レノボ・エンタープライズ・ソリューションズは10月15日、企業のAI活用を加速する新プログラム「Lenovo AI Express」を発表した。利用規模に応じた3種類の検証済み構成を用意し、対象システムを最短15営業日で出荷する。AIインフラの調達や構築に要する時間を短縮し、PoC(概念実証)から本番運用への移行を支援する。

AI導入の壁となる複雑性と調達のリードタイム

冒頭、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 代表取締役社長の張磊(チョウ・ライ)氏は、AI Expressの提供について「当社はこれまで『Smarter AI for All』というスローガンを掲げてきたが、本当にAIの恩恵を届けられているかと言えば、まだ課題があるのも事実だ」との認識を示した。

  • レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 代表取締役社長の張磊(チョウ ライ)氏

    レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 代表取締役社長の張磊(チョウ ライ)氏

同氏によると、企業におけるAIシステムの導入は複雑でさまざまなリスクを伴うほか、ROI(投資対効果)を得られるのかという不安があるという。加えて、AIインフラの調達に長期間を要することも企業が導入を躊躇する要因になっていると指摘。そのため、同社ではAI Expressを立ち上げたというわけだ。

張氏は「現在、15~25営業日で提供できる体制を整えている。また、導入・運用サービスも含め、将来的な拡張に対応できる環境を提供することで、お客さまがROIを実現できるように支援していく」と力を込めた。

Lenovo AI Express、3つの構成を最短15~25営業日で出荷

続いて、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 製品企画部 部長の櫻井義士氏がAI Expressについて説明した。AI Expressは、Lenovoが推進する「Lenovo Hybrid AI Factory with NVIDIA」の導入を迅速化するためのプログラムだ。

  • レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 代表取締役社長の張磊(チョウ ライ)氏

    「Lenovo AI Express」の概要

Lenovo Hybrid AI Factoryがワークステーション、エッジ、データセンター、クラウドまでをカバーする幅広いポートフォリオであるのに対し、AI Expressはデータセンター向けの3つの標準構成に対象を絞り、迅速な導入を可能にする。企業の利用規模や用途に応じて「Small」「Medium」「Large」の3つのクイックスタート構成を用意している。

注文から出荷までを最短15~25営業日に短縮し、企業のAI戦略から本番運用への移行を加速することを狙う。Smallが最短15営業日、Mediumは同20営業日、Largeを同25営業日で出荷し、ハイブリッドAIの導入を促進する。SmallはAI推論を手軽に始めたい企業向け、Mediumは高スループットな推論やエージェント型AI向け、LargeはLLM(大規模言語モデル)を活用したフルスケールの生成AI環境向けとなる。

  • 「Lenovo AI Express」の概要

    「Lenovo AI Express」の概要

Smallは「Lenovo Hybrid AI 221プラットフォーム」をベースとし「Lenovo ThinkSystem SR650a V4」に「NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition」を2基搭載。平均モデルサイズ7B~70BのAI推論を想定し、30TPS以上の処理性能で数十人規模のユーザーをサポートする。

Mediumは「Lenovo Hybrid AI 285プラットフォーム」を採用し、「Lenovo ThinkSystem SR675 V3」にNVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Editionを8基搭載。70B~400B規模のモデルを用いた高スループット推論やエージェント型AIを対象とし、30TPS以上の性能で数百人規模の利用に対応するという。

Largeでは「Lenovo Hybrid AI 289プラットフォーム」をベースとする。「Lenovo ThinkSystem SR680a V4」に「NVIDIA HGX B300 NVL8」を搭載し、最大1兆パラメータ規模の生成AIモデルを想定しており、数千人規模の利用を支援する。

  • 各構成の概要

    各構成の概要

AIモデルやワークロードに応じて構成を選択

ただし、櫻井氏は「単純にサーバの規模だけで選ぶべきではない。重要なのはサーバの大きさではなく、利用するAIモデルやワークロード、ユーザー数であり、要件に応じて最適な構成を選択してもらえればと考えている」と説く。モデルサイズや利用人数、TPSなどの指標は、レノボの社内サイジングツールに基づいて算出されているという。

AI Expressは単なるハードウェア販売ではない点も特徴だ。「NVIDIA AI Enterprise」をはじめとしたエンタープライズAIソフトウェアに加え、導入支援や運用サービスを組み合わせて提供。顧客は標準化された構成の中から選択したうえで、必要なソフトウェアやサービスを追加できる。さらに、将来的には「Lenovo Hybrid AI Advantage」を通じて拡張することも可能としている。

導入プロセスについては、まずAIファクトリーの構成を選び、その後に必要なAIソフトウェアやサービスを追加。そこから15~25営業日で出荷し、その後も継続的に拡張していく。こうした短納期を支えているのがレノボのグローバルサプライチェーンであり、同社は10の市場で30以上の製造拠点を展開し、日本でも島根県と山形県米沢市に拠点を構える。

  • 導入プロセスの概要

    導入プロセスの概要

櫻井氏は「AIインフラはGPUだけを確保すれば実現できるわけではない。サーバ、ネットワーク、ストレージなどを組み合わせ、システムとして動作させる必要がある。対象となる構成や部品をあらかじめ標準化し、レノボのグローバルな供給体制と組み合わせることで、迅速な出荷と導入時期の予見可能性の向上を図っている」という。

さらに、パートナー企業とも連携しつつ、PoC(概念実証)から本番環境への展開を支援していく考えを示した。

AI導入から本番運用までを4領域のサービスで支援

AI Expressではハードウェアだけでなく、導入から運用までを支援する各種サービスもあわせて提供する。レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ ISGプロフェッショナルサービス本部 本部長の野上友和氏は「AI導入から価値創出までを包括的なサービスで支援する」と力を込める。

  • レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ ISGプロフェッショナルサービス本部 本部長の野上友和氏

    レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ ISGプロフェッショナルサービス本部 本部長の野上友和氏

同氏によると、多くの企業はAI導入に際して、ノウハウ不足や運用の複雑さ、GPU性能の最適化、PoCから本番環境への移行といった課題を抱えているという。そこでAI Expressでは「保護」「設置」「最適化」「稼働」の4つの領域でサービスを提供していく。

  • 「保護」「設置」「最適化」「稼働」の4つの領域でサービスを提供する

    「保護」「設置」「最適化」「稼働」の4つの領域でサービスを提供する

まず、保護ではインフラ向けサポートサービス「Premier Support for Infrastructure」を提供し、予防的なサポートによりシステム障害のリスクを抑制し、ダウンタイムの削減や事業継続性の確保を支援する。

設置では「Hardware Installation Services」を用意。AIサーバーは高性能GPUを複数搭載するため、物理的な導入作業や環境構築が複雑になりがちだ。野上氏は「GPUサーバの導入には専門的な知見が求められる」とし、設置から検証までを完了した状態で顧客へ引き渡すという。

導入支援については「Premier Deploy for Infrastructure」として、プロジェクトの規模や要件に応じて「Standard Deploy」「Premier Deploy」「Premier Deploy Plus」の3つのサービスを選択できる。Standard Deployはハードウェア設置を中心とした基本サービス、Premier Deployは統合試験や知識移転まで含むサービス、Premier Deploy Plusは導入後の長期サポートや1年間のヘルスチェックまでカバーするサービスとなる。

  • 「Premier Deploy for Infrastructure」の概要

    「Premier Deploy for Infrastructure」の概要

GPU最適化と「AI Fast Start」で最短90日の価値実証

最適化の領域では「GPU Advanced Services」を提供。ワークロード評価やサイジング、ワークロードの評価やサイジング、アーキテクチャ設計を担う計画・設計サービスに加え、GPU構成、知識移転、性能調整、監視、保守などを提供する。AIの用途は顧客によって異なり、新しいユースケースも次々に生まれているため、それぞれに適したシステム設計やGPU性能の最適化が重要になるという。

また、マネージドサービスではGPUサーバやNVIDIA AI Enterprise関連ソフトウェアの運用支援を提供する。ログ管理や監視、保守作業、バックアップなどを支援し、継続的な安定運用を後押しする。

最後の稼働にあたるサービスとして用意されるのが「AI Fast Start」だ。これは、AIによる価値創出を最短90日で実証することを目的としたプログラムで、実稼働可能なパイロット環境を立ち上げることに加え、成功指標やROI目標の設定、データ・インフラの運用準備計画、将来的な拡張ロードマップの策定まで支援する。

  • 「AI Fast Start」の概要

    「AI Fast Start」の概要

野上氏は「AIは導入して終わりではなく、利用が進むにつれて求められる機能や環境が変化していく。レノボが世界中で蓄積してきた知見を活用しながら、導入の加速、リスクの削減、そして迅速な価値創出を支援していく」と述べた。

同社はAI Expressを通じて、AIインフラの調達から設計、導入、運用、拡張までを包括的に支援し、企業のAI活用を本番環境へと導く考えだ。