 471,595円 |
※Dellは直販価格を基本とし、Dell 15のみ量販店の掲載例。SurfaceはMicrosoft公式価格。XPS 16は構成・性能・用途が異なる参考比較だ。
CPU性能については、15インチMacBook AirのM5がGeekbench 6でシングルコア4191、マルチコア1万7276を記録している。これは一般的な事務用途には十分すぎる水準であり、高負荷な処理にも対応できる。
ただし、CPU性能やGPU性能は異なるOSやアーキテクチャー間で単純比較できず、アプリによって得意不得意も異なる。
価格面での結論は明確だ。
購入価格を最優先するなら普及価格帯のWindowsノートPCが有利だが、アルミ筐体、高精細ディスプレイ、軽量性、処理性能を重視すると、MacBook AirはWindowsのプレミアムノートPCに対して価格競争力を持つ。
とくに、同じ15インチクラスのSurface Laptopより安価になっていることは、従来のMacBookに対する価格イメージを見直す材料となる。
さまざまな業務で、MacBookが合理的な選択肢になる
今回の調査で明らかになったのは、これまで価格面で不利と考えられてきたMacBookが、同等クラスのWindowsノートPCと比較しても、価格競争力を持つようになったという事実だ。
中小企業がパソコンを導入する際、この変化は大きな意味を持つ。
従来、業務用PCの性能はローカルで動作するアプリケーションの処理能力に大きく左右されていた。しかし現在では、顧客管理、営業管理、会計、勤怠、文書共有、社内コミュニケーションなど、多くの業務がクラウドサービス上で実行されるようになっている。
Microsoft 365やGoogle Workspaceをはじめ、Webブラウザーから利用できるサービスが中心の業務では、OSによる違いを意識する機会は以前より少ない。
もちろん、Windows専用の業務アプリケーション、Microsoft Access、Power BI Desktop、独自のExcelマクロなどを利用する企業では、Macとの互換性を確認する必要がある。周辺機器や認証システムも検証対象となる。
また、ローカルAI処理、動画編集、3D設計など、高い演算性能や大容量メモリが必要な業務では、より高性能な製品を選ぶべきだ。
しかし、メール、Web会議、文書作成、表計算、クラウドサービスの利用が中心なら、CPUのベンチマークスコア以上に、ディスプレイの見やすさ、キーボードの操作性、重量、バッテリー駆動時間が日々の生産性を左右することがある。
この点で、MacBook Neoは一般事務や営業で想定される基本的な業務を担うモバイルPCとして、MacBook Airは広い画面と携帯性を両立したい業務向けのPCとして、有力な選択肢となる。
とくに注目すべきは、必要なメモリ容量も業務内容から判断できるということだ。
従来の調達では、WindowsノートPCの16GBメモリ搭載モデルを標準的な選択肢とする企業も少なくないだろう。しかし、一般的なクラウド業務でMacBook Neoの8GBが十分な快適性を発揮するなら、より少ない初期投資で必要な環境を整えられる可能性がある。
一方、複数の大容量ファイルや多数のアプリを常時使用する従業員には、16GB以上のメモリを搭載するMacBook AirやWindowsノートPCを選ぶ方が適切だ。
導入管理の問題も考慮する必要がある。Macを追加すれば、社内の管理手順やセキュリティポリシーの見直しが必要になる場合もある。しかし、Microsoft IntuneはmacOSのデバイス管理に対応しており、Windows中心の環境でもMacを管理することは可能だ。
重要なのは、一斉にMacへ移行することではない。業務ごとに最適な端末を選び、導入費用、運用管理、保守、従業員教育などを含めた総保有コストで判断することだ。
たとえば、Dell XPS 13の16GBモデルとMacBook Neoを10台ずつ比較すると、今回の掲載価格ではMacBook Neoの方が約30万円安い。一方、Dell 16 Plusと15インチMacBook Airでは、Windows側の方が約42万円安い。
この差額をどう評価するかは、画面品質、携帯性、業務ソフトとの互換性、管理コストによって変わる。
今回の比較は、Macの「価格が高い特別なパソコン」という従来のイメージを見直すきっかけとなるものだ。企業の端末調達において、Macを最初から候補から外す理由は少なくなりつつある。
MacBookを選ぶか、WindowsノートPCを選ぶか。その判断に必要なのは、従来の常識や先入観にとらわれず、自社の業務環境や運用上の課題を見つめ直し、最適な選択肢を検討する姿勢だ。




