TSMCのMark Liu(劉徳音)会長が6月6日、同日開催された株主総会後の会見にて日本子会社であるJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)の2棟目は熊本が候補地であることを明らかにしたと複数の台湾メディアが報じている。
それによると第2工場は第1工場と同様、28/22/16/12nmに対応することを検討しているという。
第2工場の建設は日本政府からの補助金次第か?
同氏は、日本政府からの要望もあり、第1工場のすぐ近くに第2工場の建設に向けた交渉を進めているとしつつも、最終決定には至っていないとしている。日本の主要顧客からは、成熟プロセスの生産能力が不十分だという話があり、米国アリゾナ州の工場が先端プロセスであることも考慮し、日本の第2工場も第1工場同様の成熟プロセスに対応させる予定だという。
今回の報道に先立つ2023年1月の決算説明会の段階で同社のC.C.Wei社長は、日本に第2工場を建設する前提条件として、日本での顧客需要があることに加え、日本政府からの補助金額が理にかなっていることを挙げていた。
そのため、日本での第2工場建設の正式決定は、日本政府(経済産業省)との間で協議が続けられている補助金の支給が決定した後になると見られる。すでに第1工場には総額4760億円の補助金支給が決まっているが、第2工場に対しては、それと同等かそれ以上となる可能性が高い。
ソニーグループの半導体事業子会社であるソニーセミコンダクタソリューションズは5月25日、同日実施の事業説明会において、イメージセンサの新工場(熊本第2工場)建設のために同社熊本工場(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング熊本テクノロジーセンター)近くの合志市に約27万m2の土地を新たに取得する計画を公表した。そのイメージセンサ向けロジックチップは、20nm台のプロセスでTSMCに製造委託することになるが、JASMの生産能力は、従来のソニーのイメージセンサ向けで埋まってしまう見通しで、このソニー熊本第2工場の存在は考慮されておらず、TSMCもソニー同様、熊本に第2工場を設置する必要が出てきたと見られる。
日本ではRapidusが2nmプロセス対応工場の建設を今年の9月にも始める予定だが、JASMは12nmまで、Rapidusは2nm以降で、日本国内だけで見た場合、10~3nmプロセスが未対応領域となる。この間を埋めることを目的に経産省はすでにTSMCと第3工場の誘致に向けてひそかに協議を進めているといううわさもあるという。
ドイツの新工場も補助金次第で決定か?
なお、Liu氏は、ドイツでの新工場建設についても言及し、すでに調査チームを複数回派遣して用地選定や人材獲得に関する検討を進めていることも明らかにしている。こちらも日本同様に補助金次第のようであり、最終決定には至っていない。また単独での進出が前提だが、場合によってはJASM同様に複数の独企業が少額出資をすることもありうるとしている。
このほか、米アリゾナ州での新工場に対する米国政府の補助金についても言及している。米国商務省が、支給条件として中国企業への新規投資禁止や営業秘密情報の提出要求など厳しい条件を出していることに関して、条件の緩和についての交渉を米国側と行っていくことを明らかにした。TSMCのこの動き同様、中国に半導体工場を持つ韓国の半導体メーカーも韓国政府と一体となって米国側に条件緩和を求めている模様である。