NTT東日本、NTT DXパートナーを中心に、さまざまな企業が共同で睡眠改善に向けた新規事業創出やサービス開発、イベントを企画する仮想コミュニティ 「ZAKONE」(ザコネ)は8月22日、9月3日に活動開始から2周年を迎えるにあたり、この1年の活動状況、参画企業による主な共創プロジェクト、今後の展開などを説明した。

なお、1年目の活動報告レポートはこちら

  • ZAKONEの活動報告の様子(出典:ZAKONE)

    ZAKONEの活動報告の様子(出典:ZAKONE)

ZAKONEでは、睡眠課題の解消と睡眠市場の拡大に向け、既存サービスの提供事業者にとどまらず、異業種異分野事業者の睡眠市場参入によるサービスの多様化に向け、新たに睡眠市場に参入したい企業や既に睡眠市場で活動している企業の共創による睡眠市場発展を目的に活動している。

参画企業が152社に拡大

ZAKONEの参画企業は、1年前の68社から152社に、企業マッチング数は18件から83件に、プロジェクト数は4件から17件に拡大。NTT東日本 スリープテック事業 マーケティングPR担当/ZAKONE コミュニティ運営担当 佐々木翠氏は、拡大の要因は2つあると述べた。

  • NTT東日本 スリープテック事業 マーケティングPR担当/ZAKONE コミュニティ運営担当 佐々木翠氏

  • ZAKONE参画企業の推移(出典:ZAKONE)

    ZAKONE参画企業の推移(出典:ZAKONE)

1つの要因はいろいろなイベントやメディアを見て知ってもらうきっかけが増えてきたこと。もう1つの要因は、参加企業が加入する際に、一緒に取り組んでいる企業にZAKONEを紹介してもらうことが多いためだという。

参画企業は、睡眠中効果を発揮する寝具はもちろん、寝室の環境、空調や香り、音楽、照明、疲労神経を整える関連のヨガや瞑想、入浴、ホルモンを整えるためのサプリメント、ストレス緩和の乳酸菌やギャバなど、さまざまな要素が絡み、かなりバラエティに富んでいるという。

  • ZAKONE参画企業のカテゴリー(出典:ZAKONE)

    ZAKONE参画企業のカテゴリー(出典:ZAKONE)

現在の睡眠市場は約1.2兆円だが、ZAKONEは潜在市場として3~5兆円の規模があると見込んでいる。

「市場が広がっていく要素は異業種の参入だと感じている。音楽、市場が伸びているサウナなど、コラボレーションで睡眠関連の取り組みをしているような施設や製品サービスが増えていくところが市場拡大の要因だと思っている」(佐々木氏)

  • 現在の睡眠市場は約1.2兆円だが、ZAKONEでは潜在市場として3~5兆円の規模があると見込んでいる(出典:ZAKONE)

    現在の睡眠市場は約1.2兆円だが、ZAKONEでは潜在市場として3~5兆円の規模があると見込んでいる(出典:ZAKONE)

市場拡大に向けて同コミュニティでは、睡眠に関する企業同士を集めて繋げるためのイベントの開催、日本睡眠協会、経産省、林野庁、厚労省など、睡眠に関係するさまざまな団体とのコラボやビジネスマッチング、オウンドメディア「note」を介した新しい睡眠の体験に向けた啓蒙活動を行っていくという。

主な共創プロジェクト

また、ZAKONEは共創プロジェクト誘発のためのイベントやプログラムの開催も積極的に行っている。主な事例としては、「Chill体験:超没入寝落チルハウスプロジェクト」、「寝不足のパパママ向けの休息スペースYASMOプロジェクト」、「快眠のための家PJ」がある。

Chill体験:超没入寝落チルハウスプロジェクト

「Chill体験:超没入寝落チルハウスプロジェクト」は、銭湯で日本コカ・コーラのリラクゼーションドリンク「CHILL OUT(チルアウト)」を風呂あがりに飲んで、寝落ちを体験するというもの。

気持ちが良い眠りたくなる新感覚の空間ということで、新たなPR効果が生まれたプロジェクトになったという。

  • 「Chill体験:超没入寝落ちチルハウスプロジェクト」(出典:ZAKONE)

    「Chill体験:超没入寝落ちチルハウスプロジェクト」(出典:ZAKONE)

寝不足のパパママ向けの休息スペースYASMOプロジェクト

「寝不足のパパママ向けの休息スペースYASMOプロジェクト」は、子どもと一緒にママ・パパ用休息室併設の一時預かり保育施設「YASMO」に来て、子どもを預けている間に、父親や母親は休息するという企画。

休息室の睡眠環境に関する監修をブレインスリープが行い、MindWellsがマインドフルネスのための楽曲を提供するという共同プロジェクトで、参加者の98%が満足したという。

  • 「寝不足のパパママ向けの休息スペースYASMOプロジェクト」(出典:ZAKONE)

    「寝不足のパパママ向けの休息スペースYASMOプロジェクト」(出典:ZAKONE)

快眠のための家PJ

「快眠のための家PJ」は、長谷工コーポレーション(以下、長谷工)、NTT東日本、ブレインスリープの共同プロジェクト。長谷工のCO2排出量実質ゼロを目指す賃貸マンション「サステナブランシェ本行徳」において、快眠のための仕様を施した部屋とノーマルの部屋で、睡眠の質にどれくらい差があるのかを検証した。

  • 「サステナブランシェ本行徳」(出典:長谷工コーポレーション)

    「サステナブランシェ本行徳」(出典:長谷工コーポレーション)

快眠のための仕様として、木の香りを感じることによるリラックス効果がある木質化(45%)、サーカディアンリズム照明、全館空調、IoT連携(ブレインスリープコイン、快眠アプリ、IoTスマート機器、調光照明、電動カーテン)、色や香りによるリラックス効果を採用した。

  • 快眠のための仕様(出典:長谷工コーポレーション)

    快眠のための仕様(出典:長谷工コーポレーション)

実証実験では、20代から40代の長谷工のグループ社員など8名が、快眠のための仕様が異なる4つのタイプの部屋を1週間ずつ体験し、睡眠の第一周期における深い睡眠であるノンレム睡眠ステージ(S3)の時間がどれくらい長かったのか、また、深い睡眠時に出現する特徴を持つ脳波(デルタ波)の出現量による「熟睡度」がどれくらい高かったのかを測定した。

  • 快眠のための仕様が異なる4つのタイプの部屋を1週間ずつ体験して検証(出典:長谷工コーポレーション)

    快眠のための仕様が異なる4つのタイプの部屋を1週間ずつ体験して検証(出典:長谷工コーポレーション)

長谷工は、その検証結果を昨日発表。「快眠のための家」が一般住戸と比較して、黄金の90分と呼ばれる睡眠の第一周期において、最も深い睡眠のステージ(S3)の割合が高いことや熟睡度を表すデルタ波の量が多いことから、睡眠の質が向上したとの結論を得たという。

  • 快眠のための仕様により睡眠の質が向上(出典:長谷工コーポレーション)

    快眠のための仕様により睡眠の質が向上(出典:長谷工コーポレーション)

今後のZAKONEのミッション

最後に佐々木氏は、今後のZAKONEのミッションとして、企業や自治体を介在して、正しい睡眠知識の啓発や睡眠改善のサポートに取り組むと語った。その背景には、2024年の健康経営優良法人2,466社のうち、睡眠の課題に取り組む企業が344社(約14%)にとどまっており、社員の睡眠改善には取り組んでいきたいが「何から始めていいのか分からない」「具体的にどうすればいいのか分からない」という課題を抱える企業が多い点があるという。

そのため、ZAKONEは啓発、情報発信、実施サポートの3つの領域で新たな無償サポートを行っていく。

啓発としは、月に1回、従業員や住民向けの無料Webセミナーなどを開催。ZAKONEに加盟している健康経営企業・自治体の従業員・職員に対して、睡眠改善セミナーをオンラインもしくはオフラインで無償で定期開催する。

また、ZAKONEに参画している自治体と連携し、スリーププランナーによる地域企業や住民向け睡眠改善セミナーを自治体単位で無償で実施。自治体とZAKONEが連携し、より多くの地域企業や住民に対して正しい睡眠知識の習得および睡眠改善サポートを行うことで、地域での暮らしやすさ、働きやすさを向上させ、地域の活性化・魅力アップにつなげることを目指す。

  • 無料Webセミナーを定期開催(出典:ZAKONE)

    無料Webセミナーを定期開催(出典:ZAKONE)

情報発信としては、睡眠×健康に関する情報発信を各担当者向けに行う。具体的には、ZAKONEに加盟している健康経営企業・自治体の施策検討組織や担当者に対して、参考になる他社・他自治体の事例などを定期的に情報発信。これを通じて、各社・各自治体が、より具体的な従業員の睡眠改善イメージを持つサポートを行う。

  • 睡眠×健康に関する情報を定期発信(出典:ZAKONE)

    睡眠×健康に関する情報を定期発信(出典:ZAKONE)

そして実施サポートとしては、有識学者による企業や自治体の担当者からの相談窓口を開設。ZAKONEに健康経営企業・自治体枠を新設し、新たに健康経営で睡眠改善に取り組む企業・自治体に対し、多角的なサポートを実施する。2024年度中に50の企業あるいは自治体への提供を目標としている。

  • 有識学者による相談窓口を開設(出典:ZAKONE)

    有識学者による相談窓口を開設(出典:ZAKONE)

佐々木氏は「啓発、情報発信、実施サポートを行っていくことで、新しいスリープテック経済圏を確立したいと思っている」と語った。