TSMCが2025年1月の月間売上高を発表した。それによると、連結ベースの売上高は、前月比5.4%増、前年同月比35.9%増の2932億8800万NTドルとなり、1月の売上高としては過去最高を更新したという。
衰え知らずのAI半導体需要
好調の背景にあるのは、米国における生成AI向け半導体の需要が相変わらず高止まりしているためだとみられる。台湾Digitimesによると、中国DeepSeekの台頭や、米中貿易摩擦、米国によるAI半導体の輸出規制強化といった問題が生じているものの、現時点でNVIDIAがAI GPUの生産発注を削減する動きは見せていないとしている。
TSMCも、自社の先端パッケージ技術である「CoWoS(Chip on Wafer on Substrate)」の今後5年(2025~29年)の増産計画を修正することなく着実に推進している模様だという。TSMCには現在、NVIDIAのほか、Google、Meta、Microsoft、AWS、Broadcom、Marvell、Apple、MediaTekなどといった大口顧客からAI半導体の依頼が増加しているという。
1月の地震の影響で53億NTドルの損失が発生
2025年1月21日、台湾南部でマグニチュード6.4を記録する地震が発生した後、春節休暇中にも大きな余震が数回発生したがTSMCの工場建屋に構造的な損傷はなく、給水、電力、職場の安全システム、および業務は正常に機能したという。ただしこの一連の地震の影響で一定数の加工中のウェハが影響を受け、廃棄せざるを得なかったと同社は明らかにしている。その結果、2025年第1四半期の売上高予測は、ガイダンス範囲の下限である250億ドル~258億ドルに近づくレベルと予想されるとしている。予備的な評価に基づき、同社は関連する地震損失を保険金控除後で約53億NTドルと見積もっているが、同四半期の売上総利益率については57%~59%、営業利益率を46.5%~48.5%と見込んでいるとするほか、生産量の回復に全力を尽くしており、2025年通期の見通しに変更はないとしている。
なお同社は、米国アリゾナ州の工場「Fab21」において、台湾外初の取締役会(董事会)を開催。その終了後に同取締役会における決議事項を発表した。トランプ米大統領が半導体製造の米国回帰を主張し、半導体への追加関税の方針を示していることから、その対応を現地で協議するため、アリゾナ工場で取締役会を開催したものとして今回の取締役会には業界サプライチェーン関係者やメディアから関心が集まっていたが、関税や米国投資拡大についての言及は行われなかった。
主な事項としては、市場の需要予測と技術開発のロードップに基づく長期的な生産能力計画の達成に向けた約171億4140万ドルの資本支出が承認された。その使途としては「先端技術生産能力の導入およびアップグレード」、「先端パッケージング、成熟技術や特殊技術生産能力の導入およびアップグレード」、「ファブ建設およびファブ設備システムの導入」などが挙げられている。このほかの承認事項としては「2024年度の事業報告と財務諸表に記載される決算数値」、「為替ヘッジコストの削減を目的とした子会社TSMC Globalへの最大100億ドル資本注入」、「 2024年度の従業員業績賞与および利益分配賞与の総額約1406億NTドルの分配」、「1株当たり4.5NTドルの現金配当を分配」などが挙げられている。