この半導体ニュースのまとめ
・AMDがエージェンティックAI向けのオープンなラック設計「AMD Helion」を発表
・CPU専用構成は第6世代EPYCを搭載し、ラック当たり最大3万2768 CPUコアに対応
・EPYCとInstinct MI350Pを組み合わせた企業向け構成も用意し、2026年11月から提供へ
AMDは10月12日(米国時間)、エージェンティックAI向けインフラとしてオープンラック設計「AMD Helion」を発表した。
AMD Helionは、Open Compute Project(OCP)の仕様設計を基礎とし、顧客やシステムパートナーがエージェンティックAIの処理内容に応じて、CPUのコア密度や性能、消費電力、GPUアクセラレーションの構成を調整できるようにしたシステム。これまでのラックスケールAI基盤「AMD Helios」で進めてきたオープンプラットフォームの考え方を、AIエージェントの実行環境へ広げる位置付けだと説明する。
エージェンティックAIで重要となるCPU処理
エージェンティックAIは、人間から与えられた目標に基づき、AIエージェントが計画を立て、必要なモデルやツールを呼び出しながら処理を進める仕組みであり、その処理内容は個人向けAIエージェント、企業アプリケーション、コード実行、複数の工程で構成される複雑なワークフローなど多岐にわたり、必要となる演算資源も一様ではない。
大規模言語モデルによる推論ではGPUが重要になる一方、エージェントの実行、ワークフローの制御、コード処理、データの準備、外部ツールとの連携などではCPUも重要な役割を担う。
AMD Helionでは、AIエージェントを動かすCPU処理と、AIモデルの推論を担うGPU処理を分け、それぞれの用途に必要な演算資源を組み合わせられるようにする。
CPU専用ラックは最大3万2768コアを搭載
ハイパースケール環境向けには、第6世代AMD EPYCプロセッサを搭載するCPU専用ラックを用意。ラック当たり最大3万2768 CPUコアを搭載でき、AIエージェントの実行へ専用の処理能力を割り当てることを想定する。
AIモデルの推論は、別に構築したGPUなどの推論インフラへ接続する。エージェントの実行とモデル推論を別のシステムに分離することで、それぞれの用途に応じてCPUとGPUの規模を調整できる。
大規模なAIサービスを提供するクラウド事業者やハイパースケーラーでは、複数のAIエージェントから送られる処理要求と、モデル推論に必要なGPUリソースの量が必ずしも同じ割合で増えるとは限らない。
CPUとGPUを固定比率で搭載するのではなく、エージェント実行用のCPUラックとモデル推論基盤を個別に拡張できる構成とすることで、利用可能な電力やコストに合わせた設備構成を可能にする狙いがある。
EPYCとInstinct MI350Pを1ラックへ統合
企業向けには、AMD EPYC CPUノード、AMD Instinct MI350P GPUノード、汎用コンピュートを1つのプラットフォームへ組み合わせるオールインワン構成も提供する。
AIエージェントの実行、AIモデルの推論、それらを支えるデータ処理やアプリケーション処理を1つのラック内へ収容することで、独立した大規模GPU基盤を構築しない企業でも、エージェンティックAI向けインフラを導入できるようにする。
また、空冷と液冷の双方に対応する構成を想定しており、顧客はデータセンターの冷却設備や電力供給能力、処理するワークロードに応じて、CPUとGPUの構成や冷却方式を選択することができるようになっている。
さらに、既存のITインフラへの導入も想定しており、システムパートナーが顧客の環境に応じた構成を設計することで、既存投資を新たなAI機能の基盤として活用できるとする。
AIモデルの呼び出しを振り分けるトークンルーターを統合
AMD Helionは、オープンなハードウェアとソフトウェアに加え、AIエージェントによるモデルの呼び出しを振り分ける統合型トークンルーターも備えるとする。
エージェンティックAIでは、すべての処理を単一の大規模言語モデルへ送るのではなく、処理内容に応じて複数のAIモデルを使い分けることが想定されており、トークンルーターにより、AIエージェントから送られるモデル呼び出しを、フロンティアモデルやオープンソースモデルへ振り分ける。これにより、顧客やパートナーは、必要となる性能や利用するモデル、消費電力、コストなどを踏まえ、エージェントの実行、モデル推論、関連するコンピュート処理へ割り当てるCPUとGPUの構成を調整できることとなる。
Heliosとは異なるエージェンティックAI向け設計
AMDがすでに展開しているAMD Heliosは、AMD Instinct GPU、AMD EPYC CPU、AMD Pensandoネットワーク、ROCmソフトウェアなどを組み合わせ、大規模AIモデルの学習および推論へ対応するラックスケールAI基盤であるが、今回発表されたAMD Helionは、エージェンティックAIにおけるエージェントの実行へ焦点を当て、CPU専用構成とCPU・GPU統合構成の双方を選択できるようにしたラック設計となる。
名称は似ているが、Heliosを構成するGPUを別製品へ置き換えたものではなく、異なる役割を担うAIインフラとして位置付けられており、GPUによるモデル推論だけでなく、AIエージェントの実行やコード処理、ワークフローのオーケストレーションを担うCPU処理の規模が拡大することを見据え、CPUとGPUの比率を用途別に調整できることを重視したシステムとなっている。
仕様をOCPへ提供、2026年11月から提供へ
なお、AMDは、AMD Helionの仕様をOCPへ提供し、コミュニティによる追加開発や採用を可能にする計画を示しており、そのラック構成は、Cisco、Dell Technologies、Hon Hai Technology Group、HPE、Lenovo、QCT、Supermicro、Wiwynnなどのエコシステムパートナーと開発を進めているという。
パートナー各社は、ラックレベルのシステム統合、ネットワーク、ストレージ、冷却、管理ソフトウェア、量産など、それぞれの技術や事業基盤を生かしてAMD Helionを製品化する予定で、これらのエージェンティックAI向けラック構成は現在開発中で、2026年11月からの提供開始が予定されており、AMDでは、Heliosに加える形でHelionを展開することで、AIモデルの学習・推論からエージェントの実行まで、ラック単位でAIインフラを提供できる体制を強化していくとしている。
