TSMCが台湾に新たな2nm対応工場を建設する可能性が浮上
TSMCの魏哲家(C.C. Wei)会長が11月20日(米国時間)、米国カリフォルニア州シリコンバレーで開催された、半導体産業の発展に顕著な貢献があった人物に贈られるロバート・N・ノイス賞の授賞式にMark Liu前会長とともに出席。その受賞の挨拶にてWei会長は「AI半導体の顧客からの先端プロセス需要が予想をはるかに上回り、TSMCの既存の生産能力の3倍を超えるなど生産能力が著しく不足している」と語ったと台湾メディアが報じている。
TSMCの最先端量産プロセスである2nmプロセスの対応工場は現在、新竹科学園区(新竹サイエンスパーク)にある新竹宝山工場(Fab20)と、南部科学園区(南部サイエンスパーク)楠梓園区にある高雄工場(Fab22)の2工場で、すでに2025年第4四半期(10~12月)から生産を開始している。
台湾の半導体サプライチェーン関係者によると、Wei会長の発言を裏付けるように先端プロセスの生産能力が逼迫しているとのことで、台南市に新たな2nm対応工場を3基増設する計画を台湾国家科学及技術委員会(国科会:NSTC)などの政府機関に対し伝えたという。総投資額は3棟合計で約9000億NTドル(約4兆5000億円)になるとみられる。
工場の候補地は、台南市政府が進めている南部科学園区の拡張区域である「南科特定区開発区区画収用計画」のA区画になるとみられる。A区画は南部科学園区の拡張区域の西側に位置し、面積は40ヘクタール。用地の取得と環境影響評価(環境アセスメント)を経た後、早ければ来年にも着工できるという。
TSMCは当初、Fab 20に2つ、Fab22に5つの合計7つの2nm対応ファブの建設を計画していた。すでにFab20 P1(第1製造棟)は稼働済みで、P2も2026年には稼働する予定である。Fab 22 P1も稼働済みで、こちらのP2も2026年には稼働予定とされている。P3~5もすでに建設許可が下りており順次建設される予定だが、ここに台南の新工場3棟が加わることとなれば、TSMCの台湾での2nm対応工場は合計10棟となる可能性がでてくる。
また、同社は1.4nm(A14)プロセスの開発にも取り組んでおり、2025年11月5日には台中のFab 25で同社初となる1.4nm対応工場の建設を開始し、2028年後半の量産開始を目指している。新竹宝山で建設中のFab 20のP3とP4もA14対応工場となる見込みである。
米国でも2nm製造の展開を加速
さらに同社は2025年10月の決算説明会にて、米国における生産能力拡大を加速させていることを明らかにした。Wei会長は「2nmプロセスの生産を加速し、より高度な技術をアリゾナ工場(Fab 21)へ展開する準備を進めている」と述べていたが、すでに稼働しているFab 21 P1(5/4nm)、稼動準備中のP2(3nm)に続き、P3では予定より1年前倒しする形で2027年からの2nmおよびA16(1.6nmプロセス)の生産を開始する予定であると台湾メディアの経済日報が伝えている。
Samsungの2nmプロセス歩留まりが60%に到達か?
TSMCのライバルであり、先端プロセス開発でしのぎを削るSamsung Foundryも2nmプロセスの歩留まりが55~60%まで上昇している模様だと韓国の有力紙である朝鮮日報が11月23日付けで伝えている。
同プロセスは、まず自社スマートフォン向けAP(アプリケーションプロセッサ)「Exynos 2600」に適用して量産を開始できるレベルに到達したという。韓国の半導体サプライチェーン関係者によると、自社SoCに次いでプリファードネットワーク、IBM、Tenstrentなどの2nmプロセスにおける製造委託契約のある企業の半導体チップを製造する予定で、中国MicroBTおよびKanaanのマイニング用ASICなども受注していると見られているほか、QualcommのAPも受注する可能性があるともしている。
なお、Samsungは7月にTeslaと165億ドル(約24兆2800億ウォン)規模の2nmプロセスを採用した次世代半導体「AI6チップ」の生産契約を結び、米国テキサス・テイラー工場にて2027年より量産を開始する計画を明らかにしている。今回、2nmプロセスでのある程度の歩留り確保のめどが立ったことから、同工場の稼働率が上がるであろう2027年以降、Samsung Foundryは黒字転換を果たし、TSMCを本格的に追撃する見通しだと韓国の半導体関係者は見ているようである。