Intel(インテル)は長年の技術的優位性を失い、激動の再建期にある。そのインテルを率いるCEOのLip-Bu Tan(リップ・ブー・タン)氏が、Donald Trump(ドナルド・トランプ)大統領との戦略的会談を通じて同社を危機から救い、成長軌道に乗せた経緯について語っている。

インテルCEOに就任、トランプ大統領からの圧力

マレーシアで中国人ジャーナリストと教師の間に生まれたタン氏は、核工学者を目指していたが、最終的にビジネススクールに進み、1983年頃にカリフォルニアでベンチャーキャピタルのキャリアをスタートさせた。スタートアップ投資で「黄金の手」を持つ男として知られ、5億ドル以上の個人資産を築いた。

タン氏は、Pat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏の退任後、空白となっていたCEOの座に2025年3月に就任した。その後、トランプ大統領は自身のSNSであるTruth Socialで8月はじめに「インテルのCEOは極めて利益相反の状態にあり、直ちに辞任すべきだ」と投稿した。

NVIDIAやAMD、OpenAI、Amazon、Google(Alphabet)、Palantirなどハイテク企業のトップがトランプ大統領を訪問する中、タン氏は政権との距離を保ち、大統領と面識がなかったという。同氏は政府を優先事項にしておらず、大統領選への寄付は20年以上行っていなかったとのことだ。インテルの政策担当トップ職も数カ月間、空席のままだったが、トランプ大統領の攻撃を受け、同社は慌てて大統領との面談を設定した。

ホワイトハウスに向かう前、タン氏は大統領と関係を築いていた盟友たちに支援を要請した。Microsoft CEOのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏、NVIDIA CEOのJensen Huang(ジェンスン・フアン)氏に自身の支持を依頼したほか、顧問らと戦略を練り、タン氏の生い立ちや米国へのコミットを語ることで、トランプ大統領に自分が米国の愛国者であると納得させる方法を検討したようだ。

タン氏はこれまで中国で約600件の投資を行っており、その中には同国の軍事関連企業も含まれ、この中国との関係が最終的に大統領から攻撃を受ける原因となった。ホワイトハウスにある大統領執務室での会談には、商務長官のHoward Lutnick(ハワード・ラトニック)氏、財務長官のScott Bessent(スコット・ベッセント)氏の2人の閣僚のみが同席。トランプ大統領はタン氏に、どのようにして会社を立て直すつもりかを質問したという。

タン氏は以前の会談でラトニック氏に対し、CHIPS法に基づいて米国がインテルに支払うべき数十億ドルの補助金を無償では受け取りたくないと伝えていた。そこで、トランプ大統領がCHIPS法にもとづく資金を多く提供する代わりに、米国政府がインテルの株式を取得するという案を提示すると、タン氏はこれに合意した。

「インテルを再び偉大に」 - タン氏の誓約

この取引により、インテルは57億ドルの現金を獲得し、米国政府が同社の筆頭株主となることが決まった。会談後の様子を撮影した動画で、タン氏は「稲輝を再び偉大にする」と誓約。ラトニック氏はこの動画をソーシャルメディアに投稿した。

ホワイトハウスでの交渉成功から数週間以内に、タン氏はNVIDIAとの提携を成立させた。「長年の友人」と呼ぶフアン氏から50億ドルを獲得。トランプ大統領は取引をソーシャルメディアで祝福し、インテルの株価チャートを見つめる自身のAI生成画像を投稿した。

チャートは、NVIDIA投資後に米国保有分の価値が50%上昇したことを示していた。同じ週、インテルは孫正義氏率いるソフトバンクからの20億ドルの投資も発表。かつてタン氏が取締役を務めていたソフトバンクからの資金調達も実現した。

インテルの事情に詳しい関係者によれば、チップ製造には一般的なテクノロジービジネス以上のエンジニアリング専門知識が必要だという。約10万人の従業員を抱えるインテルの複雑さは、タン氏がこれまでCEOとして直面したものとは異なるレベルだったと、元インテル社員2人が語っている。

実際、NVIDIAは最近、インテルの先端製造プロセス「18A」を使った自社チップ製造をテストしたが、その後の採用を見送ったと関係者が明かしている。技術に詳しいAdam Kovacevich(アダム・コヴァセヴィチ)氏は、これらの取引はインテルにとって「命綱」となったと指摘する。この取引がなければ、トランプ大統領の圧力に屈してタン氏が辞任を余儀なくされた可能性があるとのこと。

今回の取引は、政権が戦略的と見なす企業に対し、政府がより多くの株式を取得する道を開く可能性があるようだ。一部の投資家は、これは米国産業政策の新時代の到来を告げるものだと語っていたという。タン氏のCEO就任以来、インテル株価は約80%上昇し、同期間のS&P 500やNVIDIAの上昇率を上回っている。12月24日付のReutersがレポートしている。