地震以外の原因による変化の確認(珠洲市上戸町南方 竹中川周辺)
1月2日の観測画像では大きな変化が生じている兆候があった竹中川河口付近だが、1月1日観測画像ではそれほど大きな変化には見られない。地図記号で見るとこのエリアは水田にあたる。ただし地理院空中写真で確認しても、水田の損傷などは確認できなかった。1月2日画像の比較対象が2023年6月6日で季節は初夏であること、1月1日画像の比較対象は秋の2022年9月26日であることを考慮すると、1月2日の観測画像は夏の水田の湛水を変化として抽出している可能性がある。
地震以外の原因による変化の確認(能登町 字時長周辺)
地表に変化が生じていたとしても、それが地震によるものか、他の理由で発生したのかを区別する必要がある。能登町で大きな変化が生じているように見られる箇所だが、地理院空中写真で確認すると、太陽光発電パネルが設置された場所であることがわかる。目視で見る限り、発電パネルが大きく損傷したという様子でもないようだ。
そこで、光学衛星の観測画像を使って変化の原因を探ってみることにする。該当地点の変化は1月1日の画像にも、1月2日の画像にも現れている。ということは2023年6月6日から2024年1月1日までのどこかでこの地表の変化が発生したと考えられる。5日おきに観測画像を提供している欧州のSentinel-2衛星画像で2023年5月10日(上)と7月4日(下)を比較してみると、6月6日を挟んで裸地だった場所に太陽光パネルが設置されたようだ。ALOS-2観測は地表の変化を確実にとらえていたが、地震とは異なる理由だったことがうかがえる。
斜面崩壊と道路の干渉(輪島市大沢町)
変化を抽出してみても斜面崩壊の確認が難しかった例。海岸の隆起は強くとらえられたものの、道路沿いの斜面崩壊や道路の損傷はほとんど確認できなかった。
斜面崩壊と道路の干渉(穴水町 宇留地 のと里山海道付近)
のと里山海道周辺では、盛土崩壊などの損傷が生じた穴水IC~越の原IC間などで道路脇の斜面崩壊や道路との干渉が見られた。国道に沿って変化の箇所をチェックしていくなど、インフラと被害状況との関係性を意識しながらデータを読み解いていくことが大切だ。発見した変化の箇所では道路脇の斜面崩壊や道路のひび割れなどが地理院空中写真から報告されており、QPS研究所が民間SAR衛星で観測した画像からも被害が報告されている。ALOS-2のような広域を観測できるSARのデータを元に、絞り込んで高分解能のSARによる詳細な観測が期待される部分となっている。
JAXAが公開するALOS-2のデータと無償のGISソフトを利用し、能登半島地震のSARデータの簡易解析(変化抽出)を行った。地震の被害状況データと突き合わせると、衛星がとらえた国土の変化が見えてくる。事後の解析で訓練を積むことで、新たな災害に備えて、データ利用の方針を立てることができるはずだ。SAR特有の力と限界を知り、災害時の能動的な情報収集に踏み出したい。