既報の通りAMDはCES 2026の基調講演においてRyzen AI 400シリーズやRyzen AI Max+シリーズ、Ryzen 7 9850X3Dなどの製品を発表したが、これに併せてEmbedded向けにも「Ryzen AI Embeddedシリーズ」を発表した。

Ryzen AI Embeddedは、名前からお分かりの様にRyzen AIシリーズプロセッサのEmbedded転用版という位置づけである。

このRyzen AI Embeddedは、特にAIを利用した低遅延/高性能のAI能力搭載プロセッサという位置づけであり(Photo01)、RoboticsやInteractive Retail、車載のIHU(Infotainment Head Unit)などに最適(Photo02)という位置づけである。特に昨今の車載向けにおける要求がより高まっている、というのがAMDの主張である(流石に8KのI/Fは要らないと思うのだが……)。

  • これまでのRyzen Embedded向けの用途に加え、より高いAI性能が必要とされるシーンで使える

    Photo01:要するにこれまでのRyzen Embedded向けの用途に加え、より高いAI性能が必要とされるシーンで使える、ということになる

  • 単にAI性能が必要というだけでなく、産業用途とかHMIに高性能なグラフィックのニーズが段々高まっている事も、実はRyzen AI Embeddedには都合が良いという事になる

    Photo02:単にAI性能が必要というだけでなく、産業用途とかHMIに高性能なグラフィックのニーズが段々高まっている事も、実はRyzen AI Embeddedには都合が良いという事になる。ただAutomotiveのADAS Demandは、流石にRyzen AI Embeddedでこれを直接処理する訳ではないと思うのだが……

  • Ryzen AI Embedded

    Photo03:Ryzen AI Embeddedは機能安全に関わる部分「以外」であるが、特に高級車においてはその「以外」の部分の要求レベルも高まっている、という事である

P100とX100という2つのシリーズを提供

さて今回発表されるのはRyzen AI Embedded P100シリーズとX100シリーズの2つであり、発表のタイミングでローエンドにあたる「P12x/P13x」がリリース。残りの製品は2026年中にリリース予定である。

  • 詳細なSKUは公開されていない

    Photo04:まだP100の12コアとかX100に関しては、詳細なSKUは公開されていない

P100とX100の違いであるが、こちら(Photo05)を見て頂ければ判るように、P100はRyzen AIベース、X100はRyzen AI Maxベースとなる。どちらもTSMC N4での製造である(Photo06)。

  • 想定されるマーケットが違うので、P100とX100のPackage Compatibilityは問題にならないのだろう

    Photo05:想定されるマーケットが違うので、P100とX100のPackage Compatibilityは問題にならないのだろう

  • P100シリーズはRyzen AI 5 330/340をベースとした構成と考えられる

    Photo06:詳細なSKUは後で示すが、P100シリーズはRyzen AI 5 330/340をベースとした構成と考えられる

このP100シリーズも適用範囲はかなり広い(Photo07)。

  • 想定されるマーケット

    Photo07:想定されるマーケット。もっともAerospace&DefenceにおけるUAVとかは、バッテリー駆動が求められるシーンで15WのTDPはちょっと苦しい様に思えなくもないが……

ユーザーが利用するWindowsのプラットフォームとしてはエントリモデルの性能ではあるが、Embedded向けとしてはかなり高いプロセッサ性能とGPU性能を持ち、さらに50TOPSのNPUというのはこのマーケット向けとしては突出した数字になるからだ。

内部構成はこちら(Photo08)で、このレベルで言えば既存のRyzen AIと差が無いのだが、ちょっと気になるのが内蔵Ethernetで10GbE w/TSNというのは従来のRyzen AIシリーズでは提供されていなかった様に記憶している。

  • 今回の製品はRyzen AI 5 340ベースと考えられる

    Photo08:iGPUのWGPが2つなので、CU数としては4つであり、今回の製品はRyzen AI 5 340ベースと考えられる

単にコンシューマ向けにはTSNの機能は不要なので無効化していただけで、実は当初からEmbedded転用を見越してTSNのサポートを搭載していたのかもしれない。

Versal AI Edge Gen2のアプリの動作が可能

ところで内蔵するNPUでこれはXDNA 2ベースなのはRyzen AIそのままなのだが、Versal AI Edge Gen2に搭載されるAI Engineと構成は同じものである。そこで「Versal AI Edge Gen2のAI Engineを使うアプリケーションはそのままNPUで動くのか?」と確認したところ、Yesとの事。もっともアプリケーション全体の環境は異なるから、そのまま同じBinaryが動作する訳ではないのだが、ことAI Engineを使う部分に関して言えばVersal AI Edge Gen2とRyzen AI Embeddedで共通なので、アプリケーションの移行が必要な場合でも作業が容易に可能になりそうだ。

純粋な処理性能という観点でも前世代に比べて大幅に向上している(Photo09~11)。

  • コアアーキテクチャの違いと動作周波数の違いの両方が効いてくる

    Photo09:コアアーキテクチャの違いと動作周波数の違いの両方が効いてくる格好だ。ちなみに6コア同士での対決である。恐らくTDP 54W同士での比較と考えられる

  • 妥当な数字

    Photo10:こちらもコアの性能と動作周波数の両面で大差があるから妥当な数字である

  • Ryzen Embedded 8000シリーズとの比較

    Photo11:こちらはRyzen Embedded 8000シリーズとの比較。Ryzen Embedded 8000シリーズも一応16TOPSのNPUを搭載しているが、Ryzen AI Embeddedの50TOPSとは比較にならない

AMDとしてはUse caseとして次世代のDigital Cockpit(Photo12)およびIndustrial Automation(Photo13)の事例を示しているが、こうした処理を1チップで実現できるのが強みとしている。

  • Digital CockpitにSafety Taskをどこまでやらせるのか?

    Photo12:Digital CockpitにSafety Taskをどこまでやらせるのか? という疑問は若干無くもない

  • 最近は産業機器にHeadlessも増えて来た

    Photo13:最近は産業機器にHeadless(ディスプレイを持たず、Tabletなどのリモート機器に表示)も増えて来たが、そうしたものだとWebUIになる関係でGPUの負荷は若干減る(が、GPU無しという訳にもいかない)とはいえ、まぁ妥当な構成ではある

Photo14が提供が開始されたP100シリーズ6製品である。サンプルチップおよび評価ボード、ドキュメントとツールについてはすでに提供開始。量産チップは2026年第2四半期に提供開始、Production Reference Boardは2026年後半に提供開始予定となっている。

  • TDPは15~30Wに切り替わった

    Photo14:Ryzen Embedded V2000シリーズにあった、TDP 10~25W製品が姿を消して、15~30Wに切り替わったのはちょっとネガティブな要因かもしれない