三菱電機は5月8日、鉄道車両・直流送電などの大型産業機器向け大容量SiC(炭化ケイ素)パワー半導体モジュールの新製品として、耐電圧3.3kV・絶縁体電圧6.0kVrmsの高電流密度dualタイプにSBD(ショットキーバリアダイオード)内蔵MOSFETを採用した「SBD内蔵SiC-MOSFETモジュール」のサンプル提供を、5月31日より開始すると発表した。

  • 三菱電機がサンプル提供を開始する「3.3kV SBD内蔵SiC-MOSFETモジュール」

    三菱電機がサンプル提供を開始する「3.3kV SBD内蔵SiC-MOSFETモジュール」(出所:三菱電機)

近年、脱炭素社会の実現に貢献するキーデバイスとして、電力を高効率で変換するパワー半導体への需要が拡大・多様化している。その中でも、電力損失の大幅な低減が可能なSiCパワー半導体への期待は急速に高まっている。

また、大型産業機器向けのパワー半導体モジュールは、鉄道車両の駆動システムや直流送電などの電力関連システムにおけるインバータなどの電力変換危機に使用されており、さらなる電力変換効率の向上を実現するため、高出力・高効率な製品に対する要求が拡大しているという。

三菱電機はこれまで、「3.3kV HVパワーモジュールdualタイプ LV100」のSi(シリコン)パワーモジュール2品種、およびフルSiCパワーモジュール4品種を市場投入してきたとする。そして今般、大型産業機器向けのさまざまなインバータにおける高出力・高効率化と信頼性向上への貢献を目指し、新製品となるSBD内蔵SiC-MOSFETモジュールのサンプル提供開始に至ったとしている。

新製品は、SBD内蔵SiC-MOSFETの採用とパッケージ構造の最適化により、スイッチング損失を同社従来SiCパワーモジュール比で66%低減。同社従来Siパワーモジュール比では91%の低減を実現したとする。また通電能力も最適化することで、インバータの信頼性向上にも貢献するという。

併せて、端子配列を最適化することで並列接続を容易にし、並列数の組み合わせ次第で多様なインバータ構成・容量に対応できるようになるとしている。さらに、DC主端子とAC主端子が対極に配置されたパッケージ構造にすることで、回路設計も簡素化されたとする。

三菱電機によると、新製品の価格については個別見積もりによるという。また同製品は、5月9日から11日まで独・ニュルンベルクで開催される「PCIM Europe 2023」で出展されるとのことだ。