JDIが健康見守りサービス市場に参入

ジャパンディスプレイ(JDI)は2月6日、スマートリングとスマートフォン(スマホ)アプリ、クラウドを連携させることで、日常生活における健康管理に必要なライフログを自動的に取得することが可能な企業・団体向け健康見守りサービス「Virgo(ヴァーゴ)」を発表した。

同サービスは、同社が開発してきたフレキシブル基板上に形成したスマートリング向け生体センサ(有機光検出器:OPD、Organic Photo Detector)を活用することで、スマートリングで心拍数、血中酸素ウェルネス、睡眠時間、歩数、消費カロリーなどのライフログを取得することによる、日々の健康状態の把握に加え、保健師などの有資格者によるアドバイスや健康に関する情報提供も行うことで、利用者の健康意識の向上や行動変容のサポートを可能とするものとしている。

  • Virgoのスマートリング

    Virgoのハードウェア(スマートリング)。材質としてはアレルギーを考慮し、チタンを採用することが基本路線となるとのこと

同社の代表執行役会長兼CEOのスコット・キャロン氏は、「1つ目はテクノロジーカンパニーとして、よりよい社会を作ること、2つ目は少子高齢化が進む日本で社会のダイナミクスを維持するための創意工夫の必要性、いくつになっても生き生きとできる社会を作る必要性があること、そして3つ目は、より良いものを作っていくことで、強いJDIに育てていく必要がある」と3つの観点を踏まえ、Virgoの提供を決めたとする。

  • スコット・キャロン氏

    JDIの代表執行役会長兼CEOを務めるスコット・キャロン氏。手に持っているのがOPDセンサ基板

独自技術によるセンサで高精度測定を実現

Virgoは、「Vital intelligenve ring guardian optimization」の頭文字を取った名称で、そのコンセプトは「すべての人の安心と健康に寄り添う」というもの。

  • Virgoの正式名称

    Virgoの正式名称

キャロンCEOは、「バイタルデータを取得するスマートウォッチなども出てきているが、その多くはシリコンをベースとしたセンサが用いられており、形状の自由度を持たせることが難しい。しかし、世界初のOPDセンサを活用することで、緑・赤、赤外の光を曲げた形状でも取得することができるようになり(モーションセンサならびに温度センサも搭載)、スマートリングとしてスマートウォッチ以上にバイタルデータを高い精度で測定できるものが出来上がった」と、ハードウェアの仕上がりを表現するほか、「Virgoは、マイコンもメモリも搭載したコンピュータプラットフォームであり、将来的には保健師向けの支援AIや利用者の健康を支援するためのツールなども、サードパーティ製のソフトウェアを含めてオンラインストア上で提供できるようにする計画」と、ハード、ソフト、サービスを組み合わせたソリューションとして提供していくことを強調する。

  • OPDセンサの基板イメージとその技術的優位性
  • OPDセンサの基板イメージとその技術的優位性
  • OPDセンサの基板イメージとその技術的優位性

  • Virgoで取得されるバイタルデータのイメージ

    Virgoで取得されるバイタルデータのイメージ

  • Virgoの今後の技術ロードマップ

    Virgoの今後の技術ロードマップ。AIを活用した保健師向け支援ツールなども用意していく予定だという

5年後目標はアクティブユーザー100万人

すでにその使い勝手やデータの整合性などについては、2023年の夏から社内の有志200名の協力のもと、実証実験として取得を進めており、利用開始1カ月で参加者の20%が健康意識に変化が生じたという結果も出ているという。

  • JDI社内有志200名による実証実験結果

    JDI社内有志200名による実証実験では、開始1か月で20%の参加者に健康意識の変化が見られたという

これを受けて、JDIではさらなる普及加速に向けて、岡山大学、あいおいニッセイ同和損害保険(あいおいニッセイ同和損保)、VELDT(ヴェルト)、両備グループ(の一般財団法人 両備ハッピーライフ両備健康づくりセンター)と共同で運送・交通運輸業に従事するドライバーの運転寿命延伸と健康増進を目的に、運転挙動と健康状態の相関性を検証する共同研究を実証実験という形で2024年2月より開始するともしている。共同研究の期間は3か月を予定しており、両備グループのドライバー30名が対象。Virgo対応スマートリングと、あいおいニッセイ同和損保が貸与するスマートウォッチを装着してもらい、バイタルデータなどの取得を進め、岡山大を中心に、それらのデータ分析を進めることで、どのような健康状態や生活習慣が運転挙動に影響を与えるかの検証を進めるとしている。また、この研究は、その後、2025年3月まで3回繰り返して実施し、120名分のデータ分析を行うことも予定しているとする。

  • 2024年2月より5者による共同研究・実証実験を開始

    2024年2月より5者による共同研究・実証実験を開始する

なお、JDIでは、2024年2月より導入を希望する企業や団体向けにトライアル提供を開始するとしているほか、2024年中の正式サービスインを目指すとしている。事業化に当たっては、販売形態としては月額性のサブスクリプションモデルを採用する予定で、オープンプラットフォーム戦略のもと、同社の販売のみならず、代理店を通じた提供も進めていく見込み。JDIでは、こうしたVirgoの普及促進に向けた取り組みを通じて、5年後に国内で100万人のアクティブユーザーの獲得を目指すとしており、キャロンCEOも「大きな目標だということは分かっているが、それだけで終わってしまうのではなく、より多くの人たちが自己の健康管理に向けた付加価値として認識してもらえるサービスとして育てていきたい」と、100万人はあくまで1つの通過点であり、JDIとして社会や人に寄り添える価値を提供していきたいとしている。

  • Virgoのスマートリング
  • Virgoのスマートリング
  • Virgoのスマートリング
  • Virgoのスマートリング
  • Virgoのスマートリング。重量は指輪の号数によって若干異なるが3-6g程度。24時間以上の動作が可能だが、50時間程度までは伸ばしたいとのことであった。普通の指輪に比べると太さが際立つが、これはあえてそういうサイズとすることで、測定誤差を減らしたとのことである。スコット・キャロンCEOにも着けていただいた

  • Virgoのスマートリング
  • Virgoのスマートリング
  • Virgoのスマートリング
  • Virgoのスマートリングの内側にはセンサ部の突起が3つある。中心がLEDで、その光を両サイドのOPDセンサで受光して測定するという仕組み。リング手前のフレキシブル基板がOPDセンサ部。リングそのものの耐水性能としては生活防水レベルとのこと。また、決定ではないが、スマートリングのカラーも複数用意される見込みで、すでにゴールドとブラックのモックも用意されていた