TSMCが米アリゾナ工場に3棟目の前工程工場の建設を開始
TSMCは4月29日、米国アリゾナ工場の第3製造棟(Fab21 Phase3、通称:P3)の建設を開始したことを、ハワード・ラトニック米商務長官の同社アリゾナ工場訪問に併せる形で発表した。
P3では、2nm(N2)および1.6nm(A16)プロセスを採用する予定で、同工場の大口ユーザーとなることが見込まれるApple、NVIDIA、AMDなどの米国半導体メーカー各社のCEOが祝辞を寄せた。
アリゾナ工場の第1製造棟(P1)については2024年第4四半期より4nmプロセス(N4)の生産を開始。第2製造棟(P2)も製造装置の搬入を終え、計画よりも半年以上前倒す形で間もなく3nmプロセス(N3)の生産を始める予定である。P3についてTSMCは、年内に建設を開始する予定であると最近までは述べていたが、米トランプ政権が米国の半導体業界の活性化を目指して、関税の導入を検討する中、米国での事業拡大を推進することを目指し、計画の前倒しを進めているようである。
1000億ドルを投じて前工程工場を3棟、後工程工場2棟などを建設へ
TSMCは今後、2nm以下の最先端プロセス対応工場を3棟、先端パッケージング(TSMCではAdvanced Packaging、略称:APと呼称)工場を2棟、そしてR&Dセンターも建設するために1000億ドルを投資することをトランプ大統領に約束している。これまでにアリゾナ工場に投資している650億ドルと合わせて、合計で米国に1650億ドルを投資することになり、同社のC.C.Wei会長は「米国史上最大の外国直接投資」だと述べている。
ラトニック商務長官は、アリゾナ工場で、米国のテレビ局CNBCのインタビューに応じて、「TSMCの投資を引き出すためにトランプ政権はTSMCにどれだけ補助金を支払ったと思いますか? まったく支払っていません。ゼロです。関税がそれをもたらしたのです。これで4万人の建設労働者と2万人のフルタイム従業員の雇用がアメリカに創出されるのです。これがトランプ関税モデルの核心です」と語っている。
トランプ大統領も、かねてより高関税をちらつかせるだけで、海外企業は米国に工場を立てざるを得なくなるとして、バイデン政権時代のCHIPS法に基づく補助金支給を税金の無駄とする批判を繰り返し述べてきた。2025年5月時点で米商務省は、TSMCの最初の650億ドルの投資には投資額の約1割に当たる66億ドルの補助金を支給したが、将来の1000億ドルの投資に対する補助金支給は行っていない。