TSMCが台湾南部の台南市沙崙に1nm(A10)プロセスの製造に対応する半導体工場を建設する模様だと複数の台湾メディア報じている。

それらによるとTSMCは、最先端プロセスによる生産を拡大するために、300mmウェハに対応する6つの製造棟を収容する大規模工場(ギガファブ)を建設する予定であるという。台湾国家科学委員会は、台南サイエンスパークの北に位置する嘉義サイエンスパーク(いわゆる工業団地)と南の高雄と屏東の各サイエンスパークとをつなげた「大南方新矽谷推動方案(Greater South New Silicon Valley Promotion Plan)」の実現を目指しており、TSMCの新工場誘致はその一環だという。

A10対応工場が台南市に建設されるというこれらの報道に対してTSMCは、「工場の建設場所選定には多くの考慮事項がある」と述べたほか、「台湾を最先端技術の主要拠点としており、いかなる可能性も排除しない」と回答したという。台湾の半導体業界関係者によると、TSMCはこの新工場を社内では「Fab 25」と名付けたとのことで、すでに同社は1.4nm(A14)プロセスならびにA10対応工場の建設を台湾サイエンスパーク管理局に申請したとも言われており、それによるとFab 25のPhase1(P1)からP3までがA14向け、P4~P6がA10向けとなる模様である。

TSMCは、2月12日に取締役会を米国アリゾナ州で開催する予定で、その際に、アリゾナ工場の増築(Fab 21 Phase 3)プロジェクトとともに、話題となっているこの台南屏東投資プロジェクトも承認されるのではないかと見る台湾半導体業界関係者もいる。なお、TSMCの取締役会が台湾以外で開催されるのは初めてであり、きわめて異例であるが、アリゾナ工場での4nmプロセスの量産開始と新棟建設の進捗を視察するとともに、トランプ政権の半導体政策への対応を米国側関係者と協議する狙いがあるとみられている。

台湾政府経済開発局は、企業からの工場建設の要望に応える形で沙崙に新しいAIエコシステムサイエンスパークを設立する計画であることをすでにメディアに公表済みで、関連する土地計画が現在進められており、サイエンスパークの管理局は、「新設・拡張サイエンスパーク運営ガイドライン」に基づいて実現可能性評価と意見募集を実施し、一般市民からの意見を慎重に評価した後、引き続き推進していくと述べている。

TSMCのA10工場は当初、台湾北部の桃園市龍潭に建設する計画であったが、地元住民の反対に会って断念。最終的に、現在増設中の台中工場に加えて新設の台南沙崙工場の2か所で1nmクラスの製造を行うことになる見込みである。また沙崙では、将来的には0.7nm(A7)プロセスへの対応の可能性もあるという。沙崙は同社の台南工場(Fab18、3~5nmプロセスを担当)から車で30分ほどの距離にあり、台南工場の支援を受けやすいという立地で、こうした事情もあり、今後、TSMCの製造拠点は、本社のある台湾北部から台湾南部にシフトしていくとみられる。

なお、2nm(N2)プロセスは、台湾の新竹市宝山(Fab20)と高雄市楠梓(Fab22)にて2025年末までに量産が開始される予定のほか、アリゾナ工場(Fab 21)でも将来的に量産対応することを米国商務省と約束しているが、その先の1nm台のプロセスを台湾で製造するのは、最先端技術は台湾に留めるとする同社の決意を示すものだとする向きもある。