Intel(インテル)は4月7日、Elon Musk(イーロン・マスク)氏のSpaceX、xAI、Teslaが進めるAIチップ複合施設「Terafab」プロジェクトへの参加を発表した。マスク氏が打ち出したTerafab構想は世界最大級の半導体工場という点に注目されがちだが、本質は単なる規模の拡大ではない。年間1テラワットに及ぶ計算能力の生産を掲げており、半導体をデバイスではなく計算資源として捉え直そうとしているようだ。
年間1テラワットを掲げる「Terafab」構想
TerafabはEV(電気自動車)や自律走行、宇宙空間のAIデータセンター向けプロセッサの製造を目指す大規模拠点であり、米テキサス州オースティンに建設される。年間1テラワット規模のコンピュート能力の生産を目指すとしており、インテルの製造技術が実現に役立つと期待される。同プロジェクトでは、車両・ヒューマノイドロボット向けと、宇宙向けAIデータセンター向けの2つの先端チップ工場を建設する計画だ。
設計から製造、メモリ、先端パッケージまでを単一拠点で完結させることを計画しているが、TSMCに代表される既存の水平分業モデルとは異なる発想となっている。背景には自動運転やロボット、AI基盤といった分野で将来的に必要となる計算資源が、現在の供給体制では対応が難しいという問題意識があると考えられる。
インテルが正式に参画を表明したことで、Terafab構想を巡る評価は今後変化していくだろう。設計から製造、パッケージングまで担ってきた同社が参画することで、技術的な検証対象となることが見込まれる。
インテルの参画で変わるTerafab
しかし、現時点では具体的な生産計画や投資などが明らかになっておらず、成功が約束されているわけではない。ただ、ファウンドリ事業の立て直しを進めているインテルにとって、Terafabは自社の製造技術を実証する場となる可能性はある。
現地報道などを見ると、Terafabは「米国版TSMC」と表現されることもあるが、単純に位置付けるのは適切ではないだろう。TSMCがファブレス企業を支える水平分業型モデルに対し、TerafabはTeslaやSpaceX、xAIといったグループ内の需要を前提としたIDM(垂直統合型)の構想に近い。
市場向けに製造サービスを提供することよりも、自社に必要な計算資源を安定的に確保することが主眼だ。自社の都合で生産調整とスケジュール管理、技術のすり合わせがしやすいといった点がIDMのメリットでもある。
現在のAIインフラは高性能GPUを購入し、データセンターに集約することが主流になっているものの、ロボットや自動運転などの用途ではコストや供給量、最適化の自由度といった点でも限界が見え始めている。
Terafabは計算力を外部から調達するのではなく自ら設計・製造する点に特徴があり、単なる内製化にとどまらず、半導体を個別製品ではなく工業的に生み出す計算能力として捉える発想の転換を伴う。AIインフラの将来像を考えるうえで、1つの極端な解を提示しているだろう。
成否を超えて問われる半導体供給モデルの未来
ただし、技術面、資金面のいずれにおいてもハードルが高く、成否を見通すことは困難だ。急増する計算需要に対し、半導体をどのような形で確保すべきか、どこまで自前化すべきかという問題は今後も避けて通れない。Terafabは完成形として評価するよりも、半導体産業とAIインフラが進み得る別の方向性を浮かび上がらせた試金石として位置付けるのが妥当ではないだろうか。
マスク氏は米国企業による米国での製造にこだわる可能性が高く、本命と思われていたサムスン電子ではなく米国企業のインテルをパートナーに選んだ。
では、メモリはどうなるのだろうか?サムスンはロジックやメモリも手がけているが、米国企業ではなく、メモリ工場も現地に持たない。米国企業としてはMicronが工場を展開しており、米国企業による米国での製造にこだわるならば、Micronとパートナーシップを組む可能性もあるだろう。
一方、Reutersによると、インテルのチップ受託製造事業であるIntel Foundryは2025年に103億2000万ドルの営業損失を計上。しかし、売上高は3%増加しており、次世代製造技術「18A」の外部顧客への提供も検討されるなど、回復の兆しも見え始めていると報じている。


