広島大学と日産自動車は2月2日、都内で「ゼロ・エミッションフォーラム2024」の開催に先立ち、広島大学 東広島キャンパス構内において日産自動車のEV(電気自動車)とEVのバッテリーを蓄電池として充放電制御を行う日産のエネルギーマネジメントサービス「ニッサンエナジーシェア」を活用した大規模なエネルギーマネジメントを、3月から開始すると明らかにした。

積極的にカーボンニュートラルに取り組む広島大学

両者は国内の他大学に先駆け、カーボンニュートラルの実現に向けてEVを軸にタッグを組み、キャンパス車両の100%EV化、再生可能エネルギー100%のエネルギーマネジメントによる地産地消を視野に、モビリティ×エネルギーによるカーボンニュートラル実現のほか、広島大学モデルの確立を目指す。

今回の取り組みは再生可能エネルギー、エネルギーマネジメント、モビリティ、学生、デジタル化(アプリ)によるデータ活用などを加えたものとなる。

広島大学と日産自動車は「広島大学スマートシティ共創コンソーシアム」における産官学民連携の一環として今回の取り組みを実施。

大学のEV公用車と、学生や教職員向けに新たに導入した日産のEVカーシェア「NISSAN e-シェアモビ」の車両を活用し、CO2排出量ゼロのEVを自由な移動手段として使用しつつ、駐車時にはEVの大容量バッテリーを蓄電池として活用する充放電エネルギーネットワークを確立しながら、構内に分散したエネルギーリソースや、現在導入を進めている太陽光発電設備(5MW)とも繋げた高度な再生可能エネルギーのマネジメントに発展させていく。

  • 「広島大学スマートシティ共創コンソーシアム」の一環として今回の取り組みを実施する

    「広島大学スマートシティ共創コンソーシアム」の一環として今回の取り組みを実施する

また、EVを活用した災害時のレジリエンス強化やEVカーシェアの利用を通して、学生のカーボンニュートラル実現への参画意識を高めるなど、大学全体としての意識醸成にも取り組む。

広島大学では国内の総合大学として初となるカーボンニュートラルの取り組みとして「2030年カーボンニュートラル×スマートキャンパス5.0宣言」を掲げ、2030年までに、通勤・通学を含めたキャンパスで使うエネルギーのカーボンニュートラルの実現を目指している。

地元の東広島市とともに、タウン(街)とガウン(学生や教員)が一体となった平和を希求するまちづくりや、地域におけるSDGsの達成を目指す、広島大学×東広島市「Town & Gown 構想」のもと、地域の課題解決に向けて取り組んでいる。

さらに、こうした活動に賛同する複数の企業が参画した「広島大学スマートシティ共創コンソーシアム」を2022年3月18日に立ち上げ、産官学民一体で最先端の技術を取り入れながら、新たなイノベーションに取り組む。

広島大学 理事・副学長(グローバル化担当)の金子慎治氏は、同大におけるエネルギーマネジメントの取り組みとして「2024年度内の完成予定で東広島キャンパスにおいて、オンサイト型PPA(電力購入契約)モデルによる合計出力約6.5MWの太陽光発電設備の設置を進めている。また、2022年にはキャンパス内の3つの建物をZEB(Net Zero Energy Buildingの略称)化したほか、地中熱を活用した空調システムを導入している」と話す。

  • 広島大学 理事・副学長(グローバル化担当)の金子慎治氏

    広島大学 理事・副学長(グローバル化担当)の金子慎治氏

3月1日から提供を開始する「ニッサンエナジーシェア」

一方、日産は2010年に世界初の量産型100%EV「日産リーフ」を発売し、2018年5月からEVの普及を通じて、環境、防災、エネルギーマネジメント、観光、過疎などの地域課題解決を目指す日本電動化アクション「ブルー・スイッチ」を、全国の自治体や企業、販売会社とともに推進。

また、2030年代早期には、主要市場で投入する新型車すべてを電動車両にすることを宣言し、電動化をリードしながらSDGsの達成やカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを加速させている。その1つの方策として、2022年2月から福島県浪江町でEVの充放電システムを活用したエネルギーマネジメントシステムの実証実験を行ってきた。

今回、広島大学に導入するニッサンエナジーシェアは、「広島大学スマートシティ共創コンソーシアム」に参画する日産独自のエネルギーマネジメントサービスで、第一弾の導入事例となる。同サービスは、EVの魅力をさらに向上させる商品として、バッテリーを蓄電池として充放電制御を行い、3月1日から提供を開始する。

  • 「ニッサンエナジーシェア」のロゴ

    「ニッサンエナジーシェア」のロゴ

福島県浪江町での実証実験では、EVの充放電を自律的に行う独自の制御技術を用い、エネルギーの効率的な利活用を検証し、検証で得た技術や知見をもとに、顧客ニーズや状況に応じた最適なエネルギーマネジメントサービスを、企画から構築、保守運用までワンストップで提供する、主に法人や事業者、自治体に向けたサービスとなる。

日産自動車 ビジネスパートナーシップ推進部 主管の齊藤脩氏は「企業、自治体ではEVの活用において難しい側面もあり、メーカー一丸となってサポートするためにワンストップのサービスとして提供する。EVの開発、製造、販売の津陽美を活かし、既存の電気自動車の販売だけにとどまらないフルサービスを提供していく点が大きなポイントだ」と強調した。

  • 日産自動車 ビジネスパートナーシップ推進部 主管の齊藤脩氏

    日産自動車 ビジネスパートナーシップ推進部 主管の齊藤脩氏

主な特徴としては「スマート充電によるピークシフト」「放電マネジメントによるピークカット」「再生可能エネルギーの有効活用」の3点を挙げている。

スマート充電によるピークシフトでは建物の電力消費状況と、EVのバッテリー残量や使用状況を把握し、EVへの充電タイミングを制御。複数のEVを保有している場合でも、建物の電力使用に影響を与えることなく、安心してEVを使用することを可能としている。

放電マネジメントによるピークカットについては、建物の電力需要が高まる時間帯に、EVから建物へ電気を戻すことで施設電力のピークをカットし、電力使用量を抑えるとともに、電気料金の削減にも貢献するとのこと。

  • スマートな充放電で電気料金を削減するという

    スマートな充放電で電気料金を削減するという

再生可能エネルギーの有効活用に関しては、建物などに太陽光パネルが設置されている場合、太陽光発電との連携を可能とし、太陽光での発電量が多い時には積極的にEVへ充電し、その電力を夜間に建物へ給電するなど、太陽光の発電状況に応じた受給電を効果的に行う。

これにより、企業が自らの事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とした国際的イニシアチブ「RE100」への貢献にもつながるという。

サービスは、導入目的に応じた最適なソリューションの提案から、機器や施工業者の選定、補助金の申請など、スムーズな導入をサポートするとともに、導入後の保守運用や状況変化に応じた改善提案までの「コンサルテーション」「システム構築」「保守運用」をワンストップのサービスで提供する。