オランダ政府がASMLに対して一度出していた中国への半導体露光装置の輸出許可を、中国が軍事転用する可能性を踏まえ、2024年初頭に取り消した模様だと複数の海外メディアが報じている

これはオランダ政府のジェフリー・ファン・レーウェン貿易相宛てに同国の新興政党である新社会契約(NSC)の議員から出されていたASMLの半導体露光装置に対する対中輸出規制に関する「一度許可した申請を取り消したのかどうか?」という質問に対して、同相が文書で回答したというもの。「2023年9月に中国に対する半導体製造装置輸出に関する許可制が導入されて以来、オランダ製半導体装置の対中輸出を複数件許可したことがある」としつつ、中国が軍事転用する懸念があるために許可を取り消したともしている。

貿易相は、中国が軍事技術開発の自給自足を促進するためにオランダ製の露光装置技術など外国の優れた技術を重視しているとも指摘している。米国政府は、オランダ政府だけではなく、ASMLに対しても直接、中国向けの輸出をやめるようにかねがね要請していたといわれているが、貿易相は、今回の許可取り消しは米国の要請によるものか否かについては明らかにしなかった。

米国がASMLの露光装置の中国への輸出を嫌がっている背景には、SMICがEUVではなく、Ar液浸F露光装置によるマルチパターニングを用いることで7nm、さらには5nmプロセスでの製造を実現し、米国のエンティティリストに掲載されているHuawei向け先端デバイスを現在進行形で製造していることが挙げられる。

なお、ASMLのこれまでの決算資料を見ると、同社の総売り上げに占める中国の売上高比率は、2022年には14%だったが、2023年には29%へと倍増している。また、2023年の四半期ごとの比率は、第1四半期が8%、第2四半期が24%、そして第3四半期には輸出規制強化前の駆け込み需要もあり46%まで急騰。第4四半期も受注残から39%と高い比率を保っている。ASMLは、2024年の中国市場向け売上高について前年比で15%ほどの減少との見方を示していたが、オランダ政府の対中輸出規制が強化される方向にあることから、予想以上に中国向けの売り上げが減少する可能性が出てきた。