
戦後民主主義の熟成への努力が必要
─ 寺島さんは、未来志向の国づくりをどう進めていけばいいと考えますか。
寺島 未来志向の視点から言えば、少なくとも戦後80年踏み固めてきた民主主義を大切にしようということです。
それはどういうことかというと、例えば、日本の国政選挙の歴史を思い出してください。日本で初めて衆議院議員選挙が行われたのが1890年(明治23年)でした。しかし、この選挙で選挙権が与えられたのは、税金を15円以上収めた25歳以上の男性のみ。実に人口の1・1%に過ぎませんでした。
その後、1925年(大正14年)になって普通選挙法が成立した。それによって、納税額による制限が撤廃され、25歳以上の男子全員に選挙権が与えられるようになった。国民の19・8%が選挙権を持つことになったのです。
─ 戦前は、女性に参政権が与えられていませんでした。
寺島 ええ。男女ともに選挙権が与えられたのは1945年(昭和20年)です。戦後になって20歳以上の男女、人口の48・7%が選挙権を持つようになり、2015年(平成27年)には18歳以上に選挙権が与えられるようになりました。人口の83・7%が投票権を持つ状態になった。これは大変結構なことです。
しかし、皮肉なことに、それがポピュリズムの温床にもなり、民主主義の光と影という問題を生んでいるわけです。
そういう意味で、日本における民主主義の基盤は広がったけれども、残念ながら欧米の歴史のように、国民が血を流して、勝ち取った民主主義ではない。与えられた民主主義のことを「マッカーサー民主主義」とも言いますが、要するに、上から降ってきた民主主義という認識をどう超えていくかが大切です。
─ なるほど。勝ち取った民主主義ではないと。
寺島 民主主義というのは、権利であると同時に責任も背負っていかなければならない。そのことについて、われわれは今一度しっかりと認識すべきだと思いますし、だからこそ熟議の国会でどういう政策課題が議論されるべきなのか、ということをよく見ておかなければならないのです。
そうした意味において、わたしは戦後80年を振り返るにあたり、日本人が獲得してきたものを受け身で考えるのではなく、主体的に考え直す機会にすべきだ、というのが重要なポイントだと思います。
─ これは与野党問わず政治家しかりだし、また、国民しかりですね。
寺島 全くその通りです。そして、戦後80年において、戦後民主主義の熟成への努力とでも言うべきでしょうか、あなたは日本の民主主義をどうやってつくっていきますか? という問いかけをしていく上で、本当にこれからのメディアの責任は大きいと思います。
メディアの責任として、SNS(交流サイト)は勝手なことばかり言って仕方ないと嘆くだけではいけません。もちろん、安易にポピュリズムを追いかけるのではなく、日本という国をどうつくっていくのか。そのことに全力を挙げて、報道していくべきです。