世界中の時計や時刻を合わせるための協定世界時で、原子時計の時刻と地球の自転の間のずれを調整してきた「うるう秒」を廃止することが決まった。単位やその運用を議論する、国際度量衡総会が決議した。情報化の進展を受けたもので、今後は、ずれを3600秒(1時間)まで許容し、数百年後に「うるう時」でまとめて調整することになった。
協定世界時では、セシウム原子が振動する時間を基に1秒を定義することが、国際単位系(SI)で定められている。一方、地球の自転は細かい変動があり、精密なセシウム原子時計に基づく時刻との間に、時間と共にずれが生じる。このずれが0.9秒を超えないよう、原子時計の時刻に1秒を加えるか引く調整が、うるう秒だ。産業技術総合研究所によると1972年に始まり、これまで27回、いずれも1秒を加える形で実施されてきた。直近では、日本時間2017年元日の午前8時59分59秒の後に「59分60秒」を加えた。
しかし近年は情報通信技術の進展により、この調整が社会インフラの機器類や経済社会活動に与える影響が拡大した。また、うるう秒の採用以来、地球の自転は遅くなってきたが、2000年以降は速度の低下が鈍り、20年以降は逆に速まっている。この変化の予測が難しい上に、初めて1秒を差し引く“負のうるう秒”によるトラブルも懸念された。こうした状況から見直しが進んだ。
今月15日までフランス・ベルサイユで開かれた第28回の同総会で、うるう秒の実質的な廃止を正式に決議した。世界計量記念日である来年5月20日から正式に適用する。初のうるう時の実施は、数百~1000年後が見込まれる。2022年の前回総会では、35年までに廃止するとされたが、リスクを早く解消するために前倒しが決まった。
産総研計量標準総合センターの安田正美・時間標準研究グループ長は総会に先立つ7月の会見で「各国の時差は大体、1時間おき。また欧米などには時刻を1時間早めたり遅くしたりするサマータイムがあり、慣れている。中途半端に2、3分ずれるより分かりやすい。数世紀先の人類はもっと賢く、問題をスマートに解決するだろう。こうした希望から、このような提案がなされた」と説明した。
総会はこのほか、秒の定義の変更を引き続き検討することも決議した。セシウム原子時計は1967年に、1秒の定義として採用。誤差は3000万年に1秒などとされ、日常生活や技術社会を支えてきた。近年の量子力学の発展などを受け、桁違いに精密な時計による新たな秒の定義が求められている。
2030年の次回総会での決議を目指しており、東京大学大学院工学系研究科の香取秀俊教授らが開発した「光格子時計」が、その有力候補となっている。光格子時計はストロンチウムなどの原子をレーザー光で作った格子に閉じ込め、原子が特定の周波数を持つ光を吸収することを利用し、時間を計測するもの。香取氏が01年に提唱し、14年には誤差が300億年に1秒などとされる時計を開発した。
今回の総会は宇宙開発利用の進展を見込み、月面活動で用いる国際基準時の検討を進めることも決議した。
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