TSMCの2024年10月売上高は過去最高を更新

TSMCが11月8日、2024年10月の売上高(速報値)を発表した。それによると、生成AI向け先端半導体が好調が継続し、前年同月比29%増、前月比25%増の3142億NTドルとなり、単月売上高として過去最高を更新したという。

  • TSMCの2024年10月単月売上高と2024年1~10月の累積売上高

    TSMCの2024年10月単月売上高と2024年1~10月の累積売上高 (出所:TSMC)

TSMCの単月売上高は1月に前年同月比プラスに転じて以降、たびたび過去最高を更新し続けており、2024年1~10月の累計売上高は前年同期比31.5%増の2兆3400億NTドルとなっている。同社は10月に2024年通年の売上高成長率を従来のの「20%台半ばをわずかに上回る程度」から「30%近傍」に引き上げたが、30%を超える可能性も出てきた。

台湾半導体産業協会(TSIA)は10月、2024年の台湾半導体生産高について前年比22%増の、過去最高の5兆3000億NTドル(約25兆円)になるとする予測を発表している。TSMCの売上高成長率は、この台湾半導体業界平均よりも高くなる見込みである。

CHIPS法の補助金獲得で米商務省と合意、中国向け輸出を停止

最終審査段階にあったTSMCへの米CHIPS法に基づく補助金提供だが、このたび米商務省と最終合意に至ったと米国メディアが報じている

2025年に米国大統領に再就任する予定のドナルド・トランプ氏は、減税政策の一環としてCHIPS法による税金バラマキに反対のスタンスを取っているため、バイデン大統領は任期中に正式契約までこぎ着けるものとみられるが、正式な補助金支給時期はまだ明確にはなっていない。

一方でTSMCは、米商務省の命令に従い、中国のAI半導体顧客の製造受託を中止した模様である。中国メディアによると、複数の情報源から得た情報として、TSMCが米商務省にライセンス申請し、許可されれば出荷再開の可能性があるとする含みを持たせつつ、中国のAI半導体を手掛けるすべてのファブレス顧客に公式に2024年11月11日より中国のすべての7nm以下のAI/GPUの供給を停止すると通達したという。

SMICの第3四半期売上高は前年同期比34%増で過去最高を記録

一方、中国最大のファウンドリであるSMICの2024年第3四半期売上高は、前年同期比34%増の21億7119万ドル、純利益も同58%増の1億4880万ドルとなり、四半期別で過去最高を更新した。

  • SMICの2024年第3四半期の決算

    SMICの2024年第3四半期の決算 (出所:SMIC)

地域別にみると、中国内向けが全体の86%を占めている。また、米国向けは11%としている。

ウェハ口径別でみると、8インチが21.5%、12インチが78.5%となっており、12インチの比率が四半期ごとに徐々に増加してきている。

用途別では、コンシューマエレクトロニクス向けが全体の43%、スマートフォン(スマホ)向けが25%、パソコン/タブレット向けが16%、自動車が8%だった。コンシューマ向けは、2023年第3四半期には29%だったことから、中国市場向けに急増している模様である。

半導体の生産能力は前四半期比6%増で、工場の稼働率は90%(前年同期は77%)。投資額は11億ドルで、前四半期の22億ドルの半分にとどまった。

SMICの趙海軍・共同最高経営責任者(CEO)は、2024年12月期の通期売上高が前年比約3割増の約80億ドルになりそうだと述べており、過去最高を記録した2022年12月期(72億ドル)を上回る可能性を示した。ただし、同社は中国半導体業界のレガシーチップ生産能力過剰が2025年まで続くと警告しており、生産能力の増強に慎重な姿勢を示している。

SMICに対しては、米下院外交委員会のマイケル・マッコール委員長(共和党)が、SMICが中国の半導体製造産業と軍産複合体を強化しようとしているがバイデン政権はそれを阻止する十分な措置を講じていないと非難したうえで、米商務省に対しSMICの施設を訪れ、Huawei向け半導体を違法に生産していないか確認するよう11月4日付けの書簡で求めたと米ロイターが伝えている

同氏は商務省産業安全保障局(BIS)がHuaweiによる米輸出規制からの回避に対してしかるべき行動も起こしてないことに党を超えて不満が高まっているとしており、中国がAIで米国を追い越そうとしているのを取り締まるべきと主張しているという。商務省は書簡を受け取ったことを認め、近く返信するという。トランプ氏の大統領就任を前に、共和党の対中半導体制裁強化の声が高まっているようである。