ルネサス エレクトロニクスは4月11日、特に電気自動車(EV)向け需要の拡大を見据えたパワー半導体の生産能力増強のために、山梨県の同社甲府工場においてクリーンルームの稼働を開始したことを発表した。
これに際しルネサスは、甲府工場の開所式を開催。同社取締役 代表執行役社長兼CEOの柴田英利氏らが、同工場の稼働開始にあたって今後への展望を語った。
“不死鳥のように舞い戻った”ルネサス甲府工場
ルネサス甲府工場は、同社の100%子会社であるルネサス セミコンダクタ マニュファクチュアリングの傘下として、150mmおよび200mmウェハに対応した生産ラインを有していたものの、2014年10月に一度稼働を停止。同工場の売却に向けた動きを進めていた。
しかし2022年5月、脱炭素化社会の実現に向けて高まるパワー半導体の需要に対応するため、ルネサスは甲府工場の現存する建屋を有効活用し、パワー半導体専用の300mmラインとして稼働させることを決定。同年内に900億円規模の設備投資を行い、排水施設を新設するなど設備の再構築に着手し、最大1万8000m2のクリーンルーム面積を有する工場として、地元自治体やさまざまな企業の協力を得ながら、今般の稼働開始に至ったとする。
開所式の中でルネサスの柴田氏は、甲府工場について「一度稼働を停止したものの、不死鳥のように舞い戻ってきた」と表現し、「ルネサスの中でも先進的な工場にするべく準備を進めてきた」と話す。また今後の生産については、IGBTやパワーMOSFETなどといったパワーディスクリートデバイスの量産を、2025年に開始する予定だとし、同社のパワー半導体生産能力を現在の2倍に増強するとしている。
約2年間で要した立ち上げ人員は延べ8万人
またルネサス セミコンダクタ マニュファクチュアリング 甲府工場長の堀田孝次郎氏は、工場立ち上げの経緯や現状について説明した。
堀田氏によれば、2022年の発表以来およそ2年をかけて工場稼働開始に向けた作業を進める中で、関係企業などを含めのべ8万人が立ち上げ人員として従事してきたとのこと。この立ち上げにあたっては労働災害ゼロ件を継続しているといい、今後の作業においても継続していきたいと語った。
なお甲府工場にて生産する製品の領域については、EVに加え、家電などの汎用用途向けが中心になると説明。さらに昨今需要が拡大する通信やエネルギーなどの領域についても、製品開発を行っていくとしている。