京都大学(京大)、国立天文台(NAOJ)、兵庫県立大学 西はりま天文台、米国航空宇宙局(NASA) ゴダード宇宙飛行センター(GSFC)、米・コロラド大学 ボルダー校、ソウル大学校の6者は10月28日、ハッブル宇宙望遠鏡や日韓の地上望遠鏡などを活用し、若い太陽型星「りゅう座EK星」で発生した巨大な「恒星フレア」(スーパーフレア)について、紫外線と可視光による初の同時観測に成功したと共同で発表した。

またその結果、まず約10万度の高温ガス(プラズマ)が秒速300km~550kmで高速噴出し、約10分後により低温のガスが秒速70kmで噴き出す様子が、初めて観測されたことも併せて発表された。

  • りゅう座EK星のフレアに伴うガス噴出のイメージ

    りゅう座EK星のフレアに伴うガス噴出のイメージ。青は高温で速い噴出、赤は低温で低速の噴出が描かれている。(c)国立天文台(出所:NAOJ Webサイト)

同成果は、京大 白眉センター/大学院 理学研究科の行方宏介特定助教(GSFC 日本学術振興会海外特別研究員)、京大 花山天文台の柴田一成名誉教授(同志社大学 客員教授兼任)、NAOJ ハワイ観測所岡山分室の前原裕之助教、西はりま天文台の本田敏志准教授、コロラド大 大気宇宙物理学研究所の野津湧太リサーチサイエンティストらの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。

ハッブル宇宙望遠鏡と日韓地上望遠鏡で同時検出

近年、太陽とスペクトルが似た若い星の観測により、観測史上最大級の太陽フレアである1859年の「キャリントン・フレア」を超えるスーパーフレアが高頻度で発生していることがわかってきた。こうした観測結果は、40億年以上前の若い太陽も極めて活動的で、頻繁にスーパーフレアやそれに伴う大規模な「コロナ質量放出」を発生させ、若い地球や火星などに強い放射線を浴びせていた可能性を示唆する。この噴出現象が、初期の惑星大気にどのような影響を与えたのかは、生命誕生や惑星進化を理解する上で重要な鍵となる。

現在、太陽を複数波長で観測することで、複雑な噴出現象の構造が解明されつつある。しかし他の星、特に若い星で同様の現象が起きているのかは未観測で、その物理モデルの構築や惑星環境への影響評価も十分には進んでいない。従来の単一波長観測には限界があるため、より広い温度帯を同時に捉えられる多波長観測が求められていた。そこで研究チームは今回、りゅう座EK星を紫外線と可視光で同時に観測したという。

今回は、ハッブル宇宙望遠鏡が遠紫外線(波長110nm~140nm)の、京大 岡山天文台の3.8m「せいめい望遠鏡」、西はりま天文台の2.0m「なゆた望遠鏡」、韓国・天文研究院 普賢山光学天文台の1.8m「BOAO望遠鏡」が可視光の水素線(Hα線、波長656nm)の、それぞれ分光観測を担当した。具体的には、遠紫外線が約10万度の高温ガスを、Hα線は約1万度の低温ガスを観測可能だ。そして2024年3月29日に発生した大規模な恒星フレアの同時観測に成功し、キャリントン・フレアに匹敵する規模であることが判明した。

  • 観測された恒星フレアの光度曲線

    観測された恒星フレアの光度曲線(出所:京大プレスリリースPDF)

解析の結果、複数の波長で恒星フレアに伴う噴出現象の直接的証拠が捉えられた。まず、遠紫外線では炭素やケイ素などのイオンの輝線が青方偏移(ドップラーシフト)を示し、秒速300km~550kmの高速で噴出する高温ガスが検出された。そして約10分後には、可視光のHα線において秒速70kmの低温ガスが現れた。これは、太陽で知られる「多温度・多速度の噴出現象」に極めてよく対応しており、他の星で初めてその存在が確認された。

  • スペクトル線の青方偏移の検出

    スペクトル線の青方偏移(ドップラーシフト)の検出。(左)ハッブルによって観測された、約10万度のケイ素の線。(右)地上望遠鏡で検出された、約1万度のHα線(水素)。黒線が観測データ、青線はフィッティングによって求められた青方偏移した成分(出所:京大プレスリリースPDF)

可視光だけでは、比較的低温かつ低速の噴出しか観測できず、これまでは噴出現象のエネルギーが過小評価されてきた。しかし今回の観測で、高温かつ高速の噴出も検出され、実際のエネルギー輸送ははるかに巨大なことが判明。このような高エネルギー噴出現象は強い衝撃波を生み、粒子を高エネルギーに加速する。こうした事実から、若い太陽も若い地球などの大気を化学的に変化させたり、一部を剥ぎ取ったりしたことが考えられるという。若い星の巨大噴出現象は発生頻度が高く、それが長期間繰り返されることで、惑星環境に与える累積的な影響は極めて大きい可能性があるとしている。

ただし今回は、複数の温度のガス成分が、噴出現象中でどう結びついているのかという物理的な解釈は未決着だったとのこと。その解明には、まず観測対象を増やし、より多くの若い太陽型星で同様の事例を積み重ねる必要がある。その際には、紫外線や可視光に加え、さらに高温ガスを捉えられるX線や、衝撃波や粒子加速を調べられる電波も組み合わせた、多波長観測が不可欠となるとした。

将来的には、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「LAPYUTA」やNASAの「ESCAPE」など、次世代の紫外線宇宙望遠鏡が地上望遠鏡と連動することで、観測能力が飛躍的に高まる可能性がある。そうした取り組みを通じ、研究チームは若い太陽が初期地球などの大気や生命が誕生した環境に及ぼした影響を、より明確にしたいとしている。