TSMC熊本(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing:JASM)の第1工場が熊本県菊陽町での建設工事が最終段階を迎えている。8月1日から、製造棟に隣接する管理・事務棟の一部が使用可能になった模様で、それに併せて台湾のTSMCから熊本への出向社員(およびその家族)の第1陣が同日朝にチャーター便で台北を発ったと台湾メディアが報じている。ちなみに、台北(桃園国際空港)と阿蘇くまもと空港を結ぶ定期便は8月時点では就航しておらず、2023年9月1日より順次チャイナエアラインおよびスターラックス航空が就航する予定となっている。

台湾での報道によると、出向者の数は888人となっているが、その数の中にはおそらく出向者の家族を含んでいると思われる。TSMCは当初、320人の社員を派遣するとしていたが、台湾の業界関係者によると400人規模に増員された模様で、企業秘密の漏洩を防ぐことを目的に、要職は台湾からの出向者によって占められる見込みだという。ただしTSMCから、これらの件に関して公式コメントは出ていないことに注意する必要がある。

台湾での研修を終えたソニー出向組も帰国

TSMCの出向者第1陣に併せて、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング熊本テクノロジーセンターから台湾の台中市にあるTSMCの工場に出向して1年近くライン稼働に向けた研修を受けていた百数十人の社員も7月末で研修の全過程を終了し、8月1日に帰国した模様である。

今後、TSMCの台湾出向組と合流し、JASMでの製造装置搬入・立ち上げ・ライン稼働に従事する予定だという。熊本第1工場の設備投資額は当初予定していた約70億ドルから86億ドルに増額され、生産能力も当初目標の月産4万5000枚から5万5000枚に加増されている。

なお、TSMCでは、米アリゾナ州に建設を進めている新工場については、現地の技術者不足が影響し、進捗遅れが生じているため、稼働開始の時期を2025年にずらすと公式に発表しているが、熊本第1工場は計画変更なく、2024年末の稼働開始に向けて順調に準備が進められているようである。第2工場についても、第1工場の東側の隣接地(現在は農地)に建設されると見られており、複数の地主と交渉が進められている模様で、日本政府からの補助金支給とその金額が決定次第、公式に発表されることになると思われる。