2023年11月11日、シャープは創業111周年を記念し「Sharp Technology Day」を開催する。同イベントでは、シャープの今後の技術戦略を紹介するとともに、独自技術を採用した製品・ソリューションを展示する予定だという。
そして同社は、社内のさまざまなテクノロジーを集結させる一大イベントの開催に先立ち、8月7日には先行イベントとして「SHARP Tech-Forum」を開催。昨今産業界全体として大きな関心を集める“半導体”をテーマに据え、産官学それぞれから専門家が登壇し、技術の動向や日本の戦略、将来への展望について講演を行った。
学術機関の視点から3Dパッケージング技術を展望
大阪大学 産業科学研究所の名誉教授で、同研究所 フレキシブル3D実装協働研究所長も務める菅沼克昭名誉教授による講演では、「協働で拓く次世代半導体実装技術」と題し、半導体の3Dパッケージング技術における世界の潮流と、日本が目指すべき技術の方向性について語られた。
微細化限界の到来で重要性が高まる3Dパッケージング技術
半導体プロセスの微細化には、限界が迫っている。現在開発が進められる最先端プロセスは2nmまで微細化されており、これは原子のサイズを鑑みると、微細化の物理的限界に近付いているとされる。
そこで次なる流れとして、半導体チップを組み合わせることで高密度高性能を実現するチップレット化に注目が集まっている。そして、その性能向上において大きな重要性を持つのが、3Dパッケージング技術だ。
Appleが開発した最新のCPU「M1 Max Ultra」でもその実装技術が用いられており、2個のCPUや8個のメモリ、GPUなどが1つのチップレットに搭載されている。その結果、大幅な高速化や歩留まり向上といったメリットに加え、同等の性能で比較した場合の消費電力低減でも大きな効果を発揮しており、今後もこうした形での技術革新が進んでいくのは明らかだとする。
米国政府も半導体パッケージング技術を重視する姿勢を強めており、全米先端パッケージング製造プログラム(NAPMP)に対して25億ドル規模の投資が行われている。これは、CHIPS法で推進される半導体研究開発プログラムの中核を担うとされる国立半導体技術センター(NSTC)への投資(約20億ドル)よりも大きい規模であり、菅沼名誉教授は「米国としてパッケージングの技術や材料が不足しており、国内で半導体のエコシステムを作るために、パッケージングに注力していく必要があるという方向性が見える」と説明する。