TSMCは、Robert Bosch、Infineon Technologies、NXP Semiconductorsとの合弁会社であるESMCが独ドレスデンに建設する半導体工場の起工式を8月20日(欧州時間)に開催したことを発表した。

同イベントには、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長や独オラフ・ショルツ首相をはじめとする政府関係者のほか、顧客、サプライヤ、ビジネスパートナー、学界関係者などが参加した模様である。TSMCによると、実際に建設工事が始まるのは今秋の予定だという。

  • ESMCドレスデン工場の起工式の様子

    ESMCドレスデン工場の起工式の様子 (出所:TSMCのLinkedIn)

独政府による50億ユーロの助成金をEUが承認

起工式において、フォン・デア・ライエンEU委員長は、EU国家援助規則に基づき、ESMCの半導体工場建設と運営の支援に向けた50億ユーロの独法案を承認したと発表。ショルツ首相は「欧州とドイツで半導体の生産能力を拡大することは重要である。半導体の供給をほかの地域に依存してはならない」と述べ、経済安全保障上、欧州での半導体の生産が欠かせないという認識を強調した。

また、TSMCのC.C.ウェイ会長兼CEOは、「パートナーであるBosch、Infineon、NXPとともに、急速に成長する欧州の自動車・産業セクターの半導体ニーズを満たすために、ドレスデンの施設を建設する。この最先端の製造施設により、TSMCの高度な製造能力を欧州の顧客やパートナーの手の届くところに提供し、地域の経済発展を刺激し、欧州全体の技術進歩を促進する」と述べたという。

月間生産能力は4万枚規模で28〜12nmプロセスに対応

300mmウェハ対応のESMCはフル稼働時すると、TSMCの28/22nmプレーナーCMOSおよび16/12nm FinFETプロセス採用デバイスを月間4万枚生産する能力を持つことが予定されており、FinFETプロセスの欧州での提供は、同地での半導体製造エコシステムの強化につながるとされる。

投資については自己資本に加え、欧州連合(EU)と独政府からの支援や借入もあり、総額は100億ユーロを超えると予想されており、稼働後は約2000人の直接的なハイテク専門職の雇用が創出されることが期待されているほか、プロジェクト全体を通してEUのサプライチェーン全体で多数の間接雇用の創出が刺激され、地域経済の強化につながることも期待されている。また、TSMCの持続可能性と環境保護の基準にのっとり、既存の技術と最先端の技術の両方を活用して保全を最適化するグリーンファブの建設に専念するという。これには、エネルギー効率の高い建設、水の再利用、LEED認証の取得が含まれている。

新たな半導体イノベーションの礎となるESMC

TSMCはESMCについて、「ESMCの設立は、半導体業界におけるイノベーションの礎であるTSMCのグランドアライアンスの強みを実証するものである。この提携により、TSMCのパートナーが新たなレベルの協力関係を築くという画期的な進歩がもたらされた。ESMCへの投資は、この戦略的パートナーシップへの深いコミットメントを意味するだけでなく、TSMCが欧州全体でイノベーションを育成するという揺るぎない献身を強調するものでもある」と述べている。