大きな被害を出した「千葉豪雨」など、今年8月中旬から9月上旬にかけて「警戒レベル5相当」の防災気象情報が出された6件の大雨のうち、千葉県や福井県、鹿児島県屋久島周辺の3件は地球温暖化の影響で発生リスクが高まった結果だったことが「極端気象アトリビューションセンター(WAC)」の分析で明らかになった。WACは7月に西日本を中心に観測された記録的暑さも同様の分析をしており、今夏に多くの人が実感した極端気象は温暖化が発生リスクを高めたことが科学的に示された形だ。

WACではリサーチフェローの佐藤友徳・北海道大学大学院地球環境科学研究院教授が中心になり、8月は13日に千葉県、27日に石川・富山両県、30日に福井県、9月は5日に鹿児島県屋久島、7日に東京都伊豆諸島北部、8日に愛知・岐阜両県でそれぞれ発生した大雨という気象現象に長期的な温暖化がどのように重なって影響したかを分析した。

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    今回の分析対象になった6件の大雨を招いたそれぞれの日の午前9時の天気図(気象庁のホームページからWAC作成、WAC提供)

いずれも気象庁が警戒レベル5相当の防災気象情報として大雨特別警報や土砂災害特別警報などを発表している。千葉豪雨では、8月13日夕方から14日未明にかけて積乱雲が発達し、千葉市で1時間115ミリ、24時間367ミリの雨を観測。排水が追いつかない「内水氾濫」が多発し、死者13人、住宅被害数千棟などの大きな被害を出した。

分析には、気候モデルによる膨大な計算結果を蓄積したビッグデータの「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF)」を利用。AIの機械学習で過去の気圧配置事例を探す「天気図アナログ法」を使って温暖化の影響を加味した場合と温暖化がなかったと仮定した場合の雨量を比較した。

これはスーパーコンピューターでのシミュレーションを繰り返して一つ一つの極端気象イベントの要因を明らかにする「イベントアトリビューション」の手法だ。この手法では、前線や低気圧などの気圧配置が似た事例を比較することで温暖化を含む気候と含まない気候で雨の降り方がどう違うかが明らかになる。

分析の結果、千葉豪雨をもたらした8月13日の関東地方では、似た気圧配置の下で地域内の48時間降水量の最大値が200ミリを超える確率は、温暖化の影響がある条件では21%、温暖化がない条件では9%との数値が出た。WACは、同じ気圧配置が現われた場合、温暖化した現在のような気候下では同200ミリを超える確率が2.3倍になったことを示したとしている。

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    千葉豪雨の直後に上空から被害を調査する国土交通省関東地方整備局のヘリが撮影した動画から(同地方整備局提供)

同じような分析で、8月30日の福井豪雨が発生した北陸地方は8倍、9月5日の鹿児島県屋久島の大雨があった九州南部は1.5倍、それぞれ温暖化により同200ミリを超える大雨の確率が増えた。この倍率は、一定の雨量を超える確率の比を意味し、温暖化が大雨の発生リスクを押し上げたとする判断の根拠となるという。

今回の分析対象のうち、8月27日の石川・富山両県や、9月8日の愛知・岐阜両県の大雨についても温暖化の影響の可能性が示されたが、WACは信頼性の高い評価にはさらに多くの類似事例が必要だとしている。

一方、9月7日の伊豆諸島北部の大雨分析では温暖化がなかったと仮定した方が大雨発生確率が高くなるとの結果となった。WACは当時の局地的な気象条件なども加味した追加の解析や数値シミュレーションの検証が必要としている。

WACの共同代表を務める渡部雅浩・東京大学大気海洋研究所教授は、WACが今回公表した9月25日に先だって同月15日、都内での会合で「イベントアトリビューションという研究分野では今起きている極端な気象に温暖化がどれだけ影響しているかを定量的に見える形で示すことができる」「今後5年、10年というスパンで見てもすぐに温暖化の抑制はできそうにないので猛暑、豪雨、洪水といった気象災害に対する防災体制の強化が必須だ」と述べている。

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    WAC立ち上げに尽力した渡部雅浩教授

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