1月22日から24日まで東京ビッグサイトで開催されている「第39回 ネプコン ジャパン -エレクトロニクス 開発・実装展-」にて、三菱電機は、最新のパワー半導体デバイスの数々を展示。電気自動車(EV)や電力インフラをはじめとするさまざまな市場に、炭化ケイ素(SiC)をはじめとする新たな選択肢を提案している。
SiC新製品を中心にGX貢献技術を展示
三菱電機はパワーデバイス事業を通じて、幅広い分野でのグリーントランスフォーメーション(GX)実現を目指している。同社は2024年9月、12インチのSi(シリコン)ウェハを用いたパワー半導体チップの提供開始を発表しており、ウェハ大口径化による生産効率化を推進。また一方で、次世代パワーデバイスの主力材料として期待されるSiCについても事業強化を進めており、2023年10月には米・コヒーレントから分社化したSiC事業会社へと出資を行った。また熊本県の拠点にSiC 8インチ製品の生産に対応した新棟を建設し、2025年9月の竣工に向けて準備を進めているとのこと。さらに、ディスクリート製品の販路拡大に向けて高いシェアを有する蘭・Nexperiaとパートナーシップを締結するなど、パワーデバイス事業の成長に向けて積極的な動きを見せている。
そして今回のブースでは、EVなどのモビリティ領域、エネルギー分野や電鉄および産業分野などのインフラ領域、そして家電など民生品に用いられるライフ領域に分けて、現在開発中のものも含むさまざまな製品を展示中だ。
EVの将来的な普及を見据えた製品群を展開
モビリティ領域で注目を集める製品が、2024年11月よりサンプル提供が開始された、EV駆動系のインバータに使用されるxEV用SiC-MOSFETだ。同製品は、従来品であるプレーナー型SiC-MOSFETに比べ電力損失を約50%低減するなど、インバータの性能向上に大きく貢献するもの。ラインナップとして、現在EV市場で広く求められる750V対応のチップに加え、将来的な大電圧化を見据え1800V耐圧のものも提供しているとのことだ。
またリレーモジュールとしては、コンパクトながら高出力に対応する「J3リレーモジュール」も展開。双方向・片方向スイッチのモジュールをそれぞれ開発している上、J3シリーズと同一樹脂外形であるため、設計面でもメリットを提供できるとした。
第8世代IGBT搭載パワーモジュールも展示
一方で産業用途向けに展示されたのが、三菱電機にとって第8世代となるIGBTを搭載した「LV100」製品だ。従来品に比べて高速でのスイッチングを可能にする第8世代のIGBTを搭載することで、インバータの高出力化および高効率化に貢献するとしており、前世代品に比べて電力損失を約15%削減するとも発表している。
また電鉄・電力用としてはSBD内蔵SiC-MOSFETを搭載したパワー半導体モジュールの「Unifull series」も紹介された。この製品は、SBDを内蔵することで電流密度を向上させ、バイポーラ劣化のリスクを低減するとともにサイズを低減。さらにスイッチング特性も低減されるという。なおブース担当者は、電鉄用途向けの半導体製品としては未だにSiが主流であるものの、将来的な市場の転換を見据えSiCを用いた製品の充実を進めていくとした。
中長期的な市場成長を見据えSiCを中心に事業強化へ
なお、三菱電機 半導体・デバイス事業本部 半導体・デバイス第一事業部長の楠慎一氏は、報道陣向けの説明の中で、同社パワーデバイス事業における売り上げ構成について産業用途向けが40%ほどと最も多くの割合を占めており、車載向け・民生品向けがそれぞれ25%となっていると話す。そして今後は市場の変化によるものの、EV普及などが進み3領域がそれぞれ同じ割合を占めるようになるのではないかと予測した。
また同様に、SiC製品が占める領域も伸ばしていきたいとしており、米国の政権交代などの影響は想定されるものの、中長期的には市場拡大が進むと考えているとのこと。そのため基本的には現在の方針を踏襲しつつ、市況を見ながら適切にアジャストしていく必要があると語った。