この量子コンピュータ関連ニュースのまとめ

・AMD、IBM、ORNLが量子誤り訂正の共同設計プラットフォームを構築
・IBM Quantum NighthawkとAMD製CPU/GPU搭載HPCシステムを同じ環境に配置
・CPU、GPU、アダプティブSoC、ROCmで量子計算を支える古典基盤を構築

AMDは11月5日(米国時間)、IBMおよび米国オークリッジ国立研究所(ORNL)と、将来の量子コンピューティングシステムに必要となる量子誤り訂正の共同設計プラットフォームを構築したと発表した。

量子コンピュータを実用的な規模へ拡大するためには、量子プロセッサだけでなく、量子ビットの制御、演算結果の読み出し、システム全体のオーケストレーション、シミュレーション、科学技術計算、量子誤り訂正などを担う古典コンピューティング基盤が必要となる。

今回の共同設計プラットフォームでは、IBMが量子コンピューティング技術、ORNLが科学研究およびコンピューティング環境、AMDが量子処理と科学技術ワークロードを接続する古典コンピューティング技術とオープンソフトウェアを提供する。

120量子ビットのNighthawkとHPCシステムを連携

最初のシステムは、120量子ビットの量子プロセッサ「IBM Quantum Nighthawk」を含むIBMの量子コンピュータと、AMD EPYC CPUおよびAMD Instinct GPUを搭載するORNLのHPCシステム「Umbra」を同じ環境に配置する。

  • IBM、オークリッジ国立研究所(ORNL)、AMDによる量子誤り訂正のための新しい共同設計プラットフォーム

    IBM、オークリッジ国立研究所(ORNL)、AMDによる量子誤り訂正のための新しい共同設計プラットフォーム。左のIBMの量子コンピュータを右のORNLの高性能コンピューティングシステム「Umbra」と併設している (出所:IBM/ORNL/AMD)

量子プロセッサとHPCシステムを近接させることで、将来の量子/古典ハイブリッドシステムに必要なアーキテクチャ、ソフトウェア、ワークフローを評価する共通環境として活用する。

IBM Quantum Nighthawkは、120個の量子ビットを四角格子状に配置し、218個のチューナブルカプラーによって量子ビットを接続する量子プロセッサ。従来のIBM Quantum Heronと比べて複雑な量子回路を実行できるよう設計されており、量子優位性の実現に向けたシステムとして位置付けられている。

一方のUmbraは、AMD Instinct MI355X GPUと第5世代AMD EPYC CPUで構成するHPCシステムで、量子プロセッサの動作を支える古典計算や科学技術計算を担当する。

量子誤り訂正を古典コンピューティングで支援

量子ビットは外部環境の影響を受けやすく、演算や読み出しの過程でエラーが発生する。このため、実用的な量子コンピュータでは、複数の物理量子ビットを組み合わせて論理量子ビットを構成し、発生したエラーを検出、訂正する量子誤り訂正が不可欠となる。

量子誤り訂正では、量子プロセッサから取得した情報を古典コンピュータで解析し、発生したエラーを推定したうえで、訂正に必要な処理を量子プロセッサへ迅速に返す必要がある。量子ビットの数が増えるほど解析する情報量も増えるため、低レイテンシで動作する演算装置と大規模な並列処理能力の双方が求められる。

AMDとIBMはこれまでも、GPUを活用した科学技術計算や、FPGAによる量子誤り訂正向けのリアルタイムデコードで協業してきた。今回の共同設計プラットフォームでは、こうした取り組みをORNLの研究環境へ広げ、量子プロセッサと古典コンピューティングが大規模に連携するための要件を検証する。

CPU、GPU、アダプティブSoCを用途別に活用

AMDは、量子/古典ハイブリッドシステムで求められる処理に応じ、CPU、GPU、アダプティブSoC、オープンソフトウェアを組み合わせる。

AMD EPYC CPUは、量子プロセッサ、アクセラレータ、ストレージなどの計算資源を連携させ、複雑なハイブリッドシステム全体を制御するオーケストレーションと汎用処理を担う。

AMD Instinct GPUは、量子システムのシミュレーションや最適化、量子ワークロードの周辺で必要となる並列科学技術計算を高速化する。

AMD VersalアダプティブSoCは、量子プロセッサの近くに配置し、量子ビットの制御、読み出し、誤り訂正に必要なデコードなど、低レイテンシでの応答が求められる処理を担うことを想定する。

また、オープンソフトウェア基盤「AMD ROCm」を利用し、HPCやAIアプリケーションとAMDのハードウェアを量子/古典ハイブリッド環境へ接続する。AMDは、これらの技術を組み合わせることで、リアルタイム制御から大規模な科学技術計算までを支える古典コンピューティング基盤を提供する考えだ。

2028年の科学的に有用な量子コンピュータを見据える

共同設計プラットフォームでは、量子プロセッサと古典コンピューティングを組み合わせ、量子誤り訂正に必要なシステム設計を検証するほか、米国エネルギー省(DOE)が進める「Quantum Genesis Mission」を支援する。

同ミッションは、科学研究で利用可能な量子コンピュータを2028年までに実現することを目標としている。今回のプラットフォームを活用し、量子プロセッサ、古典コンピューティング、ソフトウェアを大規模に連携させるための技術開発を進める。

将来的には、ORNLのOak Ridge Leadership Computing Facilityに設置される「Lux SI(Super Intelligence)+HPC」スーパーコンピュータへ接続する計画も示している。Lux SI+HPCもAMD EPYC CPUとAMD Instinct GPUを搭載する予定で、量子コンピューティング、AI、HPCを統合した研究環境へ拡張する。

AMDは、量子コンピュータが古典コンピュータを置き換えるのではなく、両者を組み合わせたハイブリッドシステムが将来の量子コンピューティング基盤になるとみている。IBMやORNLなどと共同設計を進めることで、将来の量子コンピュータに必要となる古典コンピューティング基盤の構築を目指すとしている。