Texas Instruments(TI)は、先進運転支援システム(ADAS)の自律性と安全性を高めることを可能とした車載用LiDAR、クロック、レーダーチップの新しいポートフォリオを発表した。
複数の制御信号を統合したレーザードライバ
統合型高速LiDARレーザードライバ「LMH13000」は、800psの高速立ち上がり/立ち下り時間を実現し、個別のソリューションに比べて最大30%長い距離の測定を可能としたという。また、低電圧差動信号(LVDS)、CMOS、トランジスタ-トランジスタ-ロジック(TTL)の制御信号を統合したことで、大容量コンデンサやFETなどの追加の外部回路を不要とし、システムコストを平均30%削減することも可能とするほか、ソリューションのサイズも4分の1に縮小することが可能だとする。
さらに、LiDAR技術の出力電流が増加すると、温度によるパルス持続時間の変化が大きくなり、生物の目に対する安全基準を満たすことが難しくなるが、同製品は-40℃から+125℃までの周囲温度範囲において、統合効果により2%の変動に抑えて最大5Aの調整可能な電流を出力することが可能。これにより、最大30%の変動が生じる可能性がある従来型のディスクリートソリューションと比べて改善が可能であり、米国食品医薬品局(FDA)のClass 1の目に対する安全基準を満たす設計が可能になるともしている。
1個のデバイスで複数クロック出力が可能なクロックジェネレータ
また、圧電性トランスデューサを使用してGHz単位の周波数と高Q値共振を生成する共振器テクノロジーであるバルク弾性波(BAW)ベースの車載用オシレータ「CDC6C-Q1」およびクロックジェネレータ「LMK3H0102-Q1/LMK3C0105-Q1」は、ADASの信頼性を向上させることを目的に開発された製品群となる。
これらのクロック製品は1個のデバイスで複数クロックの同時出力が可能ながら、ほかのICを搭載した標準的なプラスチックパッケージに直接統合が可能。さらにPCIe Gen6世代に対応可能な最大34.5fsの低ジッタに加え、3ms未満の起動時間、10年にわたる±25ppmの安定性を維持できる信頼性、1ppb/gの振動および衝撃耐性といった特長を有し、従来のクォーツベースのクロックと比べて高い信頼性と低い故障率を実現するという。
これは厳しい条件下でも精密なクロック精度と回復力を実現し、より安全な操作、クリーンなデータ通信、高速なデータ処理を次世代車両サブシステム全体で可能にすることにつながると同社では説明している。
AI処理に対応したレーダーセンサ
そして「AWR2944P」は、同社の低消費電力45nm RFCMOSプロセスで製造されるミリ波レーダー「AWR2944」をベースに開発されたフロントレーダーセンサおよびコーナーレーダーセンサ。
従来製品に対し、信号対雑音比(SNR)の改善、演算性能の向上、メモリ容量の増加、マイクロコントローラ(マイコン)とデジタル信号プロセッサ(DSP)がエッジAIアプリケーション向けの機械学習を実行できるようにする統合レーダーハードウェアアクセラレータの搭載といった機能強化が図られており、検出範囲の拡大、角度精度の向上、より高度な処理アルゴリズムへの対応を果たしたという。ちなみにAWR2944Pの“P”はPerformanceを意味したもので、従来製品に対し、よりパフォーマンスを向上させ、SNRの改善により、検出範囲を15%向上させることを可能としたとする。
なお、これら5製品はすでに量産開始前の数量を同社のWebサイトにて提供を開始済み。このほか、出力電源オプションならびに車載向けLMH13000については2026年に提供を開始する予定だとしている。