ソニーは、実在感のある立体映像(3DCG)を裸眼で見ることができる27型の空間再現ディスプレイ「ELF-SR2」を6月12日に発売した。

また新製品の発売に合わせて、同ディスプレイ用のアプリを検索できる「空間再現ディスプレイ アプリセレクト」や、3DCGのデータを手軽に再生できる「空間再現ディスプレイ プレーヤー」など、利用拡大に向けたアプリケーションの提供も開始することを発表した。

ELF-SR2の発売に際し、ソニーは新製品発表会を開催。デモンストレーションを交えながら、狙いとする市場や今後の展望、技術的特徴について説明した。

  • ソニーが6月12日に発売した27型の空間再現ディスプレイ「ELF-SR2」。

    ソニーが6月12日に発売した27型の空間再現ディスプレイ「ELF-SR2」。

新製品が目指すのは空間再現ディスプレイ市場の拡大

空間再現ディスプレイは、ソニー独自の高速ビジョンセンサ技術と視線認識技術により、画面を見る人の瞳の位置情報を把握し、立体映像をリアルタイムで生成するもの。ソニー インキュベーションセンター メタバース事業開発部門の鈴木敏之部門長は、3Dデータの活用が広がるインダストリアルデザインやCAD設計、医療、建築などの領域において顕在化する、3D技術を駆使した“空間DX”のニーズへの対応に加え、今後さらなる拡大が予想される次世代エンタテインメントやメタバース領域に向けて、ハード・ソフト両面における発展を目指しているとする。

  • 空間再現ディスプレイは、画面上部のカメラで対象の視線を認識し、左右の目の位置に合わせて2つの映像を表示することで、立体的な視聴体験を実現する。

    空間再現ディスプレイは、画面上部のカメラで対象の視線を認識し、左右の目の位置に合わせて2つの映像を表示することで、立体的な視聴体験を実現する。

また、同社 メタバース事業開発部門 プロダクトマネジメント部の太田佳之担当部長は、前世代品の「ELF-SR1」がアプリケーション開発者向けのデバイスだったのに対し、新製品は、3DCGによってコンテンツを制作するクリエイター、さらにはディスプレイを活用してプレゼンテーションなどを行うビジネスパーソンまで、「ターゲットを大きく広げていきたい」と新製品の狙いを語った。

  • メタバースをはじめ、ソニーが目指す3D技術を駆使した空間DXについて展望を語る鈴木敏之氏。

    メタバースをはじめ、ソニーが目指す3D技術を駆使した空間DXについて展望を語る鈴木敏之氏。

  • 製品企画を担当する太田佳之氏は、アプリケーションの拡充によってクリエイターなどにも販路を広げていきたいとする。

    製品企画を担当する太田佳之氏は、アプリケーションの拡充によってクリエイターなどにも販路を広げていきたいとする。

大画面化と高画質を両立し可能性を広げた新製品

太田氏によると、今回の大画面化によって、前世代品では難しかった高さのある表現や、より大きなサイズでの原寸表示が可能になったことが大きなメリットだという。実際、前世代品については画面サイズの拡大に対する要望もあったとのことで、27型になることでさらに実用性を高めているとする。

  • ELF-SR1(左・15.6型)とELF-SR2(右・27型)のサイズ比較。ディスプレイサイズの大型化により、表現の幅や没入感が向上するという。

    ELF-SR1(左・15.6型)とELF-SR2(右・27型)のサイズ比較。ディスプレイサイズの大型化により、表現の幅や没入感が向上するという。

しかし当然ながら、大画面化によって映像の精細度が落ちることが考えられる。ソニーはこの課題に対して、新開発した超解像エンジンを搭載することで、27型画面においても高精細な立体映像表現を実現。またディスプレイの広色域化により、正確な色の再現や豊かな色彩表現ができるほか、新開発の高速ビジョンセンサにより視線認識の速度や精度を向上させ、クリエイターの意図を忠実に再現した立体空間映像を表示できるとしている。

一方で、大画面化と高画質を両立した新製品の映像処理については、ディスプレイ側でオフロード処理を行う形に変更。PC側で映像処理を行っていた従来品に比べてGPUやCPUの負荷を低減したことで、使用環境や目的に合わせたPCの選択が可能になったとのことだ。また導入ハードルを低減させるもう1つの改善として、ディスプレイのスタンドを着脱可能にしたとする。VESA対応のスタンドやアームを適用できるため、さまざまな設置環境に対応できるとした。