エレファンテックは3月27日、次世代パワー半導体向け製品として、自己組織化銅ナノ粒子(SA-CuNP)を用いた低温焼結型銅ナノペースト「SAphire D」の開発に成功したことを発表した。
銅ナノ粒子を効率的に活用する新手法とは?
近年、エネルギー分野やモビリティ領域を中心に需要が高まるパワー半導体。そのチップと放熱基板の接合においてはこれまで、主に“はんだ”が用いられてきた。ただ一方で、半導体チップのハイパワー化や高発熱化が進む中、はんだ接続では再溶融のリスクや熱伝導の低さによる放熱不足などの課題が顕在化していたとのこと。そのため半導体の高出力化における制約を解消する次世代接合ソリューションとして、高温度域でも再溶融などのリスクがなく、強固な接合を維持するとともに、高い熱伝導率も有する“焼結接合材料”が求められている。
この焼結接合材料として有力とされる手法に、ナノ材料の融点効果現象を活用したものがある。その中で先行して検討されてきたのが、バルク状態では融点961℃の銀をナノ粒子化することで約200℃での焼結を可能にした“銀ナノ粒子ペースト”。同ペーストは焼結後に銀本来に近い特性を示すことから、接合部が961℃近傍まで再溶融しないという特徴に期待が集まっていた。
しかしこのペーストは、成分の大半を純銀が占めるためコストが高く、用途が限定的だった。加えて、銀価格が高騰する近年では広く普及することは困難。そのため昨今では、銀に比べ約100分の1程度のコスト水準である銅を用いたナノ粒子ペースの開発が注目されている。
ただし銅にも課題がある。銅は銀に比べ酸化しやすい性質を持ち、低温での焼結が難しい。その実現のために融点降下を利用するには、粒子をナノサイズまで微細化する必要が生じるが、ナノ化すると比表面積は増大するため酸化しやすくなるほか、酸化を防ぐためにはナノ粒子表面を保護する有機分子が多量に必要となり、かえって焼結しにくくなるという「銅ナノ粒子のパラドックス」を抱えていた。一方でナノサイズより大きなミクロンサイズの銅粒子は酸化しにくいものの、融点降下が生じず低温焼結が実現できなかったという。
こうした課題の解決を目指したエレファンテックは、“ミクロンサイズの銅粒子表面が、ナノサイズの銅粒子で被覆されることで、全体が大きなナノ粒子かのように振る舞い低温で焼結する”という新たなメカニズムを発見。これは銅ナノ粒子の自己組織化現象を利用したものだといい、このメカニズムを活用して開発された銅ナノペーストのSAphire Dは、「ミクロンサイズ銅粒子の低温焼結実現」「有機分散剤の使用量最小化による高金属含有ペーストの実現」という特徴を備えるとする。
これらの特徴のうち前者については、銅ナノ粒子の自己組織化現象の活用により、ミクロンサイズの銅粒子に対してペースト中に10%程度含まれる少量のナノ粒子で被覆することに成功。実質的に“大きなナノ粒子”のような表面特性を付与し、金属成分の約90%がミクロンサイズの銅粒子であるにも関わらず、200℃から焼結可能な優れた低温焼結性が実現された。
一方の後者については、安定した分散状態の維持のためにペーストのうち数%以上の有機分散剤を添加していた従来に対し、ナノ粒子の添加量を最小限に抑えつつ、それらをミクロンサイズの銅粒子表面に自己組織化させることで、1wt%未満という極めて少量の分散剤でもペースト全体に行きわたる設計を実現したとのこと。その結果、高い金属含有率と安定した分散性を両立したペーストの開発に成功したとする。
ダイアタッチ材などへの適用にも期待
こうして完成したSAphire Dについて、エレファンテックは「高い接合強度と低抵抗」および「優れたコスト競争力と用途展開性」を同製品の強みとして挙げる。接合強度については、無垢銅どうしの250℃での加圧接合において40MPa超の接合強度を実現したほか、200℃においても加圧焼結によって25MPa以上の接合強度を確認。また無加圧条件下でも6.4μΩ・cmの低抵抗率が実現されたとしている。またコストの面では、ナノ粒子の配合量低減による製造コスト削減が可能なことから、ダイアタッチ材や大面積のTIM材をはじめとする放熱材料への展開も期待されるとした。
同社は、低温焼結型銅ナノペーストのSAphire Dが、すでに世界の主要パワー半導体メーカーにおいてもダイアタッチ材およびTIM用途でのサンプル評価を開始しているとしたうえで、今後量産プロセスへの適用に向けた取り組みを一層加速していくとする。またこれに伴い、エレファンテックは従来のPCB事業の枠を越え、「Nanomaterials Powering AI Computing」をキーワードに、ナノマテリアルを起点とした製品・ソリューションの提供を通じて、AI時代における技術開発の解決に貢献する企業として成長を目指すとしている。





