現在(2025年2月12日時点)、米国のトランプ大統領は中国に一律10%の追加関税を導入し、メキシコとカナダへの関税25%が発動されるかされないかの瀬戸際にある状況となっており、諸外国はトランプ関税への懸念を強めている。

そして、米中の間で先端半導体をめぐる覇権競争がエスカレートする中、トランプ大統領は外国製半導体にも関税を導入する意思を示しているが、仮に実行に移されることになれば、世界の半導体市場に大きな影響を与える可能性がある。

現時点で、どのような国家にどういった比率の半導体関税が導入されるかは明らかになっていないが、トランプ大統領は昨年の選挙戦の最中、台湾が半導体産業を米国から奪ったが、台湾から何も見返りがないなどと発言しており、台湾や韓国、日本やオランダなど半導体そのもの、半導体製造装置で世界をリードする国々が念頭にあると考えられる。では、トランプ大統領の半導体関税の狙いがどこにあるのだろうか?。

トランプ大統領の目標は、米国を再び偉大な国家にすることであるが、そのために中国に対する優位性を確保することに徹する。具体的には、生成AIやスーパーコンピューターなど先端テクノロジー分野において世界をリードし、この分野で中国を可能な限り排除することを目指しており、それに対して躊躇することは全くない。

米国はバイデン政権下の2022年10月、中国が先端半導体を軍事転用する恐れから、先端半導体そのもの、その製造に必要な材料や技術の流出を防止するため対中輸出規制を導入したが、後任のトランプ大統領も基本的にはこの路線を継承する。トランプ大統領も先端半導体分野から中国を排除するため、同盟国に同調を呼び掛けていくことが考えられるが、半導体関税を導入することで、半導体分野で世界をリードする国々に対米投資を促し、最先端半導体に必要な材料や技術を米国に流入させ、米国の半導体産業を復権させたいという狙いがある。

トランプ大統領は、これまで米国は外国の紛争に関与することで、財政的かつ人的な負担や犠牲を負い、安価な外国製品や不法移民を受け入れるなど、諸外国から搾取されてきたという被害意識を持つ。そして、そのような犠牲を被ってきた米国は終焉を迎え、今後は自分たちで自分たちの平和と繁栄を守る時だと考えている。

言うまでもなく、今後の世界における技術覇権を握るためには、いかに半導体分野での優位性を確保するかがポイントになる。現状、その先端を走るのは台湾であるが、仮に台湾有事によって中国が台湾を支配下に置けば、台湾が持つ半導体の先端技術が中国によって支配され、すぐにとは言わないが、最終的に中国国内に流出するのは想像に難くない。しかし、それは半導体分野で中国の対米優位性を向上させることになり、米国としては絶対に避けたいシナリオである。

トランプ大統領は今後、半導体関税をちらつかせ、場合によって本当に発動することで、半導体分野における対米投資、それによる米国産の先端半導体の開発などにつなげたいという狙いがある。半導体関税の裏にはこういった狙いがある。