横浜国立大学(横国大)は2月26日、レーザー3Dプリンティングによってゼラチン誘導体からなる微細ハイドロゲルモデルを造形し、無機物で表面修飾することで、有機物と無機物から構成される微細な有機-無機複合3次元骨モデルを構築したことを発表した。

同成果は、横国大の宮島浩樹特任助教、同・向井理特任助教、同・丸尾昭二教授、同・飯島一智准教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行するバイオマテリアルに関する全般を扱う学術誌「ACS Biomaterials Science & Engineering」に掲載された。

骨内部の骨髄は、血球や免疫細胞産生の場として知られている。その微小環境においては、血球や免疫細胞の元となる造血幹細胞が、間葉系幹細胞をはじめとする多様な細胞と相互作用することで、未分化状態を維持したまま増殖していることが明らかにされている。

造血幹細胞は、白血病や免疫系疾患などの治療に用いられるが、生体外で機能を維持したまま効率的に増殖させることは困難であり、造血幹細胞の培養技術の確立が求められている。

そうした中、骨の組成や骨の内部構造が生体本来の骨や骨髄の機能に大きく関わっていると考察し、骨を模倣した3次元骨モデルの開発を進めてきたのが研究チームだ。これまでの有機物と無機物を複合化した3次元モデル造形では、実際の骨髄のような微小環境を備えた微細モデルの造形は困難であり、高精細なモデル造形が必要と考えたという。

そこで今回の研究では、架橋性ゼラチンをレーザー3Dプリントすることで、微細なハイドロゲル3次元モデルを構築。造形した3次元モデルを無機複合化することで、造形モデルの構造を大きく変化させることなく、無機物を被覆する手法の開発を試みたとする。

ゼラチンに化学修飾を施した「ゼラチンメタクリレート」(GelMA)は、生体適合性に優れた架橋性高分子材料として細胞培養のための足場材料やバイオプリンティング技術に応用されている。研究チームは、ゼラチンがコラーゲンを熱変性させたものであることから、骨の組成を模倣する材料として有望であると考えたという。

光開始剤を添加したGelMA溶液に対して光照射することでレーザー3Dプリンティングを行い、任意の形状の「3次元架橋GelMA(pGelMA)ハイドロゲルモデル」が作製された。その後、光造形された3次元pGelMAモデルをカルシウムイオンとリン酸イオンの含有した溶液に交互に浸漬する操作によって、3次元pGelMAモデルの無機複合化が行われた。

研究チームによると、今回は、交互浸漬の各溶液への浸漬時間を10秒と110秒、浸漬回数(サイクル数)を5サイクルと15サイクルに設定した計4条件で交互浸漬を実施し、造形モデルの無機複合化が検証された。簡易的な造形モデルである線幅約600μmのpGelMA線状モデルについて交互浸漬を行ったところ、浸漬時間の短い10秒・5サイクルや10秒・15サイクルの条件ではライン造形物の表面近傍付近のみ、浸漬時間の長い110秒・5サイクルや110秒・15サイクルの条件ではライン造形物の内部まで無機物で修飾されることが観察されたという。

  • (a)レーザー3Dプリンティングによる3次元pGelMAモデル造形の模式図。(b)線幅600μmのpGelMA線状モデルの交互浸漬

    (a)レーザー3Dプリンティングによる3次元pGelMAモデル造形の模式図。(b)線幅600μmのpGelMA線状モデルの交互浸漬(スケールバー:100μm)(出所:)

このように、交互浸漬の浸漬時間およびサイクル数の条件の違いによって、モデルに対する無機複合化に違いが出ることが実証された。それぞれの交互浸漬の条件で析出した無機物を解析した結果、すべての交互浸漬条件の析出物がヒドロキシアパタイトであることが確認されたとした。

研究チームは次に、より複雑な立体モデルとして、pGelMAピラミッド型モデルをレーザー3Dプリンティングにより造形したとのこと。そのpGelMAピラミッド型モデルに対し10秒・5サイクルの条件で交互浸漬を行ったところ、ピラミッド構造が保持されたまま、モデルをヒドロキシアパタイトで複合化することに成功したとする。

また、ヒドロキシアパタイト複合化したpGelMAピラミッド型モデルを間葉系幹細胞の細胞足場として応用したところ、モデル表面上での細胞の接着・伸展が見られ、骨および骨髄のモデルとして応用可能な無機物表面を備えた有機-無機複合3次元モデルであることが示されたとした。

  • (a)ピラミッド型モデルの概略図。(b)レーザー3Dプリンティングによる3次元pGelMAピラミッド型モデルの交互浸漬前後

    (a)ピラミッド型モデルの概略図。(b)レーザー3Dプリンティングによる3次元pGelMAピラミッド型モデルの交互浸漬前後(スケールバー:500μm)(出所:横国大プレスリリースPDF)

今回の研究では、レーザー3Dプリンティング技術と無機複合化法を組み合わせることで、有機物と無機物を複合化させた3次元骨モデルを構築する手法が開発された。今回の手法を用いて、研究チームは今後、さらに高精細な有機-無機複合3次元モデルを造形し、骨の内部に見られる微細構造を再現した骨モデルを開発することで、人工骨髄や骨置換材など、再生医療研究に貢献する3次元骨モデルの構築を目指すとしている。