日本ケミコンは11月1日、高効率なサーバ冷却手法として注目されている「液浸冷却(Liquid Immersion Cooling)」に対応したアルミ電解コンデンサを開発、サンプル対応を開始したことを発表した。
AI処理用のGPUを搭載するAIサーバは、従来の汎用的なサーバユニットと比べて多くの電力を消費することもあり、サーバユニット個々の発熱も増大。その結果、データセンターにおける冷却用空調電力需要も増大しており、データセンターそのものの消費電力の増加にもつながっている。そのため、持続可能な社会の実現に向けた脱炭素の世界的な取り組みとして、データセンターのエネルギー消費量の抑制が求められている。
クラウドデータセンターのサーバラックの消費電力は最大でも10kW程度であることから空冷方式による冷却が主流であるが、AIサーバなどを用いるHPC向けサーバラックでは20kW以上、場合によっては100kWを超えるものもあり、冷却方式としてはコールドプレートもしくは液浸による冷却が必須になるものの、コールドプレートではPUE(Power Usage Effective)の改善に限界があり、最終的にはより理想的な液浸冷却へ移行していくものとみられている。
しかし、液浸冷却では、一般的なアルミ電解コンデンサの場合、封口ゴムの劣化が促進され、気密不良によって短寿命化することが確認されている一方で、さまざまな基板上で活用されることから、液浸対応が求められていた。
そうしたニーズに対して同社は封口ゴムを自社開発しているという強みを活かすことで、液浸冷却に対する気密耐性評価を実施、新規封口ゴムを開発したという。また、大手冷媒メーカーにも協力してもらう形で評価を継続しているとするほか、すでにデータセンター関連の一部のユーザーにも液浸冷却での評価をしてもらっているとのことで、同様に冷却が大きな課題となっている車載市場や産業機器市場に対しても、要求に応じてサンプルの提供を行う用意があるとしている。
なお、液浸冷却に対応するアルミ電解コンデンサとしては、チップ形の「MHUシリーズ」と基板自立形の「KHUシリーズ」の2種類を用意。いずれもすでにサンプル対応済みで、2025年度からの量産を予定しているという。