中国は、海外製露光装置への依存度を軽減する取り組みの一環として、国産技術による商業用電子ビーム露光(EBL)装置を開発したことを明らかにした。

中国・浙江大学が開発したこのシステムは、古代中国の書家である王義之にちなんで「義之」と名付けられ、ASMLの高NA EUV露光装置に匹敵する位置精度を実現したとされるが、ASMLのEUV露光装置とは異なり量産には向かず、研究・試作用という位置づけである。中国共産党杭州市委員会・杭州市政府が発表し、中台の複数メディアが報じている。

  • 中国・浙江大学が開発した電子ビーム露光装置

    中国・浙江大学が開発した電子ビーム露光装置(出所:中国共産党杭州市委員会・杭州市政府)

義之は8nmの線幅描画能力と0.6nmの定位精度を実現したとするが、EBを採用しているため描画速度が遅く、1枚のウェハを作成するのに数時間ほどかかるため量産には向かない。また、義之は現在、中国内に数台しか存在しない模様である。

中国へのEUV露光装置出荷規制が中国内のイノベーションを促進

中国におけるEBL開発は2022年、ASMLによる中国へのEUV露光装置の輸出を禁止する米国の輸出管理措置を背景に進められてきたもので、生産準備がまだ整っていないものの実用化に至ったことは、中国が国産半導体技術の開発を推進し、国外の供給網への依存を減らすための重要なマイルストーンと見られている。

これまでの中国の先端プロセス製造のほとんどはArF液浸露光装置とマルチパターニング技術によるところが大きいが、SMICは5nmの壁を超えられず、Huaweiは7nmに留まっている模様である。EBL技術の活用は、そうした中国半導体企業が5nmや3nmでプロトタイプを作れる可能性を秘めたもので、グローバルな競合他社との研究開発のギャップを縮める可能性がある。すでに浙江大学のチームは業界パートナーとの協議を開始し、次世代に向けた共同開発を進める計画を打ち出している。

プロトタイプから量産へのステップには大きな課題があり、中国の半導体産業における先端プロセス装置の開発はまだ初期段階にあるといえ、義之が短期的にグローバルに影響を与える可能性は低い。しかし、この取り組みは、米国の規制下でも半導体の微細化を続けるという中国の意思を示すものであると海外メディアでは分析している。

EUV露光技術の開発を水面下で進めると噂されるHuawei

先端デバイスの自主開発を密かに目指している中Huaweiは、トランプ政権を刺激せぬよう、半導体工場の建設や先端プロセス技術開発に関する取り組みを表に出さないが、密かにEUV露光装置を開発しているとする噂が中国内で広がっている。

ASMLが採用しているレーザー生成プラズマ(LPP)にくらべて、構造がシンプルでエネルギー効率が高いレーザー誘起放電プラズマ(LDP)技術を採用しているとされる。同社は2022年以降、EUV関連技術の特許出願を推進しており、2023年に半導体露光装置メーカーである上海微電子装備(SMEE)もEUV露光装置に関すると特許を出願しており、Huaweiとの協業が噂されている。

2025年4月に開催されたASMLの決算発表会では、中国企業がEUV露光装置の代替品の開発をしているというアナリストの質問に対し同社のクリストフ・フーケ最高経営責任者(CEO)が、中国がEUV露光装置を作るには何年もかかるとの見通しを示しているが、中国では作れないとは言っておらず、Huaweiが進めるEUV露光装置開発に警戒感を持っている様子がうかがえる。