300mm GaNベースのHEMTデバイスで650Vを超す耐圧を確認
信越化学工業は11月13日、QROMISのライセンスのもと開発した300mm GaN専用の成長基板であるQST基板を活用した5μm厚のHEMTデバイスが、imecの300mm GaNパワーデバイス開発プログラムにおいて、300mm基板として650Vを超える耐圧が確認されたことを発表した。
また、併せて信越化学とQROMISは、imecとの間でベルギーのルーヴェンにあるimecの最先端300mm CMOSファブ向けに300mm QST基板を供給するためのパートナーシップを確立。すでにimecは2025年10月の時点で300mm GaNパワーデバイス開発プログラムにおいて300mm QST基板を使用してGaNパワーデバイスを開発することを発表しており、今回の650V耐圧品の開発を手始めに、1200V以上の開発も進めていく模様である。
GaNの大口径化の課題をQST技術が解決
今回のimecの取り組みは、初期評価の結果、SEMI規格を満たした300mm QST基板上にAixtronのHyperion MOCVD装置を使用して、5µm厚の高電圧GaN HEMT構造を作製したというもので、最終的には800V以上の破壊電圧を達成したとするほか、高い面内均一性も確認されたとする。この結果について信越化学では、GaNの熱膨張係数に適合したQST基板が、大口径であってもGaNの結晶を成長させる性能を安定して発揮することを表すものであると説明している。
GaN-on-Si技術はシリコンウェハ上にGaN結晶を成長させるため、大口径化が期待されるが、大口径になるほどウェハの反りなどの課題から歩留まりが低下し、実用的な量産が困難であるため、現状の商用ベースでは6インチもしくは8インチが主流となっている。300mm QST基板では、そうした反りやクラックのない厚膜の300mm GaNエピタキシャル成長が可能であり、従来の課題を解決することができると信越化学では説明している。
QST基板はGaNエピタキシャル成長専用の複合基板という存在であり、GaNに熱膨張率係数をマッチングさせた厚み700μm程度のセラミック(アルミナイトライド主体)コアを「CTE matched core」とし、その周辺にEngineered LayersやBOX層など複数の層(厚み2μm程度)をコーティングして、その表面層にGaNの種基板となるSi(111)結晶を貼り合わせたものとなる。熱膨張係数がGaNと一致しているためAlNやGaNで構成されるバッファ層を省略できるため短い成長時間でGaN層の厚みを増すことができるほか、Siとセラミックをベースとしているため大口径化も容易という特徴がある。
なお同社は現在、6インチおよび8インチのQST基板の提供に加え、300mm QST基板についてはサンプル提供を行っており、すでに国内外の複数の顧客にてパワーデバイス、高周波デバイス、LEDデバイスなどの開発での評価が進んでいるとするほか、AIデータセンター向け電源でも実用化に向けた段階にあるとしており、QST基板の活用による今後のGaNデバイスのさらなる社会実装の進展を目指すとしている。

