村田製作所は11月14日、-40〜+125℃の使用温度範囲で周波数偏差±40ppmの高精度を実現した自動車向け水晶振動子「HCR/XRCGE_M_Fシリーズ」を開発、量産も開始したことを発表した。

自動車の電装化・高機能化により、TPMS(Tire Pressure Monitoring System)やRKE(Remote Keyless Entry)、wBMS(Wireless Battery Management System)などのシステムでBluetooth Low Energy(BLE)やZigBeeといった通信規格を利用した機器が多く搭載されるようになり、そうした各機器から発される複数の無線通信が交錯する状況になりつつある。そうした環境下では、各通信規格が使用する電気信号の周波数を正しく受信し、IC間の通信エラーを避けるために、搭載機器のIC間で信号送信タイミングを正確に同期させる必要があり、安定したクロック信号を発生させる高精度なタイミングデバイスの提供が求められるようになっている。

一方で、タイミングデバイスとして使用される水晶発振子は周波数精度の個体差があること、ならびに実装後に車載機器が使用される温度になると水晶発振子の周波数が変化してしまうといった問題から、通信規格で求められる周波数精度を逸脱するという課題があり、車載機器の生産工程で、求められる周波数精度内に収めるために、無線制御ICに補正係数を書き込むキャリブレーション工程が必要となっていたという。

こうしたキャリブレーション工程にかかる時間とコストが自動車製造における課題となっているほか、近年の車載機器の小型化による搭載部品の高密度実装と高性能ICの採用による基板回路の温度上昇も課題になってきており、こうした課題の解決につながる高精度かつ高温にも対応した電子部品が求められるようになっているという。

同シリーズは、そうした課題解決に向けて独自の水晶原石と振動子の設計最適化を行うことで、-40〜+125℃という広い使用温度範囲で周波数偏差±40ppmの精度を実現したもので、これにより車載機器の生産過程で必要だったキャリブレーションをすることなく車載機器の安定した動作を可能とするという。また、独自の樹脂封止のパッケージ構造の採用により、複数のサプライヤからの部材調達による安定生産が可能となったほか、有機系異物に加え、無機系異物のスクリーニングが可能であるため、高品質個体のみ出荷することも可能だとする。

なお、同シリーズの対応周波数は現在、32MHz~48MHz(BLE対応製品)としているが、今後、順次対応する周波数を拡張していく予定としている。

  • HCR/XRCGE_M_Fシリーズ

    HCR/XRCGE_M_Fシリーズのパッケージ外観 (提供:村田製作所)