シャープは2024年度第1四半期の決算説明会にて、アセットライト化の一環として、半導体事業ならびにカメラモジュール事業を、親会社である鴻海精密工業に売却する方向で協議を進めていることを明らかにした。2024年度中の譲渡完了を目指すとしている。
シャープは2019年、福山工場を含む半導体事業部門を分社化し、「他社と組むチャンスを増やしていく。鴻海も選択肢の1つ」(当時の載正呉会長兼社長)としていたが、これまでに鴻海を含め売却に至らず、三菱電機がパワー半導体の増産を目的にかつて日本有数の半導体工場と言われた福山工場の一部の建屋(シャープ内部では第2工場/第3工場と呼ばれる施設)を購入するにとどまった。今回も「鴻海と売却交渉を始めたばかりの段階」(決算会見における沖津雅浩社長の発言)としており、売却が決定したわけではない。
一方のカメラモジュールについては「鴻海グループに納入しており、相乗効果によるメリットがある」としている。かつてシャープはソニーのイメージセンサのカメラモジュール化を担当し、相応の利益を出していた模様だが、手振れ防止や望遠などカメラの高性能化ニーズに伴い、受託先が海外のモジュールメーカーに移った模様である。
ディスプレイ事業は8四半期赤字を計上
また、同四半期のディスプレイデバイス事業の業績は、売上高が前年同期比27%減の1252億円、営業損失も171億円の損失となり8四半期連続の赤字を計上した。
すでに生産撤退を決めた大型ディスプレイ事業については、7月20日に堺工場でのガラス基板の投入を終えて、8月末にパネル生産を停止する予定。中小有機EL(OLED)製造ラインも製造を停止し閉鎖作業を完了したという。これまでに同工場にて500人の早期退職募集を行ってきたが、すでに退職者は決定済みで、残った300人は、ほかの事業所への配置転換になるという。残された堺工場は、AIデータセンタへの転用に向け、ソフトバンクに土地と建屋の一部を譲渡するほか、KDDIを含む数社とも残りの部分の譲渡に関して協議中だという。
三重第1工場はアオイ電子の後工程工場に転用
中小型液晶パネルを生産していた三重第1工場については、アオイ電子が借用する形で半導体先端パッケージングラインに転用することが予定されている。アオイ電子による工場の買収は今後の交渉次第だという。
このほか、亀山第2工場および三重第3工場は、生産能力を縮小して、空きスペース(クリーンルーム)を他社に貸与するか工場全体を売却する方向で数社と交渉を進めているという。
なお、シャープは今後、エアコンや冷蔵庫などの白物家電やオフィス機器などのブランド事業に注力することで黒字化を目指すとしている。