省エネや脱炭素社会のキーデバイスとなるパワー半導体モジュール

三菱電機は、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)用モーターなどのインバータ駆動に用いられるxEV用パワー半導体モジュールとして、SiC-MOSFETやRC-IGBT(Si)素子を搭載した「J3-T-PM」を開発。2024年1月24日~26日にかけて東京ビッグサイトにて開催されている「第38回 ネプコン ジャパン」の同社ブースで製品の展示を行っている。

近年、省エネや脱炭素に貢献するキーデバイスとして、電力を効率よく変換する高効率なパワー半導体への需要が高まりを見せており、中でもSiパワー半導体以上に電力損失の低減ができる次世代材料としてSiCへの期待が高まっている。

  • あらゆるところにパワーモジュールは使われている

    第38回 ネプコンジャパンにおける同社ブースで行われていたいたるところにパワーモジュールは使われていることがわかる展示

中でも自動車分野は電動化の流れが急速に進んでおり、モーター駆動におけるインバータなどの電力変換機器に用いられるパワー半導体モジュールの需要は今後、拡大していくことが予想される。

そうしたxEVに用いられるパワー半導体モジュールには、「航続距離の延伸」、「バッテリ・インバータの小型化」、「高出力・高効率化」、高い安全基準をクリアした「信頼性」など多くの要素が求められるとのこと。

そうした中、三菱電機は1997年よりxEV用パワー半導体モジュールの量産を開始して以降、Siパワー半導体を搭載したさまざまなモジュールを提供してきており、これまでに多くのEVやHEVに搭載されてきた実績がある。

  • 三菱電機のxEV用パワーモジュールの歴史

    三菱電機のxEV用パワーモジュールの歴史

三菱電機が開発したxEV用SiC/Siパワー半導体モジュール「J3シリーズ」

J3シリーズは、そうした自動車市場で多くの採用実績がある同社のT-PM(Transfer molded Power Module:トランスファーモールド型パワー半導体モジュール)の最新世代という位置づけで開発されたパワーモジュールで、従来のSiではなく新たにSiC-MOSFETを搭載することでEVやPHEVの航続距離の延伸や電費改善を実現したとする。また、J3-T-PMは組み合わせを変えることでさまざまなxEV用インバータ設計に対応できるため顧客の細かなニーズを満たしつつ、従来品比40%のモジュールサイズを実現でき、インバータの小型化を図ることも可能だとしており、インバータの小型化によって、車両設計の自由度が生まれ、それが最終的なトータルコストの低減につながることが期待されると同社のブース担当者は述べていた。

  • 従来製品のJシリーズT-PM比で約40%の小型化を実現

    第38回 ネプコンジャパンにおける同社ブースで行われていた実機の展示。従来製品のJシリーズT-PMと比べて約40%の小型化を実現している

小型化できた理由としては、冷却器とのはんだ接合が可能になったことが大きな要因だという。金属は熱を逃がしやすい性質をもつため熱抵抗を30%改善してとするほか、小型化されたT-PMを並列化させることでさらなるインダクタンスの低減につながるともした。

なお、製品ラインナップとしては「J3-T-PM」に加えてJ3-T-PMを3個搭載した「J3-HEXA-S」、6個搭載した「J3-HEXA-L」のパッケージ外形で、定格電流、定格電圧、構成、搭載チップの項目で分けると計6製品が展開される。これらモジュールのサンプル出荷は3月25日から順次行っていくことを予定しており、同社では今回のネプコンへの出展をはじめ、北米、欧州、中国などで開催される展示会にも出展し、海外での展開も推進していくとしている。