米・ペンシルベニア大学、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、北海道大学(北大)の3者は8月13日、潮汐ロックされた系外惑星の内部対流を実験的に調査した結果、半球内の大規模な循環流が形成され、昼側の熱を効率良く夜側に輸送することで、恒久的な昼夜の境界付近で液体の水が存在する領域が拡がる可能性を見出したと共同で発表した。

同成果は、ペンシルベニア大 地球環境科学科の能登大輔ポストドクトラル研究員、JAMSTEC 付加価値情報創生部門 数理科学・先端技術研究開発センターの宮腰剛広主任研究員、北大の寺田智美氏、JAMSTEC 海域地震火山部門 火山・地球内部研究センターの柳澤孝寿主任研究員(北大大学院 工学院 客員准教授兼任)、北大大学院 工学研究院の田坂裕司教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

  • 系外惑星「LHS 3844b」と恒星「LHS 3844」

    地球の1.3倍の質量を持つ系外惑星「LHS 3844b」(左)。恒星「LHS 3844」(右)をわずか11時間で公転する、潮汐ロックされている可能性が高い惑星の1つだ。(c)NASA(出所:ペンシルベニア大Webサイト)

惑星のマントル対流運動を室内実験で検証

系外惑星には、主星の周囲を1周する公転時間が半日にも満たないほど、極めてタイトな軌道を持つものが存在する。このような惑星の多くは、主星の重力で潮汐ロックされていると考えられている。潮汐ロックとは、常に同じ面を主星に向けながら公転している状態を指す。このため、常に昼の面と夜の面が存在することになり、恒星からの距離によっては、昼夜間の温度差が1000度以上に上るという試算もある。

地球のような岩石型惑星内の表層環境を理解するには、内部のマントル対流運動の理解が不可欠だ。地球では、マントル深部と表面の鉛直方向の温度差は約3000度で、これが対流運動の原動力となっている。潮汐ロックした惑星の昼夜間温度差が1000度以上に達する場合、これは地球の鉛直温度差に匹敵する。このような惑星は地球とは大きく様相が異なると予想されるが、太陽系内に存在しないこともあり、充分な理解が進んでいない。そこで研究チームは今回、鉛直方向にも水平方向にも大きな温度差を持つ条件下での対流を、室内実験により調べたという。

今回の実験装置は、惑星半球領域を模擬する直方体の容器で、鉛直と水平の両方向の温度差をそれぞれ独立して維持できるよう設計された。マントル物質を模擬した高い粘性を持つ流体で容器内を満たし、その対流運動が調査された。すると、ほぼすべての鉛直・水平の「レイリー数」(対流の活発さを表す指標)の組み合わせで、マントル上部で昼から夜、マントル深部で夜から昼へと惑星半球を巡る循環流が観察された。

  • 室内実験で再現された系外惑星のマントル対流

    (左)室内実験で再現された系外惑星のマントル対流。マントルは、温度で色が変わる感温液晶粒子を分散させた高粘度液体で模擬された。左半分を昼側、右半分を夜側と想定し、昼夜間の水平温度差と、表面から核-マントル境界までの鉛直温度差が再現された。ほぼすべての温度条件で大規模循環流が形成され、昼側には活発な火山活動、昼夜境界付近では液体の水の存在可能性が示唆された。(右)左図を半球へ投影したもの。(出所:JAMSTEC Webサイト)

なおこの結果は、実験を実施した範囲において高い鉛直レイリー数を持つ場合でも同様だったとのこと。この循環流に伴い、惑星の昼側中心付近にはマントル深部からの強い上昇流が、夜側中心付近にはマントル深部に向かう下降流が、それぞれ安定して形成されることが判明。このような大規模な循環流を伴う対流は、地球のマントル対流とは大きく異なるとする。

この大規模循環流は、惑星が昼側で受けた熱を夜側に効率よく輸送し、その結果として夜側の地熱流量が大きくなることも明らかにされた。潮汐ロックされた惑星では、仮に最初は水が存在しても、真昼側ではすべて蒸発して乾燥し、昼夜の境界から夜側にかけては凍り付いていると推測されてきた。しかし今回の結果から、昼夜の境界領域に適度な地熱流量が継続的に供給されることで、液体の水が存在する領域が拡がる可能性が示唆された。この結果は、過酷な環境の惑星でも、液体の水の存在という観点からは生命の可能性を完全には否定できないことを示しているという。

こうした大規模循環流は太陽系の惑星では見られないが、その特徴から、昼側中心付近に巨大火山が形成され、火山活動がそこに集中する可能性が高い。さらに、火山活動に影響を与える対流の活発さの時間的変動は、定常的・周期的・非定常的という3パターンに分類できることも判明した。このような火山活動の局在化と各活動パターンの特徴、それに伴う地表堆積物や大気成分の変動などは、将来的な観測技術の進展により、直接的または間接的に系外惑星において発見される可能性がある。これらは表層環境に大きく影響する可能性があるものの、その内容は現段階では未知数で、さらなる研究の発展が求められるとする。

水平・鉛直両方向のレイリー数によって対流の活発さや地熱流量が変化するが、今回の研究では、それらの変化の仕方は、両レイリー数を統合した1つのレイリー数によって理解できることが示された。この統合された量は、鉛直方向レイリー数に水平温度差の影響を加味して算出される。研究チームは今回の研究により、この現象を支配する1つの本質的な量を発見できたことで、さまざまなサイズの惑星や、多様な温度差の組み合わせであっても、この量が大体同じであれば対流の様相もほぼ同様になることが判明し、現象の理解を大きく前進させたとしている。