高熱伝導のパッケージ基板材料を開発

住友ベークライト(住ベ)は6月3日、同社の半導体パッケージ向け基板材料「LαZ」の新製品として、半導体チップに生じた熱を効果的に放熱する高熱伝導基板材料を開発したこと、ならびにサンプルの出荷を開始したことを発表した。

出力容量の増加や高周波化が進むパワー半導体では、チップの高集積化や小型化、伝送損失の低減、省電力化などが求められており、その1つの解決手法として、チップを基板に内蔵することで、ビア接続により配線距離を短くすることが検討されている。その一方、内蔵された半導体チップが発熱し、基板やシステムにダメージを与え、エネルギー効率や製品のパフォーマンスを低下させることが懸念されており、チップの発熱を抑制したりや放熱したりする技術の実用化が課題とされている。

基盤内蔵チップの放熱は層間を接続するために使用される導電性ビアを用いたサーマルビア方式が主流だが、基板に高い熱伝導性を持たせることで放熱性を向上させ、サーマルビア数を減少させることで回路設計の自由度の向上を図ることが、部品の小型化などにつながることが期待されている。

プリプレグ材とレジンフィルム材でのサンプル提供を開始

同基板材料は、そうしたニーズに応えることを目的に開発されたもので、プリプレグタイプで1.5W、レジンフィルムタイプで2.1Wの熱伝導率を持ち、レジンフィルムタイプではチップ埋込用のキャビティを樹脂で埋め込むための高流動性も付与しており、こうした工夫により、基板内部の放熱性向上が実現できるようになるとしている。

  • 開発されたプリプレグタイプとレジンフィルムタイプの概要

    開発されたプリプレグタイプとレジンフィルムタイプの概要 (出所:住友ベークライト)

この効果により、チップで発生した熱が効率よく拡散され、チップの発熱低減につながるため、チップの基板への内蔵に伴うパッケージの小型化や、基板からの放熱性向上、より複雑な回路設計の実現につながるといったことが期待できるようになるという。

  • 基板断面のイメージ

    一般的な部品内蔵基板の断面と、今回開発された高放熱基板材料を用いた場合の基板断面のイメージ (出所:住友ベークライト)

なお、現在同社ではプリプレグ材とレジンフィルム材でのサンプル提供を開始したとするほか、2025年度中の量産化を目指すとしている。また、同技術の横展開としてコア材へのラインアップ拡充を見据え、今後も市場や顧客ニーズに対応したパッケージ材料から半導体の高機能化、高生産性化の実現を目指していくともしている。