OKIは、ロケットや人工衛星に搭載する機器を対象に、熱解析シミュレーション・実機検証・不具合解析を一括受託する「宇宙機器熱特性検証サービス SimuValid(シミュバリ)」を1月29日より開始することを発表した。

さまざまな専門的知見が求められる宇宙機設計に貢献

昨今、宇宙空間を利用したさまざまなビジネスを展開する“ニュースペース”市場の成長が著しい。そうしたビジネスに不可欠な宇宙機器は、温度や気圧が急激に変化する過酷な環境下で稼働し続けることが求められるが、機器に使用される材料の膨張係数はそれぞれ異なるため、地上とは異なる特殊で高度な放熱設計が必要だという。その設計にあたっては、シミュレーション結果・実機によるバリデーション(熱特性検証)結果・不具合発生時の解析結果の3つをすり合わせて学習し、最適条件を導き出すことで設計やプロセスを改善していくとのこと。しかしそれを実現するには、3分野に精通した技術力や、データと経験の蓄積による高い知見、そして高度な分析機器を扱う熟練技術者の緊密な連携が不可欠となる。ただし宇宙産業に従事する企業にはスタートアップも多く、一部を除けばそうした設計・プロセス改善能力を持ち合わせていないことがほとんどだという。

「中期経営計画2025」において“航空宇宙市場”をEMS事業の注力分野に掲げるOKIは、設計・生産に限らず、機器設計段階でのシミュレーションや機器・部品の宇宙環境試験など、グローバルな航空宇宙市場に向けて宇宙品質のものづくり力を活かした技術開発と販売拡大を進めている。

同社は2024年11月、地上から宇宙の真空環境への移行時に急激に変化する環境下での温度分布変化を正確に把握する非定常熱解析による「宇宙機器向け熱解析シミュレーションサービス」を開始。同サービスではシミュレーションのみならず、モジュールやユニットレベルで真空状態におけるバリデーションを行い、その結果をシミュレーション結果とすり合わせることでモデルの精度向上を実現しているという。またこれまでには、宇宙機器に使用される電子部品に対する熱抵抗測定技術において、真空環境での測定サービスで多くの実績を挙げているともする。

そして今回発表された新サービスでは、シミュレーションとバリデーションに加え、検証時に検出された不具合の部品レベルの原因特定および迅速な解決策の提案までを、ワンストップで提供するとのこと。これにより、部品や基板からモジュール、さらにはシステム全体にわたる設計信頼性を向上させ、過酷な宇宙環境下でも熱による故障を未然に防ぐ設計開発を支援するという。

  • PCB上の高温素子の特定イメージ

    PCB上の高温素子の特定イメージ(出所:OKI)

OKIが誇る各分野のプロが連携した専門チームを結成

新サービスの開始に向けてOKIでは、機構設計・実装設計・エレキハードウェア設計の専門家と、半導体評価・特殊環境試験・最新のPCB(プリント基盤)放熱技術「凸型銅コイン埋め込みプリント配線板技術」の専門家による連携を強化し、トータルサービスを提供する専門チームを結成したとする。このチーム結成により、宇宙産業をはじめとするさまざまな顧客に提供してきたデザインサービスや試験サービス、およびPCBの実績とノウハウを活かし、正確なシミュレーションと実機測定試験、不具合解析に加え、効率的な放熱ルートを確保した装置内機器レイアウト・PCBレイアウトの設計、さらにはPCB上の部品配置まで提案可能とのこと。特に、さまざまな材料および形状の熱特性に関する知見を有することから、効果的な放熱設計に貢献するとした。

なおOKIは、新サービスの提供により、放熱設計の精度向上・開発期間の短縮・故障の未然防止に貢献していくとする。またサービス価格は個別見積もりで、2026年度には1億円の売り上げ達成を目指すとしている。