TrendForceによると、2023年のSiCパワーデバイス市場は堅調な成長を果たしたが、上位5社の売り上だけで市場全体の91.9%を占めたという。
同年のシェアトップに立ったのはSTMicroelectronicsで32.6%、2位には前年の4位からonsemiがジャンプアップ。3位はInfineon Technologies、4位にWolfspeed、5位ロームという順になっているという。
STMicroelectronicsは車載向けSiC MOSFETサプライヤとして存在感を示しており、現在、イタリアのカターニアにフルプロセスSiC工場を建設中で、2026年までに稼働させる予定。また、中国では三安光電と合弁で8インチSiC製品の製造工場を2024年末までに稼働させる計画である。
2位のonsemiも車載向けElite SiCシリーズを中心に事業の拡大を図っている。韓国富川のSiCウェハ工場拡張工事は2023年に完了し、2025年には8インチでの生産に移行する予定としている。また、SiCの結晶技術を有するGT Advanced Technologies(GTAT)を買収して以降、SiC基板材料の自給率は50%を超えており、売上総利益率50%の達成に向けて内製の強化を推進している。
3位のInfineonは、SiC事業の売り上げのほぼ半分を産業分野が占めている。しかし、主要顧客であるSolarEdgeが困難に直面するなどの影響がでている。一方、自動車向けとしては、最近、Xiaomi SU7に製品を供給するなど、堅調な成長を果たしている。
4位のWolfspeedは、この2年ほどの間、市場機会を逃すことが多かったが、それでも依然として車載グレードのSiC MOSFET向けSiC基板の世界最大級のサプライヤであり、いち早く着手した8インチ化による先行者利益も得ている。現在、同社の「John Palmour Manufacturing Center for Silicon Carbide」(JP)工場で生産が開始される段階に至り、2022年に開設したMohawk Valley Fab(MVF)工場と合わせて、この2つの拠点を運用次第で今後の状況が変化する可能性があるとTrendForceでは指摘している。
5位のロームは2023年にソーラーフロンティアの旧国富工場を取得し、同社4番目のSiC工場として2024年末までに8インチを用いたSiCパワー半導体の製造を開始する計画。同社はヴィテスコ・テクノロジーズやマツダ、吉利などの自動車会社やティア1サプライヤと長期的なパートナーシップを確立しており、次世代パワーモジュールの開発を加速して市場シェアを拡大させようとしている。
なお、TrendForceでは、2024年のSiCパワーデバイス市場について、AIサーバなどの分野からの需要が増加すると予想している一方で、電気自動車の販売に陰りが見えていること、産業分野からの需要が弱含みを見せていることなどがマイナス要因になる可能性があるとしており、市場も前年比で減速する可能性があるとしている。しかし、その一方で大手SiC IDMメーカー各社は積極的に設備投資を行うことで、リーダーポジションの確立を目指す動きを見せており、すでに世界では10社以上が8インチSiCウェハ工場の建設に投資しており、市場の拡大に伴い、シェア争いもさらに激化することが予想されるとの見方をTrendForceは示している。